日本で性の問題を話題にするのはタブー視されがちですが、豪州ではかなりオープンに議論されます。今回は、10月始めに起こった沖縄での女性への強盗殺人事件と、豪州での性的問題を絡めて考えたいと思います。
豪州や英国で起こっている若者を中心にしたトラブルを、日本では防止してほしいという願いからです。不快を感じる内容があるかもしれませんので、以下はご注意ください。
たぶん日本で報道されていない性の問題
日本のメディアは、この事件を強盗殺人事件と呼んでいます。犯行の詳しい内容は明らかになっていませんが、絞殺のようです。豪州の主要メディアも報道しました。豪州では違う角度から問題が起きています。
2025年にも、米兵が日本人女性の首を絞め、性的暴行を加えた罪で有罪判決を受けた事件がありました(米兵は控訴)。これらに共通するのは、“絞首・絞殺”だという事です。
先月シドニー北部のビーチでも、16歳の少女が性的絞殺で死亡した事件がありました。
豪州では57%の若者(18~35歳)が寝室で絞首(窒息行為)された経験があります。“性的絞首”が定番になり、命を失ったり、体に異常(記憶力や偏頭痛、視力や聴力、流産、脳卒中など)が起こったりします。
これについて、ABC(NHK相当)のTV番組やラジオで取り上げられ、国会議員や若者の間で議論されていました。それらの報道をもとにお伝えします。
次のような若者の声が紹介されていました。
25歳の女性クロージャさんは、ビクトリア州青少年問題評議会と協力して、「Yeah, Nah: 積極的な性交同意教育プロジェクト」を運営しています。彼女は、次のように語りました。
「絞首は“性行為における定番の手口の一つ”になりました」
「あまりにも当たり前すぎて、もはや奇抜さすら感じられなくなってしまった。ただの平凡なものになってしまった。それが恐ろしいのは、誰もそれを理解してくれないことです」
「初めて自分のセクシュアリティを探求し始めたとき、自分が考える良さと、実際に同意して行う性交との間にギャップがありました」
「私が良いと思うことに基づいていたわけではなく、社会が良いと思うことに基づいていたんです」
女子大学生のスペンサーさんは次のように語りました。
「私自身の性的な経験の中で、男性の手が私の喉に忍び寄ってくるような状況に何度も遭遇しました」
「その時、首を絞めないでほしいと頼んだことを謝罪してしまいました」
「人々が首を絞められないように頼むことさえためらうなんて、なんて嘆かわしいことでしょう」
20代前半の異性愛者の男性で、性的絞首をした経験のあるタロンさんにとって、絞殺は権力関係を弄ぶ手段だと語ります。彼は次のように語りました。
「服従と支配の間の、あの絶妙なバランスのようなものだ」
「性行為中に相手の首を絞めた経験のある若い男性として、絞首は自分が期待されているシナリオに従っているように感じます」
「同僚たち、そして私自身の中にも、『これはやらなければならない、やるべきだと感じている』という感覚が見られる」
「なぜ私は男として、『この常態化した文化に参加しなければならない』と感じるのだろうか?」
「この権力闘争をどう感じているかを考えると…なぜそれが絞首という形で現れるのだろう?なぜ私はこの身体的な危害を加えたいのだろうか?」
以上がオーストラリアの若者たちの声です。若者の間で。当然となった性的絞首に、戸惑いながらも行っている様子を感じました。
私は報道されるまで、これが普通のことで、流行であることに、気付きませんでした。まさに、ニューノーマル‐New Normal-新しい常識になっていることに驚きました。
なぜ、危険な行為が正常化するのか?
性的絞殺の描写(ポルノ・グラフィ)が、テレビ・映画・マンガなど大衆文化において、絞首シーンが著しく増加していることが原因だと言われています。特にSNSのショート動画を通じて、若者の間で共有され、実際に広まったようです。
“危険だ。”“異常だ。”と思われることが、SNSで広まると、まるで、“普通の常識”に変化し、実行され広まるという実証のようです。
日常や理性とは別の、非常識的行為をする快感。それが常識化、エスカレートし、死に至るかもしれない世界に入っている、多くの若者たちがいることに、驚きました。
その対策は?
豪州の社会福祉大臣プリバーセク氏(Tanya Plibersek)は、ポルノにおける絞首や窒息の描写を禁止することへの支持を表明しており、英国における同様の禁止措置を指摘する声も出ています。
SNSへの動画投稿には、スマート・グラス/スマート・眼鏡(Smart glasses)で相手の同意なしで、又は気づかれずに、簡単に撮影できるようになったことが一因のようです。
マスマート・グラスは、今年日本でも急速に広がっているようです。マイク、スピーカー、カメラ、デジタルディスプレイ画面などの電子技術が内蔵され、見た目は普通の眼鏡やサングラスです。
それらを使えば、スマートフォンを取り出すことなく、デジタル情報とのやり取り、音声の再生、撮影などが可能です。外国語の同時通訳機能を備え、便利ですが、プライバシー侵害や悪用される、マイナス面もあり、豪州では輸入禁止の声が上がっています。
(こちら参照1https://www.abc.net.au/news/2026-08-30/pressure-for-government-to-ban-strangulation-in-pornography/107094758 、2 https://www.abc.net.au/news/2026-09-27/why-is-sexual-strangulation-prevalent-among-young-australians/107194944 )
日本では、1936年の「阿部定事件」のように、窒息や絞首を伴う性愛行為が事件として社会に衝撃を与えた歴史的な例がありました。女性が男性に被害を与えた事件もありました。日本では、性の問題は、公ではほとんど語られず、プライベートや小さなコミュニティの中に閉ざされているかもしれません。
外国人が増え、文化もグローバル化で急速に広がっているので、日本でも被害が出ないよう防止策を今のうちに取ってほしいと、この沖縄の事件にふれながら思いました。
防衛の自立
日本でアメリカ頼みの防衛が続いている事が、国内外から“戦後80年も経つのに、まだ米軍が何万人も駐留している”というような指摘にふれます。
アメリカから遠く離れた異国で、規律の厳しい軍隊で生活する、まだ未熟なアメリカ人の若者たちは、ストレスがたまり、犯罪に繋がっているのかもしれません。
最近、米国のシンクタンク「ディフェンス・プライオリティーズ(Defense Priorities)」が、米軍の縮小を提案していました。その提言の要点は以下の通りです。
・米軍の展開拠点を第一列島線(日本、台湾、韓国、フィリピン)から第二列島線(グアムなど)へ後退させる。
・日本・韓国・オーストラリア・フィリピンとの相互防衛条約を段階的に終了・縮小する。
・台湾有事への明確な不関与
これらは、現行の米政府方針とは大きく異なり、安全保障上のリスクを危惧する声も上がっていますが、可能性が低くないとも見られています。
トランプ大統領の発表した、ドンロー主義では、米国は西半球(北南米を含む)支配にポイントを置くことからも、その他の地域からは、力を引くということでは、ないでしょうか。
第62回で書きましたが、米国は戦い方を、世界各国に軍を置く現地での戦争ではなく、Choke Pointチョークポイント(交通、貿易、または軍事力が制限された空間を通らざるを得ない、狭く戦略的な地理的な場所:パナマ運河・スエズ運河・ホルムズ海峡・マラッカ海峡)を海軍や空軍で抑えて、運航や貿易をコントロールし経済を支配しようとする戦略に切り替えているようです。
世界で最も多額の負債を抱え、国内が疲弊する米国は、軍事費を抑え、コンパクトで、効率的に支配力を維持する手法に切り替えているようです。
日本は戦争に発展しない外交を展開しつつ、自国で防衛する準備を進める必要性が、現実味を帯びてきたと感じます。
9月30日、米軍がイラクから完全撤退を完了したと発表され、イラクの人々が、「新たなイラクの誕生だ」と盛大に祝う様子が報道されました。(こちらその様子)
米国のイラク侵攻・戦争から20年以上を経ての撤退に、イラク政府と米国防総省、同盟国イランからも歓迎する声が上がりました。イランは、長年の圧力によって米軍が撤退を余儀なくされたと主張しました。米国がイラクの隣国イランとの間で戦闘を続ける中で行われた撤退は、長期間計画され,2年前のバイデン政権時に合意されたそうです。(こちら詳細)
これらの話にふれると、大半の国民が望み声が上がれば、日本でも十分実現可能だと感じました。あとは為政者たちの、やる気と実行力かもしれません。
冒頭の写真は、オーストラリア原産の花たちの花束です。こちらは、少し春らしくなってきました。

今滝 美紀(Miki Imataki) オーストラリア在住。 シドニー大学教育学修士、シドニー工科大学外国語教授過程終了。中学校保健体育教員、小学校教員、日本語教師等を経て早期退職。ジェネレーションX. 誰もがもっと楽しく生きやすい社会になるはず。オーストラリアから政治やあれこれを雑多にお届けします。写真は、ホストファミリーとグレートオーストラリアン湾の沖合で釣りをした思い出です。