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こちらアイスランド(235)可愛いバッグと靴!航空スト解除半日どたばたミラノ〜小倉悠加

アイスランド航空の整備技師ストするする騒動を乗り越え、ミラノに約一週間ほど滞在した。第一の目的は食事、そして「可愛い靴とバッグ!」。

無事に行って帰ってきたので終わりよければ全てよしだ。けれど、行きはバッタバタ。なにせアイスランド航空がよりにもよって私たちの出発日にストで航空便を飛ばさないというのだ。そのため、事前に「振替便のご案内」なども届いていた。

イタリア行きを知らされたのは6ー7月頃で、その時に彼が航空便を購入し、私がホテルを予約していた。ミラノへは去年彼が行きたがっていた。けれど藤井風を見るために私のリクエストでオランダ・ベルギーへ。だから今年は満を持してのような感じだった。なのに、なのに、再度出鼻を挫かれたように、9月に入り航空便のストが湧き上がってきた。

スト突入が濃厚になると、ホテルやツアーのキャンセルが海外から怒涛のごとく入り始めた。観光業者を含めて社会全体の損害が大きすぎる。アイスランド航空の評判も当然悪くなる。アイスランド国内の私たちは、海外へ飛べないので、予約済みのホテル等をキャンセルをせざるを得なくなった。

有言実行でストは実施され、アイスランド航空の便は全部止まった。これを教訓に、来年からはLCCにしようと思う。アイスランド航空はもう使わない!

孤島で丸二日間フラッグキャリア便を止めるのは命取りだ。政府がお上の一言で中止を言い渡すことになりそうな気配が濃厚となったその瞬間、労使と会社側の話し合いがついたとストは中止された。スト実施12時間後のことだった。

「ユーカ、明日行くことになった」と言われても、ホテルはキャンセル済み。どーすんの?!私はすでに行く気をなくていた。行きたくない。

航空便は予定通りに飛ぶためキャンセルできない。だから絶対に行くという。「行こう!ユーカ、行こうよ!」と。

私が乗り気でないことを悟ったのか、彼は仕事中にとにかくホテルをブッキングした。たぶん結構高くついたと思う。私がキャンセルをしなければ支払っていたであろう金額をそのまま彼に渡した。ん?航空運賃よりも私が支払ったホテル代金の方が高くなかったか?でも、ホテルをギリギリで取ったから、きっとものすごく高くついたに違いない。金銭周りはひどく不公平がないように互いに気遣っていることもあり、ふたりとも割合大雑把で大丈夫。

そんなこんなでお膳立てはできてしまった。気を削がれてしまい、行きたくないんだけど・・・。

イタリアは36年ぶり。最初で最後に行ったのはローマで、元夫と結婚して一年後くらいの時だった。それも夫が会社の運動会で当てた旅行!今回はアイスランド航空のストと重なり、なんだかイタリアは行く前から思い出深い。いやはや、イタリア自体よりもその前のドタバタが印象深い。

36年前のローマはバチカンと円形競技場程度しか覚えていないので、今回のミラノは新鮮だった。

最初にも書いた通り、旅行の一番の目的は食事。アイスランドでも衣食住は間に合っているとはいえ、食材が非常に限られるため、バラエティに富んだ食事が常だった日本人の私は常に食事を我慢しているようなところがある。常に不満たらたら。まずは食材の種類が少ないこと。季節の野菜や果物などが存在しないこと。その上にド高い。人参500g一袋が千円近くなって久しく、人参を買わなくなって数年になる。

いや、野菜類は購入できるだけでありがたいとは思っている。時々しなびた大根がオランダやスペインあたりから輸入されてくる。しなびていても大根は大根。湿った新聞紙を巻いて冷蔵庫に入れておけば、少しは復活するーーーというような、日本人主婦の知恵を存分に活躍されてはいる。それでも、文句たらたらの毎日。ごめんなさい、贅沢です。

野菜の話はいいから、ミラノに戻ろう。

ホテルは街中のとても便利のいい場所だった。旅行中は移動時間が長いと疲れも出るし、この場所で合っているのか?等の心配もあり、それを一気に解決するのは街中に宿泊することだ。若い頃はとにかく安いところに泊まったものだった。年金世代になった現在の私は体力温存第一で、街中の比較的よさげなホテルに泊まるようにしている。

四つ星のホテルは心地よかった。けれど、初日は部屋に香水が充満してガス室状態。バスタオルにたっぷりと香水がかけられているのを突き止めたのは寝る直前で、それをシャワー室に閉じ込めたものの、それでも一晩中ガス室状態で頭が痛くなった。フロントにはそれを伝え、部屋にはハウスクリーニングに「香水厳禁」をイタリア語で書き残した。グーグル翻訳、ありがとう。

ほどなく知ったのは、イタリアがものすごい香水大国だということ。デパートに入ると、化粧品店に入ると、各所に香水を持った係員が、通りがかりの客にシューっとひと吹きしようと待ち構えている。それはもう怖いくらいの人数だ。私は人工的な匂いが苦手なので、恐怖に近いものを覚えた。

ミラノの食事は全般にとてもよかった。高級レストランと、そこらへんの店と半々程度で食べた。そんな中で印象深いのは、ダルセナ地区の運河沿いに連なる「ドリンク一杯のオーダーで食べ放題!」の店。私はドリンクを一杯頼み、15ユーロでお腹いっぱいあれもこれも食べられた。彼はさすがにドリンク一杯では済まず、ビールの飲み比べセットなどを頼んだので、結構高くついた気がしないでもない。けど、川沿いの賑やかな雰囲気も相まって、とても楽しかった。

あまりの賑わいに目黒川の花見を思った

特筆に値するのはスイーツ。イタリア語だとドルチェ!ホテルから近かった二件(Iginio Massari MilanoとPasticceria del Convento)は見た目も美しく、種類も多く、できる限り足を運んだ。といっても3回が限度だったけど。

Pasticceria del Convento:全部味見をしたくなってるところ

第二の目的は「可愛いバッグと靴!」というのは表向きのスローガンで、実質的には「私を楽しませなさい!」というキョーレツなメッセージだった。というのも、彼とヨーロッパへ出ると、必ず私が一度は激怒することになる。あまりにも理不尽な出来事が続き、彼は反省している。私にはそれがトラウマで、彼が自分を優先するような言動をしようものなら、私の気分がドーンと地の底に沈む。

「可愛いバッグと靴!」は私の希望が最優先という意味でしかない。最優先にしないと彼には後がない。とはいえ、ミラノなので可愛いバッグや靴を買っても当然だよね、というのは実際にある。

だから本当に私の買い物に付き合ってもらった。女性の買い物は男性にはすごーくつまんないと思うので、自分一人で行った方が気が楽なんだけど。一緒に行きたい、行かせてほしいとお願いされたので、付き合わせてあげた。私、どこまでも優しい(笑)。

確かにミラノは革製品の質もいいし、値段もそこそこ。なので靴もバッグも買いました。靴一足はあまりにも可愛らしくて買わざるを得ず、たぶん見るだけの観賞用になる。あとの二足はごく実用的な革靴。時間があればもう少しじっくり選びたかった。ハイブランドは興味ないので、そこらへんに売ってるやつです。

その他に足を運んだのは本屋や美術館。美術館は20世紀美術館(Museo Del Novecento)とトリエンナーレ・デザイン美術館(Triennale Design Museum)。美術館でうだうだするのが好きなので、ご当地美術館は大好き。特に未来派(フューチャリズム)を見たかったので、前者にはたっぷりと時間をかけた。後者は庭の椅子もアートで面白かった。

ホテルの近くにあったので、ドゥオモの大聖堂も見てきた。ヨーロッパにはこういった大規模な教会や聖堂が多くあるので、いくつか見ればもういいや、という感じではある。けれど中に入っておかないと、後から後悔しそうで行きました、という消極的な鑑賞。

ドゥオモの中は床のモザイクが可愛らしくいたく気に入った。売店にこのモザイク柄のポーチがあったので記念に仕入れる。ポーチ、いくつもあって使いきれないのに!

ミラノを一望できる場所へは行きたかったので、聖堂の上は喜んで出向いた。日本の建築もすごいけれど、ヨーロッパのこういった建築は別のベクトルですごいと思う。

聖堂には美術館もあり、チケット代金に含まれていたので一周してきた。けれど、室内に一切窓がなく、重々しい空気と重々しい彫刻と重々しい聖人やらの姿と、全部重々しくてすごく苦手だった。

だいたい、こういった聖堂はどのようにして作られたのだろうか?あまりにも豪勢なものは、民衆に圧力がかけられたとか、強制使役があったのではとか、彫刻家は妥当な賃金が支払われたのか等々、21世紀の現在ではどうでもいいようなことを思ってしまうため、私は呑気に楽しむことができない。

最終日は巨大スーパーマーケットの近くに宿泊して、チーズを大量に仕入れてきた。こうしてアイスランドの自宅に戻ると、もっとお菓子類やオリーブ・オイル、バルサミコ酢も買っておくべきだったと反省。いや、買ってきたんですよ。高級なやつを。トリフとかも。スーツケースにはあと4キロ程度余裕があったので、もっと買えばよかった、と。

食を目的に訪れたとはいえ、アイスランド航空のスト騒動で狙っていた店を予約することができなかった。最終日も予約が取れず、スーパーの近くの四つ星ホテルのレストランへ。ホテルのレストラン、当たり外れがあるかもとは思いつつ、その他に選択ができなかった。

案内された屋外の席はとても気持ちがよかった。何やら花の香りまでしてくる。とても丁寧なウエイターがついてくれたんだけど、給仕に慣れていないのか、赤ワインをなみなみとグラスに注いだ後に「どうぞ味見を」と渡してきた。

ボトルとグラスを持ってきたので、当然味見ができるだろうと思っていると、ワインをグラスに注ぎ始めても味見すべき量のところで止まらない。え?ん?へ??と驚いて注視するも全くワインを注ぐ手が止まらない。そして、グラス半分くらいのところで注ぎ終えて、私に渡してきた。

私がキョトンとしてグラスを受け取ると、「味見してください。味見すべきですよ」と言ってきた。え?へ?この状態で味見するの?!!なんだかおかしく思えてきた。

「もしかして給仕の仕事は初めて?ワインの味見は一口だけ注いだ時にグラスを渡すものよ。グラスいっぱいに注いでしまい、それで味見して、”このワインは気に入らない”って言われたら、全量取り替えになるでしょう。そんなことにならないためにも、ワインは一口分だけ注いで、グラスをお客様の渡すのよ」と。

彼は素直に給仕職が初めてであることを認めて、教えていただきありがとうございますとはにかみながら言って、半ば申し訳なさそうに、バツが悪そうな感じでテーブルを離れていった。

そのウエイターの姿が見えなくなった後、私たちは爆笑してしまった。微笑ましい爆笑だった。いやぁ、こんなこともあるものなのね、と。インド系の若い男性なので、ワインを飲まないとしても、そういう場に身をおいたことがないのかな、と。少し不思議というか、社会の違いを感じた。

旅立つ前はあれほどメンドイとか、行きたくないとか言っていたのに、結局とても楽しく過ごしてリフレッシュできた。都会が苦手とか言いながら、案外都会好きかもと数日間は思ったりした。でもやっぱり帰る頃には、人が少ない場所がいいや、となっていた。全く私はあまのじゃくだ。

小倉悠加(おぐらゆうか)
東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド在住。メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、ツアー企画ガイド等をしている。高校生の時から音楽業界に身を置き、音楽サイト制作を縁に2003年からアイスランドに関わる。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、社会の自由な空気に魅了され、子育て後に拠点を移す。休日は夫との秘境ドライブが楽しみ。愛車はジムニー。趣味は音楽(ピアノ)、食べ歩き、編み物。