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立憲野党私設応援団(54)政権交代の可能性について考えてみる(その9)〜憲法9条変えさせないよ

※この連載はSAMEJIMA TIMESの筆者同盟に参加するハンドルネーム「憲法9条変えさせないよ」さんが執筆しています。


<目次>

0.野党による政権交代の可能性について考えてみた過去の議論の紹介

1.泉房穂「救民内閣構想・7つのステップ」とそれに対する反応

2.私の意見①「大同団結」と「令和の大改革」の矛盾

3.私の意見②「予備選実施」と「重複立候補禁止」の無茶

4.私の意見③「救民内閣」の前に「お試し政権交代」を

5.TOMOさんの意見

6.としぴょんさんの意見

7.トピックス①:能登半島地震と「れいわビジョン」

8.トピックス②:田村智子さん共産党の新委員長に


0.野党による政権交代の可能性について考えてみた過去の議論の紹介

私が連載を担当している「立憲野党私設応援団」において、過去に8回「政権交代の可能性について考えてみる」というタイトルの論考を掲載しました。

今日はその9回目の議論です。

今回は、泉房穂さんによる「救民内閣構想」について考えていきます。

前回までの議論を参照したい方のために、まずは、これまでの8回の記事のリンク先を載せて、議論を始めたいと思います。

「政権交代の可能性について考えてみる(その1)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その2)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その3)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その4)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その5)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その6)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その7)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その8)」

1.泉房穂「救民内閣構想・7つのステップ」とそれに対する反応

前明石市長の泉房穂さんが、「救民内閣構想・7つのステップ」を公表しました。

【泉房穂】「令和の大改革」宣言!<救民内閣に向けた7つのステップ初公開>

【続編】泉房穂の「令和の大改革」<救民内閣に向けた7つのステップ>

①世論喚起、②大同団結、③候補者調整、④政権交代、⑤方針転換、⑥国会での可決、⑦令和の大改革という7つのステップを踏んで「国民の味方チーム」を作り、国民の生活を救うという泉房穂さんの構想に対して、SNS上では、好意的な反応が上がっています。

Samejima Timesでも、主筆の鮫島浩さんと、筆者同盟の今滝美紀さんが、「救民内閣構想」のことを記事で取り上げています。

泉房穂コールは起きるか?「救民内閣構想・7つのステップ」の可能性と課題~決定的に重要なのは「圧倒的な総理大臣候補の登場」だ!

オーストラリアから日本を思って(22)れいわ6年辰年、救民政治へ、竜よ集まれ!~今滝美紀

2.私の意見①「大同団結」と「令和の大改革」の矛盾

泉房穂さんは、外交や安全保障政策、エネルギー政策などが政党によって違っていても、「国民の生活を救う」という大義のもとに「大同団結」して政権交代を実現できるとしています。

一方で、最終的な目標である「令和の大改革」については、「廃県置圏」と「首相公選制」という2つのビジョンを掲げています。

これは相矛盾する考え方であると言わざるを得ません。

泉房穂さんは、立憲民主党、日本維新の会、日本共産党、国民民主党、れいわ新選組、教育無償化を実現する会、社会民主党、参政党、みんなでつくる党といった野党に加えて、政治団体である日本保守党、そして、場合によっては与党である公明党や自由民主党の一部の議員も含めて全員が「大同団結」する、という構想を思い描いているようです。

しかし、イデオロギー的にも政策的にもこれだけ幅広い政治勢力が結集できるとすれば、それは短期的な目標に対してであって、長期的な「この国のかたち」をどのように変えていくのか、あるいは変えずに守っていくのかということに関して、例えば日本保守党と日本共産党が意見の一致をみるという可能性は到底考えられないでしょう。

「廃県置圏」というのは、47ある都道府県と約1700ある市区町村を廃止して日本全国を約300の「圏域」に再編成するという統治機構の大改革のことで、似たような議論を行う論者は少なくなく、江戸時代の藩の数が約260(あるいは約300)あったとされることから、一般的にはこの種の政策提言は「廃県置藩」と呼ばれています。

もちろん、これはこれで有力な一つの考え方だとは思いますが、別な考え方として、「道州制」を導入するという方向性も考えられます。

また、「保守主義」という観点から見れば、「今ある都道府県や市町村をなぜ新たに『圏域』(あるいは『圏』?『藩』?)に再編する必要があるのか?今のままでよいではないか!」という考え方が出てくるのも自然な発想です。

今は国会議員の間の互選で決められている内閣総理大臣を有権者の投票で直接選ぶようにするという「首相公選制」も、魅力的なアイデアの一つだと言えますが、これが広く支持されるかどうかは未知数です。

「内閣総理大臣を有権者が直接選挙で選べるようになるなら、いっそ天皇制を廃止してしまって大統領制に移行した方がいい」という意見が出てきてもおかしくありませんし、逆に「保守主義」という観点から見れば、「今の議院内閣制を尊重し、これからも守っていくべきだ」という意見が出てきても全然おかしくありません。

また、仮に「首相公選制」を希望する有権者が多いと想定したとしても、これは「憲法改正」が必要なマターです。

現時点で「憲法改正」まで構想に入れた政権交代の姿を提案するというのは、実行する政治家の側にとっても、話を聞く有権者の側にとっても、あまりにも荷が重すぎる内容だと思います。

3.私の意見②「予備選実施」と「重複立候補禁止」の無茶

泉房穂さんは、3番目のステップの「候補者調整」について、衆議院の小選挙区における「予備選実施」による候補者一本化と、比例区での復活当選を狙って無闇矢鱈に小選挙区に候補者を立てることを防ぐための「重複立候補禁止」という2つの具体的な提案をしています。

正直言って、これは無茶な内容だと思います。

アメリカの大統領選挙では「予備選」が実施されていますので、おそらくそのことを念頭に置いた考え方であり、かつ、泉房穂さんは弁護士資格を持っておられるので、日本の公職選挙法に「人気投票の公表の禁止」の規定があることをふまえたうえで、それに抵触しない実施方法を考えておられるのでしょう。

しかし、「同じ政党の内部で候補者を選定するための予備選」と「異なる政党どうしで候補者を一本化するための予備選」では、予備選を実施する困難さがまるで違います。

果たして予備選に負けた側が大人しく候補から降りて選挙区を空けてくれるかのどうか、場合によっては無所属になって強行出馬しようとする候補者も出てくるかもしれません。

また、「予備選を行って、負けた方は候補者を降りろ」というやり方で289ある小選挙区の候補者調整を行うことは、一見すると「公平」なように見えますが、実際には、大規模政党に有利で、小規模政党に不利な取り決めになります。

立憲民主党代表の泉健太さんが「X」(旧twitter)で泉房穂さんの救民内閣構想に賛同するツイートをしたのも、「国民の生活を救う」という気持ちが全くないとまでは言いませんが、大規模政党である立憲民主党に有利な内容の提案を見て「これは美味しい」と思ってのことではないかという気がしてなりません。

今のままの「候補者調整」の考え方ですと、小規模政党が事前に「予備選で『野党統一候補』になれる選挙区が一つもない」と判断した場合には、予備選に参加することに何一つメリットが無いことになりますので、「野党統一候補の予備選には参加せずに、独自に候補者を立てて衆院選を戦います」という結論にならざるを得ないことになります。

さらに、「重複立候補禁止」も、おそらく実現困難だと思います。

実は、泉房穂さんが一度だけ衆議院議員に当選した2003年の総選挙では、泉さんは小選挙区では落選し、比例区で復活当選しています。

「もし比例復活がなければ、あなたに託そうとした有権者の声を国会に届けることはできなかったんですよ。泉さんが衆議院議員としてキャリアを積むことができたのは、比例復活があったからじゃないですか。それなのに、どうして比例復活を禁止するんですか?」と言われたら、泉房穂さんは、どう答えるのでしょうか?

4.私の意見③「救民内閣」の前に「お試し政権交代」を

次期衆院選での「政権交代」ということに関して言えば、「機運が醸成されつつある」という感じは少ししますが、「世論が盛り上がってきている」というには程遠いという気がしています。(私個人の感想です。)

温度感に例えて言うなら、「冷凍されてカチカチに凍っていたものが少しずつ解凍されてきた感じはするけれども、まだ『ホット』(熱い)と言えるほど温まってきている感じはしない」といったところでしょうか。

もちろん、自民党政権に対する不満や憤りは高まってきていると思います。

しかし、「自民党政権は嫌だが、野党に政権を任せるのも無理だろう」と考えている有権者が多数派なのではないかという気がします。

やはり、「野党には政権担当能力が無い」と考える有権者が一定以上の割合で存在していることを無視して「政権交代」について論じるのは無理があるのではないかと思います。

そこで、私からの提言ですが、「救民内閣構想」は次のような二段階に分けて、政権交代を呼びかけるようにしてはどうでしょうか。

二段階「救民内閣」構想

第1段階

2024年4月~7月:第50回衆院選 ※衆院選の時期は現時点での予測です。

(次の衆議院解散総選挙の時期は自民党政権が決めるので、野党はそれに従うしかありません)

○「そうじ(掃除)選挙」をキャッチフレーズに掲げ、自民党の裏金腐敗政治を一掃し、「大同団結」した野党への「お試し政権交代」を目指す

第2段階

2025年7月:第51回衆院選

(野党が新しく政権に就いた時点で、約1年後のこの時期に衆議院を解散して衆参同日選挙を行うことを国民に約束するものとします)

○「せんたく(選択)選挙」をキャッチフレーズに掲げ、21世紀に入って四半世紀経ち「戦後80年」となる2025年に、「戦後100年」となる2045年の日本の姿や、「22世紀」に突入する2101年の日本の姿を描く「中長期ビジョン」を示し、「令和の大改革」を断行するための「本格的政権交代」を実現する

まず、第1段階では、政策の違いには目を瞑って「大同団結」し、2025年7月までの約1年の期間限定で「暫定政権」を樹立することを目指します。

もし泉房穂さんが「野党が政権を獲っても、必ず来年の7月に解散してもう一回選挙をやりますから、とにかく今回は『自民党にNO』と言うために、野党に投票してください。野党が政権を獲ったら、裏金は絶対に許しませんし、能登半島地震の被災者支援や、物価高への対応など、緊急の課題に1年間全力で取り組みます。1年間の『お試し政権交代』の仕事ぶりを見て、『こら、あかんな』と思われるようでしたら1年で野党を政権の座から降ろしていただいて結構ですし、『結構やるやないか』と思われるようでしたら続けて政権を担当させてもらって、今度は『令和の大改革』のような時間のかかる課題にじっくり腰を据えて取り組みます。」と呼びかけるなら、耳を傾けて話を聞こうとする国民も、今よりはるかに増えてくるのではないでしょうか。

約1年間の「お試し政権交代」(暫定政権)の期間は、「ステータスクオ」(現状維持)を基本路線とし、野党の独自政策はほとんど盛り込まないこととします。

そのうえで、例外的に現状変更を行う「タスク」(課題)を次のように設定します。

暫定政権7つのタスク

1.物価高対策として10万円の「特別定額給付金」を令和6年度の間に2回配布する

2.コロナ禍の際の「ゼロゼロ融資」の返済期到来に対応する「コロナ借換保証」をさらに手厚く、柔軟で、使いやすいものにバージョンアップする

3.統一教会の被害者救済を進めるとともに、統一教会が今後政権中枢に影響を及ぼすことがないように「政教分離」を徹底する

4.能登半島地震の被災者への支援と生活再建を強力に進める

5.令和6年秋に予定している「紙の健康保険証の廃止」を、当分の間、延期する

6.祝日法を改正して「みどりの日」を5月4日から5月1日に移し、令和7年度以降、毎年「春の大型連休」(最小7連休、最大10連休)を作る

7.自民党の裏金疑惑をはじめ、過去の数々の疑惑に関して徹底した捜査や調査を行い、真相の究明と責任の追及を図る

「暫定政権」の首班は、既存の政治家というよりは、全然別なところから誰かを連れてきて、その人にやってもらったらいいのではないでしょうか。

選挙では、その人を「立憲民主党の東京ブロックの比例単独1位」か「れいわ新選組の東京ブロックの比例単独1位」にすることで、「野党共通の首班候補」として処遇すればいいと思います。

最初の1年は「7つのタスク」だけをやって、それから2025年に衆議院を解散し、「衆参同日選挙」をやって、再び国民の信を問います。

「衆参同日選挙」の際には、「国民の味方vs国民の敵」に二分するというよりも、政策が近い政党どうしがグループを形成したうえで、「穏健な多党制」(穏健な多党グループ制)になるような「政界再編」進めていくべきでしょう。

現野党の1年間の与党としての仕事ぶりや将来ビジョンが評価されるなら、そのグループは2025年の選挙でも再び政権の座に就いて本格的に「救民内閣」を組閣して独自政策を進めていくことになるでしょうし、それが評価されなかったグループは、政権の座を降りて下野して「休眠内閣」(影の内閣・シャドウキャビネット)に回ることになるでしょう。

国民から選挙で2回連続して選ばれて本格的「救民内閣」を発足できるようになってはじめて、「子育て支援」や「消費税減税(もしくは廃止)」、あるいは「辺野古基地建設中止」や「安保法制廃止」、そして「脱原発」、「ロスジェネ救済」、「選択的夫婦別姓」、「同性婚」といったことに順番に手を付けていくことができるのではないでしょうか。

「廃県置圏」や「首相公選制」に関して言えば、できるとしても、まだかなりその先の話になるのではないかと思います。

5.TOMOさんの意見

SAMEJIMA TIMESの2023年11月29日の記事のコメント欄にある「TOMO」さんのご意見をここで一部抜粋して紹介させていただきます。

TOMO

2023年11月29日10:24PM

次期衆院選は自公の与党陣営も立憲・共産・れいわ・社民の野党陣営も維新・国民民主を始めとしたゆ党陣営も過半数に届かないのでは?と考えています。

そしてこれは野党再編、の引き金になるのでは?と考えています。

3陣営すべてが過半数割れをすれば当然、自民は新たな連立相手を探すことになります。相手は維新・国民民主・そして立憲でしょう。ただ、各党の全員が黙ってそれに加わるか?と言われれば、それは無いでしょう。維新と国民民主の大半と一部立憲議員は自民党へ、残りが野党に残留することとなるのではないでしょうか?これが野党再編のきっかけです。

そして自民の仲間としての与党入りの機会を捨て、自民陣営から離脱した維新、国民民主の議員は野党とみなしても良いでしょう。今の野党陣営の問題は、野党の「フリ」をしたものが混ざり込んでいることです。自民に接近したいものは堂々と接近してもらった方がきれいにすっきりとします。

本当であれば一刻も早く自民党政権には倒れてもらいたいのですが、それが困難な今は自民に対抗しうる強力な野党を作り上げ、育てることが何よりです。

私が「次の次の衆院選」のタイミングで政界再編を起こそうと考えているのに対して、TOMOさんは「次の衆院選」が野党再編のきっかけになるとお考えのようです。

そのあたりについても、今後、議論を深めていくことが必要だと思います。

6.としぴょんさんの意見

SAMEJIMA TIMESの2023年11月29日の記事のコメント欄にある「としぴょん」さんのご意見をここで一部抜粋して紹介させていただきます。

としぴょん

2023年11月30日 11:22PM

SAMEJIMA TIMESによると来年解散総選挙かあるかもしれないそうですね。私の投票できる選挙区には投票したい人がいなくていつもテンション下がり過ぎて困ります。もちろん自民党に投票するつもりはありませんが立憲にはもっと投票したくありません。他に選択肢がない場合ノリで自民党に投票するかもですね。どうすれば良いかヒントを与えて下さい。(汗)

そうですねぇ、「自民にも立憲にも投票したくない問題」の答えを見つけるのは、非常に難しいですね。

以前であれば共産党が選挙区に候補者を立てていましたから「共産党の候補者に入れてみては?」という話になるわけですが、今は共産党が候補者を立てていない選挙区も多いので、「候補者を立てている参政党の候補者に入れてみては?」みたいな話になるのでしょうか。

あるいは、本当に自民党と立憲民主党の一騎打ちになって、そのどちらにも票を入れたくないという場合には、比例区の投票用紙に自分が支持する政党の政党名を記入し、最高裁判所裁判官の国民審査の投票用紙に「×」を記入したうえで、選挙区の投票用紙は「白紙のまま投票箱に入れる」という形にせざるを得ないのかもしれませんね。

7.トピックス①:能登半島地震と「れいわビジョン」

元日に起きた能登半島地震で亡くなられた方の御冥福をお祈りするとともに、被災された皆様に心より御見舞い申し上げます。

岸田政権の震災対応のあまりのお粗末さに国民から批判が湧き上がり、民主党政権時の東日本大震災の対応が「今の自民党に比べると有能だった」と評価されるとともに、れいわ新選組代表の山本太郎さんがいち早く現地入りして状況を視察し、復興に向けた「れいわビジョン」を打ち出したことに、大きな期待が集まっています。

8.トピックス②:田村智子さん共産党の新委員長に

参議院議員の田村智子さんが、日本共産党の新しい委員長に選ばれました。

委員長が代わったのを機に、街にある共産党の掲示板のポスターを、このポスターに貼り替えたらいいと思います。

昨年の統一地方選で初当選した全国最年少県議の吉田紋華さんと今年の党大会で新しく委員長に選ばれた田村智子さんの2連ポスターを津市に限らず全国津々浦々に貼っていけば、共産党にも明るい未来が開けてくるのではないでしょうか。


憲法9条変えさせないよ

プロ野球好きのただのオジサンが、冗談で「巨人ファーストの会」の話を「SAMEJIMA TIMES」にコメント投稿したことがきっかけで、ひょんなことから「筆者同盟」に加わることに。「憲法9条を次世代に」という一民間人の視点で、立憲野党とそれを支持するなかまたちに、叱咤激励と斬新な提案を届けます。

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