世界大戦前は、バルカン半島が「ヨーロッパの火薬庫」と呼ばれていましたが、現在は、その火種は、“欧州とロシア”、“イランを巡る中東”へと飛び、“台湾を巡る東アジア”にも点火したそうな声が聞かれます。
今、歴史的な瞬間を体験しているのかもしれません。
報道や事実から、何がどうして起こっているのか?どう展開するのか?読者の皆さんは、どう読むでしょうか?
今、豪州での報道で、もっとも危険だと注視されるのが、中東です。中東から石油など資源に頼る日本や豪州、世界にとっても、影響大なのは、すでに知ることでしょう。
火種を広げる、ウクライナのゼレンスキー氏
トランプ大統領は、公然とウクライナのゼレンスキー大統領を繰り返し非難するようになりました。トランプ氏は「ゼレンスキー大統領は交代だ」「ウクライナは軍事的に負けている」「ゼレンスキーは、戦争を終わらせたいと思うべきだ」と公の場で述べています。
また、彼はウクライナ抜きで、ロシアと平和交渉を行い、それをウクライナが拒否すれば深刻な事態を招くとも発言しています。ロシアに敵対的であったNATO事務総長のマーク・ルッテ氏さえ「ロシアは脅威ではない」と言い始めました。
ウクライナは、厳しい冬がそこまで来ています。燃料不足、インフラや交通網の崩壊で、国が機能しない状態に陥っているようです。首都キーウの市長は、市民にキーウから非難するように呼びかけ、脱出する人々の声が報道されました。
人々が命を保っことが難しい状態になり、現実的にはウクライナは降伏しなければならい状況のようです。
ここで、不気味なのは、数か月前まで、イスラエルのネタニヤフ首相をけなしていたトランプ大統領が、国政選挙(イスラエル10月27日・米11月3日)を前にネタニヤフ首相を素晴らしいと持ち上げ、支持するとSNS投稿をしたことです。
ネタニヤフ氏はイラン攻撃やる気満々発言を繰り返しています。トランプ氏は、選挙で大敗する可能性があり、イランからの屈辱をはらす、復讐心でネタニヤフ首相と再び強いタックを組んでいる、という見方があります。
そのためには、ロシアとの争いを止めて、イランに集中しなければならないのではないか。もうすでに始まっているかもしれない第3次世界大戦の炎を燃え上がらせない事を祈るばかりです。
燃えるヨーロッパ
戦火は、人々の抗議の間にも広がり始めました。
豪州では、暴動は起きていませんが、物価上昇、賃貸や住宅価格上昇への不満が大きくなっています。
EU(欧州連合)は、財源がないにもかかわらず、ウクライナやその戦争に巨額を支払い続け、国内の物価高や教育、腐敗政治に対処しない政府に、怒りを爆破させる暴動や抗議が各地で起こる様子も、連日報道されています。(こちら詳細とショート動画)
それでも、行き詰ったゼレンスキー大統領は、さらに数百億ドルを要求しています。
崖っぷちのウクライナ
米・イスラエルのイランへの攻撃勃発後、ウクライナのゼレンスキー大統領は、親西側の中東へ得意げに訪問し、ドローン援助を申し出ていました。今崖っぷちに立つゼレンスキー大統領の焦りからか、10月20日ウクライナは、イラク領クルディスタン(クルド人居住地域)を含むイラン周辺諸国にドローン部隊とドローンネットワークを設置したという報道がありました。テヘランはこれらの活動を、欧州とNATOによるイランに対する広範な敵対作戦の一環とみなしており、適切な対応を検討していると、警告したようです。ウクライナは、以前にもカスピ海で、イランの船舶を攻撃するという事件を起こし、イランへ謝罪していました。(こちら参照 )
ゼレンスキー氏率いるウクライナは、中東でもトラブルメーカーとして、働いているように見えます。
姿を現し始めた中東
中東では、世界大戦後も頻繁に戦争が起こっていましたが、問題は複雑そうで、私はあまり気に留めていませんでした。ただ石油や資源が豊富で、経済も潤っているという印象でした。でもパレスチナ問題やイランへの爆撃が始まり、物価高となり、生活に影響を与え始め、気にしなくてはいられなくなりました。
“米・イスラエルのイラン攻撃”から、戦いの火は、“サウジアラビアのイエメン(アンサール・アラー)への攻撃”へ飛び火し、戦火は激しくなっています。※イランと近いアンサール・アーラ―は、主な西側諸国やサウジアラビアが、テロ認定しています。
サウジアラビアと親しい国々の軍事組織が、援助や防衛のために次々とサウジアレアビア国内に集結しています。メッカ協定(トルコ・パキスタン・サウジアラビアの防衛協定)が加わりました。資金難のパキスタンは、サウジアラビアに経済的に依存しています。これらの国々は、世界大戦後にイギリスの計らいでできた国々です。イギリスもサウジアラビア支援に加わりました。 最
近アメリカはエジプトに、人権問題を免責し、3億2千万ドル(約505億円:10月21日現在US$1≒158円で)を支援しました。イランが関与する地域紛争や「エピック・フューリー作戦」において、エジプトの協力的な役割をしているからだそうです。そのエジプトも支援に加わりました。
日本は米国にお金を送り、米国は覇権のためか、お金を他国に送っているようです。
これらの中東の国々は、同胞のパレスチナ・ガザで人々が、命を奪われても何の軍事行動も起こさないのに、「なぜサウジアラビアのために軍事行動を起こしているのか?」「なぜイエメン(アンサール・アラー)を攻撃するのか?」と疑問や非難の声が上がっています。
イスラエルは公式に、サウジアラビア援助を表明していませんが、米中央軍(USCENTCOM)を通じてサウジアラビアと情報共有を行い、アンサール・アラ―に対して独自の軍事攻撃を実施している、との報道があります。(こちら参照)
10月16日は、難民避難所で生まれた、ヤヒヤ・シンワル(ガザのハマス最高指導者で、ガザでの戦闘中に61歳で戦死)の命日でした。その日SNSには、彼が「アラブ諸国が我々を見捨てた時、揺るぎない全面的な支援をしてくれたのはイランだった」と演説する動画が上げられていました。(こちら動画) ※ハマスは主に西側諸国でテロ認定されています。
パレスチナのイスラム教徒は、主にスンニ派ですが、主にシーア派のイランは、派閥に関係なく抑圧されている人々を助ける、という主張をききます。
豪州ABC(NHK相当)は、パレスチナでは、WFP(世界食糧計画)が資金難からガザの食料受給者を50万人減らし、配給量を半減させ、小麦粉の袋を小さくし、資金提供の削減も余儀なくされ、命の危機だと伝えていました。(こちら詳しく)
今もパレスチナ・ガザでは攻撃が続き、亡くなる人々が後を絶ちません。
これらから、英米とアラブ諸国の関係図が、見えてくるのではないでしょうか。
サウジアラビアの迷走か?
この激化する「サウジアラビア対イエメンのアンサール・アラーの闘争」が拡大しないかと心配されます。
イエメンへの攻撃は、大惨事を起しかねないので、起こらないだろうという予想もありました。しかし、トランプ大統領に似て、短気で無謀だと見られる、王太子兼首相のサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン(通称MBS)は、予想を覆し、イエメン首都を攻撃しました。
2026年7月初旬イランのハメネイ師の葬儀(2月末、米・イスラエルの攻撃で暗殺された)に参列後、イエメンのアンサール・アラ―の人々が帰国する寸前に、首都サナアにある空港への爆撃でした。これが、戦火を広げることになりました。
2014年イエメン内戦が起こりました。イランに近いアンサール・アラー(主にイスラム教シーア派)とサウジアラビア連合が支援するアリーミー政権(主にイスラム教スニン派)の政権を巡る戦いでした。約10年の間、爆撃だけでなく、イエメンへは封鎖され、食品・医薬品・生活必需品の輸入が途絶え、約40万人以上の人々が、命を失ったそうです。
2022年に停戦し、小康状態が続いていました。
最終的に、アンサール・アラーが首都サヌアを占領し、住居可能な南西部を統治し、人口の70~80%を治めました。イエメンは約60%が砂漠など非住居地です。しかし、国際的には、サウジアラビアの支援するアリーミー政権が、認められています。アンサール・アラーは、2023年10月に始まった、イスラエルの激しいガザへの攻撃に反対し、イスラエルを攻撃したことで、大きく報道されました。軍事的な準備をし、力を蓄えていることが、伺えました。
サウジアラビアお家事情
豪州ABCは、4月末にサウジアラビア事情について、特番のドキュメンタリーを放送しました。(こちら参照)その内容と、関連事項で調べたことを書きたいと思います。
サウジアラビアの地域は、オスマン帝国下の支配で、多くの部族が住む地域でした。しかし、第一次世界大戦でオスマン帝国が崩壊する中、イギリスの支援するサウジ家とイスラム教の宗教改革運動(ワッハーブ派)が、軍事支配し1932年にサウジ王国を建国独立することになり、今に至ります。
狙われているのは、サウジアラビア王太子のMBS(ムハンマド・ビン・サルマーン)か?
サルマーン国王は、次の王太子に、ムハンマド・ビン・ナーイフ(甥)を指名していました。ナーイフ氏は、内務相として米国CIAやオバマ政権(民主党)から絶大な信頼を得ていたそうです。
トランプ政権が2017年1月に誕生し、風向きが変わります。莫大な武器購入や対イラン強硬策を掲げる若いMBS氏を支持する方針へと傾き、ナーイフ氏の後盾だったアメリカが交代を容認する形となりました。トランプ大統領が「MBSは、私の尻にキスをするだろう」と言うのは、このような経緯からかもしれません。
サルマーン国王(MBSの実父)は、2017年の王位継承権の変更(宮廷クーデターとも呼ばれる)にともないナーイフ王太子の地位を解任し、MBS氏へと交代したという経緯です。サウジ家は、代々兄弟間で王位を継承していましたが、実子への継承となり、掟破りでもありました。
検察の司令はナーイフ内務相から国王直属に移し、ナーイフ氏の権力基盤は事前に骨抜きにされ、ナーイフ氏は国家反逆罪の罪にも問われ、自宅軟禁状態が続いているそうです。
第一次トランプ政権が退き、2021年バイデン政権(民主党)になると、MBSは、中国と近づきます。2023年には、中国の仲介で、サウジアラビアはイランと国交正常化を図り、大々的に報道されました。(その様子)
2025年1月トランプ政権が復活し、アメリカ国内での政局の変化が影響したのか、サウジアラビアは、また反イラン強硬へ戻ったように見えます。
その他にも、MBS王太子に関して不吉で不可解な事件が次々と起こりました。
◆2016年後半 エプスタインとの関係は?:エプスタイン・ファイルが今年開示され、有罪判決を受けた性犯罪者ジェフリー・エプスタイン(2019年8月アメリカ拘置所で死亡)は、サウジアラビアの指導者に対し、自ら舞台裏で金融の問題を解決できる人物として売り込みをかけていたと報じられ、メール内容とMBS王太子とエプスタインと見られる二人の笑顔で親密な写真がネットで拡散されていました。MBSとエプスタインは、どんな関係があったのか?エプスタイン事件は、闇へと葬り去られたのでしょうか? (こちら写真とメール内容)
◆2017年 レバノンのハリーリー首相拘束・強制辞任事件: 2017年11月、当時のレバノン首相サアド・ハリーリー(サウジアラビアとの二重国籍を持つスンニ派政治家)は、MBS王太子と「砂漠でキャンプをして過ごす」といった名目の招待を受け、急遽サウジアラビアの首都リヤドへと飛びました。ハリーリー家は伝統的にサウジ政権と非常に近い関係にありました。
しかし、リヤドの空港に到着したハリーリー首相を待っていたのは、歓迎ではなくサウジ治安当局によるスマートフォンの没収と警護隊への引き離しでした。
リヤド訪問からわずか2日後の11月4日、ハリーリー首相はサウジのテレビ局の画面に現れ、突然変貌し「自身の暗殺の危険」および「イランとヒズボラによる地域支配」を非難する声明を読み上げ、突如として首相辞任を発表しました。
この異様な辞任劇に対し、レバノン国内では「首相はサウジに脅されて辞任させられ、拘束されている」との見方が急速に強まり、「拘束・人質」疑惑と国際問題化へ発展しました。
◆2017年 リッツカールトン事件:2017年11月にサウジアラビアの首都リヤドの高級ホテル「ザ・リッツ・カールトン」に、汚職容疑を理由として王族や閣僚、大実業家ら200人~400人程度が強制収容され、資産を没収されました。この一斉検挙は、政治的粛清だとも見られているようです。
◆2018年 ジャマル・カショギ氏殺害事件:2018年にトルコのサウジアラビア大使館内で、サウジアラビア人ジャーナリストのカショギ氏が殺害されました。米情報機関は、この事件はMBS王太子の指示によるものだと報告されました。
邪魔なものは、排除する、という手法でしょうか。これは政局で、一般的になっているのでは、ないでしょうか。日本でも、自民党政権や西側諸国を厳しく批判する政治家たちは、次々と排除されたり、職を失ったりしていることが、頭に浮かびました。
これらの事件から、同じサウド家や親族からMBS王太子は、恨まれ、敵視され、外国軍は、イエメン(アンサール・アラー)からではなく、MBS王太子を内乱から守るために、サウジアラビアに滞在している、という見方もあります。
2016年にサウジアラビアは、湾岸の最大国として“ビジョン2030”を発表しました。石油依存からの脱却を目指し、国際的な投資、技術、観光、スポーツ、文化の中心地へと変貌を遂げることを目指していました。
不吉なこれらの事件は、イラン戦争以前から投資家たちを不安にさせていましたが、何もなかったようにスポーツ大国を目指し、次々とイベントが開催されました。一部の人々はMBS王太子が「スポーツウォッシング」を行っている、つまりスポーツを利用して同国の人権問題から人々の目をそらそうとしていると非難が上がりました。
そこで、2026年2月に米・イスラエルによるイラン攻撃が始まり、中東の不安定化が広まりました。サウジアラビアも「今のイランを排除したい」という強い思いがあったとも言われています。 イランはサウジアラビアをはじめ周辺の湾岸諸国を加担国とし、報復攻撃を行い、インフラ破壊、輸出入・観光・イベントの中止と甚大な被害が及びました。この影響で、サウジアラビアの「ビジョン2030」が、予定通り叶うとは思えません。
そして、MBS王太子は自暴自棄となったのか?アメリカからの要求があったのか?サウジアラビアは、再び7月イラン戦争の最中、イエメン(アンサール・アラー)へ攻撃を仕掛けてしまいました…。
アンサール・アラーの人々は、サンダルを履き、頭にターバンんを巻き、軽装で腰にジャンビーアと呼ばれる短剣をかざしています。TOYOTAの装甲車トラックに颯爽と乗り、砂漠や荒涼とした山岳地帯をライフルやミサイルを担ぎ駆け回ります。現代人から消え失せている、原始的な野性的人間のたくましさを感じます。一方で破壊力がある近代的な弾道ミサイルやドローン攻撃も行う手強い相手のようです。
中東だけに止まらない戦争か?
豪州ABCのイスラエル特派員の報道をもとに戦状と今後の展開についてまとめたいと思います。
10月中旬サウジアラビアの空港は、一連の致命的な攻撃を受け、王国全土の航空交通が混乱に陥り、アンサール・アラーとの長年にわたる紛争が危険な新たな段階へとエスカレートしたことを示しています。不吉にもアンサール・アラーは「最悪の事態はこれからだ」と警告しました。これは、米国とイラン間の協議が全く進展せず、すでに別の戦争で膠着状態に陥っている地域にとって、またしても憂慮すべき事態です。
この状況は、長年にわたり地域における優位性を確立し、投資と機会の楽園としてのイメージを刷新しようと努めてきたサウジアラビアにとって問題を引き起こしました。この攻撃で最大の死傷者を出し、サウジアラビアの防衛の脆弱さと防衛ミサイル不足が指摘されています。イランから独立した判断で戦いを進め、戦争が続けば両国の破壊は、ますます進む危険性があります。
そして、ホルムズ海峡だけでなく、サウジアラビアの石油を運び出す、紅海のバブ・エル・マンデブ海峡が封鎖されれば、世界経済が崩れ、資源や食料不足と物価上昇に襲われるかもしれません。アンサール・アラーはこの海峡封鎖はサウジアラビアが過去12年間にわたってイエメンに対して行ってきた「抑圧的な包囲」への報復措置だと発表しました。
専門家たちは次のよう展開を話していました。
「この問題はサウジアラビアだけにとどまらない。より国際的な注目を集める必要がある」
「そして遅かれ早かれ、西側諸国も中東諸国も、この問題に対処する方法を見つけ出さなければならないだろう」
以上が報道内容からです。(こちら参照)
間近のイスラエルとアメリカ国政選挙前後のイランへの動きは、どうなるのか…。
私はこれらの出来事にふれ、日本の「向こう三軒両隣」という言葉を思い出しました。日本の古くからの文化に立ち戻り、近隣の国々とお付き合いし、穏やかに生活できないのか、とつくづく思いました。
そして、憲法9条を維持し、中立で、戦争には関与しないのが得策ではないでしょうか。
冒頭の写真は、昨日咲き始めたジャコバンサボテンです。

今滝 美紀(Miki Imataki) オーストラリア在住。 シドニー大学教育学修士、シドニー工科大学外国語教授過程終了。中学校保健体育教員、小学校教員、日本語教師等を経て早期退職。ジェネレーションX. 誰もがもっと楽しく生きやすい社会になるはず。オーストラリアから政治やあれこれを雑多にお届けします。写真は、ホームステイ先のグレート オーストラリアン湾の沖合で釣りをした思い出です。