政治を斬る!

こちらアイスランド(236)内陸の絶景ケルリンガルフョットルよりも濁流を渡るジープ道〜小倉悠加

二週間はやっ!この二週間は療養人を抱えたことも手伝い、やたら忙しかった。

療養人は夫のことで、骨折した時に肩に入れた医療用のプレートとボルトを抜く手術をやっと受けることができた。家でゴロゴロしてる人、もとい!療養人がいると、お茶だの食事だので一日中食べてばかりで忙しかった!!そこ?!そして二週間、しっかり禁酒している。

そんな訳でどこへも行っていないため、この夏を少し振り返ろうと思う。

今年の8月中旬、数年ぶりにKerlingarfjöll(ケルリンガルフョットル)へ足を伸ばした。

まずはおさらい。

初めてこの地を訪れたのは、忘れもしない2021年7月。たまたま立ち寄ったキャンプ地の近くだったので、予備知識なく足を運んだ。

見てびっくり。まさに脅威の別世界だった。思い返せばジムニー乗りになる前だったので、ここは私が最初に触れた本格的なアイスランドの絶景だったのかもしれない。いや、アイスランドはどの観光地も絶景だ。けれど、ここの規模感は全く違っていた。

好きになり過ぎて3年ほど連続で行ったし、ワンシーズンに数度行ったこともあった。ある程度は堪能したこともあり、ここ数年は未到の道を走るのに忙しくて寄るタイミングが見つけられなかった。

そして今年8月中ば、彼の夏休みの後半にちょうどいい天気の日がやってきた。

「久々にケルリンガルフョットルなんてどう?」と彼。

お〜、いいねいいねぇ。ここ数年行ってなかったもんね。〜

久々のキュールル(Kjölur)は悪くない。お久しぶり!と35号線を走り始めた。この道の途中までは観光のドル箱であるゴールデンサークルでもある。なので黄金の滝まではよく来るけど、それ以北はなかなか出向く機会がない。遠くに氷河を見ながらの風光明媚な道なので、楽しみだ。

未舗装道路なので多少のガタゴトは仕方がない。夏の観光シーズンの終盤なので、若干荒れていることは想定内だ。それにしても道路は酷い穴だらけ。

「穴!穴!道路がホーリー!」などと、面白くもないジョークを連発しながら進んだ。holeyとholyということね。穴と神聖!

コロナ後から、急にあちこちの道路状況が酷く感じるようになった。この道に限ったことではなく、レイキャビクからスナイフェルスネスへの道中とか、穴だらけでひどいものだ。原因は交通量の増加だろう。特に山岳道は近年レンタカーも入り込むようになり、交通量が以前とは比べものにならなく増えている。

35号線のこのあたりは、氷河ツアーで通年大型バスが通行する。それも氷上で走れる巨大なバスだ。雪解け時なの、ぬかるみで道路が痛む時期の山岳道は通行止めにするのが普通だ。けれどこの道路は氷河ツアー等で商業利用されているため、どうやら通行止めにはできないような印象を受ける。

とにかく穴、穴、穴。氷河ツアーを抜けた先の道は大丈夫なのかと思いきや、いやいや、その後も続くは続くは。35号線を外れてケルリンガルフョットルへ向かう道もずっとずっと酷かった。

道路整備がよほど間に合わないのだろう。以前はこれほど酷いことはなかった。

コロナあたりまでは、気が向けばこの道を使って北部から南部へ抜けたことが何度もあった。いや、好んで使っていた。しかしこの状況が改善されない限り使いたくない。景色は好きだけど、道路のコンディションが悪すぎる!

と、ブリブリしながら目的地の近くまできた。そこはケルリンガルフョットルを訪れる際のベースとなるキャンプ場。・・・なんだけど、そこで幅をきかせるのは新しくできた高級ホテルと温泉施設だ。キャンプ場も一応は残されている。キャンプ大人一名3千isk(アイスランドクローナ)。二人だと8千円くらい。ホテル宿泊は一泊10万円以上なので、お安いと思わないといけない。最近のアイスランド、なにもかもがバカ高くて本当にイヤ!

ケルリンガルフョットルの駐車場までは左手に峡谷があり、既に絶景。

以前アイキャッチにした写真と同じ場所に立ってみた。頭の両脇の白髪が鳥みたい(笑)!この一年ほど白髪染めをしなくなった。思ったより白髪が目立たなくてがっかりしてる。鳥みたいだから、やっぱり白髪染めしようかなぁ。

駐車場は文字通り車が溢れていた。駐車場は20-30台も入ればいっぱいだ。本来は駐車すべきではない場所まで車で埋め尽くされていた。観光バスも来るし、人気が出てしまったので手狭感が拭えない。駐車するといっても手前は坂だし路上駐車は危なすぎる。この場所はこれからどうなってしまうのだろう。不安になる。

ケルリンガルフョットルは相変わらずの絶景だ。もちろん天候のいい日を選んだ勝利でもある。

小一時間ほど散歩しただろうか。日帰りなので勝手知ったる道をいくつか歩いた。本格的なハイキングをする予定ではなく、久々だから軽く見に行ってみよう!ということで来たので、それでいい。

ここで少し悲しい思いをした。自然破壊の臭いだ。わざとではなく、たぶん安全のためにルートを外れて歩いたのではとは思うが、足場の両端に大きく踏み荒らした足跡が残っていた。写真ではわかりにくいかもしれないが、現場で見ると痛々しい。私も夫もこれには驚いた。以前もそういう足跡はあったけれど、これほど広い範囲ではなかったのだ。

ここはルートのすぐ横なので理解ができないことはないが、人が足を踏み入れる用がない場所にも点々と形跡があり、なぜこのようなことをするのかと、ずっと心の中にひっかかったままこの地を歩いた。

そんなこんなで心があまり踊らず、楽しかったのはむしろこの場を離れた後だった。近隣に別の駐車場があり、ハイキングルートの出発点として使われている。そこには氷河を讃えるこんな風景が広がっていた。

山の中腹のこの地域を離れて、「少しだけ」と向かったのがジープ道だった。ジープ道というのは、公団の管理道路ではないけれど、道路として使われていていますよ、という感じの道だ。ジープ道路は千差万別で、例えば釣り人が川へ行くために通ったり、放牧した羊を集める時に使われたり、ATV車のツアーのルートだったり、我々のようなスキモノ好きが走りに来たりーーー。

こういう道路の情報は一般には出てこない。私は地図を拡大して目で探す。超アナログ!ジープ道は風光明媚なこともあるけれど、単に荒っぽいだけで特に取り柄のない道路もある。走ってみないことにはわからない。そして悪路すぎる時は引き返すのが大前提。

今回のジープ道は、最初は起伏が激しくタイヤが溝にはまり込みませんようにと祈りながら進んだ。でもジープ道あるあるで、ほどなく平坦な道に出ることができた。ジープ道の入り口は、険しいことが多い。軽い気持ちで走ると危険なので、寿司屋でいうと「一見さんお断り」の看板なの。それなりの覚悟で来い!と(笑)。

平坦な道に出ると、先ほど間近にあった山が遠方にくっきり見える。イエ〜イ。そこを抜けると、ものすごく広い川幅を渡ることになる。大丈夫?と一瞬構えたけれど、川幅がだだっぴろいだけで、流れはごく浅かった。濁流は底が見えないので避けるべきと言われる。でもここは浅瀬なのがありありと分かったので大丈夫。こんな濁流を通るなんて楽しい!

ん?結局楽しんだのはジープ道?!まぁね。いつものこと!

帰路は「ホーリーめ、最悪!」を連発しながら通り抜けた。夏は気が向けばこの道路を使っての南北の往復が好きだった。今回のホーリー度にはいささか食指が削られてしまい、「気が向けば」などという選択からは外さざるを得ない。夏に使える楽しい道路が減ってしまった。新しい道路を開拓せよ、ということかな。

小倉悠加(おぐらゆうか)
東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド在住。メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、ツアー企画ガイド等をしている。高校生の時から音楽業界に身を置き、音楽サイト制作を縁に2003年からアイスランドに関わる。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、社会の自由な空気に魅了され、子育て後に拠点を移す。休日は夫との秘境ドライブが楽しみ。愛車はジムニー。趣味は音楽(ピアノ)、食べ歩き、編み物。