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朝日新聞は峯村記者が執筆した過去の記事に安倍氏が関与していないかを徹底調査せよ!

朝日新聞社は4月6日、外交・安全保障を専門とする編集委員の峯村健司記者(47)を停職1ヵ月とする懲戒処分を決めた。

朝日新聞記事によると、安倍晋三元首相が3月9日に週刊ダイヤモンドのインタビューを受けた翌日、峯村記者は安倍氏の意向を受けてダイヤモンド編集部の副編集長に電話し、「安倍(元)総理がインタビューの中身を心配されている。私が全ての顧問を引き受けている」「ゲラ(誌面)を見せてください」「ゴーサインは私が決める」などと要求したという。

ダイヤモンド編集部は朝日新聞社に対し「編集権の侵害に相当する。威圧的な言動で社員に強い精神的ストレスをもたらした」と抗議。朝日新聞社は内部調査したうえで「政治家と一体化してメディアに圧力をかけたと受け止められても仕方がない。報道倫理に反する極めて不適切な行為」と判断し、ダイヤモンド社に謝罪したという。

峯村記者は社内調査に対し「安倍氏から取材に対して不安があると聞き、副編集長が知人だったことから個人的にアドバイスした」「安倍氏とは6年ほど前に知人を介して知り合った。取材ではなく、友人の一人として、外交や安全保障について話をしていた。安倍氏への取材をもとに記事を書いたことはない」と説明したという。

峯村記者は4月20日付で退社することを3月20日にツイッターで表明していた。時系列からしてこの問題の発覚を受けて退社を決意した可能性がある。

峯村記者は朝日新聞社が懲戒処分を公表したことに対抗し、自らの見解をnoteで発表した。その内容をみてみよう。

峯村記者は、安倍氏が問題提起している「核共有(ニュークリアシェアリング)」について「(週刊ダイヤモンドに)重大な誤報記事が掲載されそうな事態を偶然知り、それを未然に防ぐべく尽力し、幸いにして、そのような誤報は回避された」と強調。安倍氏から記事のファクトチェックを依頼され、「ひとりのジャーナリストとして、また、ひとりの日本人として、国論を二分するニュークリアシェアリングについて、とんでもない記事が出てしまっては、国民に対する重大な誤報となりますし、国際的にも日本の信用が失墜しかねないことを非常に危惧しました」「今、現実に誤報を食い止めることができるのは自分しかいない、という使命感も感じました」とし、副編集長に電話して「全ての顧問を引き受けている」と伝え、「粘り強く説得しました」と説明している。

安倍氏との関係については「今日に至るまで、一回も、安倍氏に対して取材や報道はもちろん、やりとりをメモ書きにしたことすらもありません」「安倍氏からは完全に独立した第三者として専門的知見を頼りにされ助言する関係であった」とし、朝日新聞記者としての取材活動とは一切関係ないと強調。朝日新聞社が「取材先との一体化」「報道倫理に反する行為」として懲戒処分を決めたことに強く反発している。

さらに朝日新聞社の取り調べは「始めに『処分』の結論ありき」だったと主張。「今回の処分の不当性については法的にも明らかにしてまいりたい」とし、提訴する可能性を示唆した。

はたして峯村記者は安倍氏の「友人」なのか「顧問」なのか。彼の立ち位置はよくわからない面はあるものの、朝日新聞を敵視する安倍氏に朝日新聞の編集委員が外交・安全保障の知見に基づいて助言を重ね、さらには安倍氏の意向を受けて他社の編集権に介入して懲戒処分を受けたという構図は、話題性満点だ。

私は朝日新聞時代に峯村記者とは接点がない。私は政治部や特別報道部の在籍が長く、彼は国際報道部の在籍が長かった。

私は福島原発事故をめぐり政府が非公開としてきた「吉田調書」を独自入手してスクープした取材班のデスクを務めた。朝日新聞社は安倍政権やその支持勢力から「誤報」「捏造」という反撃を受け、このスクープを誤報と認めて取り消し、私たち取材班を懲戒処分にしたことは、サメタイで繰り返し紹介してきたとおりである(以下の記事参照)。

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私と峯村記者の共通点は、①朝日新聞記者として新聞協会賞を受賞したこと、②朝日新聞社から懲戒処分を受けたこと、③朝日新聞社を退社した(する)ことーーの3点だ。

私と峯村記者の違いは、①私は安倍政権を批判してきたが、峯村記者は安倍氏と親密であること、②私が新聞協会賞を受賞した「手抜き除染」のスクープは国家権力を批判する立場からの報道だったが、峯村記者が受賞した「LINE報道」はむしろ国家権力による安全保障上の統制強化を後押しする効果があったこと、③私は「吉田調書」報道の取り消しや取材記者の処分に反対したものの管理職として結果責任は認め懲戒処分を受け入れたが、峯村記者は法的に争う姿勢をみせていることーーというあたりだろうか。

いずれにせよ、この問題は私も他人事とは思えず、引き続きウオッチしていきたい。もうすこし詳しい状況が判明してきたら、改めて分析してみたいと思う。

ただひとつ、現時点でいえることは、峯村記者がこれまで朝日新聞に執筆してきた外交・安全保障の記事は、安倍氏や安倍支持層らに好意的に受け止められてきたということである。峯村記者はこれらの人々からSNSで「朝日新聞の良心」と持ち上げられてきた。今回の懲戒処分に対しても、これらの人々からは峯村記者を擁護する声がわきあがっている。

朝日新聞社は、峯村記者が朝日新聞に執筆した過去の記事や他メディアへの出演、講演など記者活動の全般について、少なくとも安倍氏と知り合ったという6年前から現在に至るまで、安倍氏らの影響を受けたものがなかったのかを徹底的に調査・検証し、読者に報告すべきである。

ただでさえ、朝日新聞は2014年に「吉田調書」報道を取り消して安倍政権に屈服した後、安倍政権批判に及び腰になり、すり寄る報道が増えたとも指摘されている。とりわけロシアのプーチン大統領との首脳会談をはじめとする「安倍外交」に対する朝日新聞の報道姿勢は手緩かった。

朝日新聞社が外交安全保障の専門記者として編集委員に任命し看板記者としてアピールしていた峯村記者が、安倍氏の意向に沿って記事を執筆していた場合、読者に対する重大な背信行為となろう。

徹底調査を怠り、峯村記者の退社をもって真相をうやむやにしたら、「安倍氏と親密な外交安全保障の専門記者が、安倍氏の意向を受けて、安倍氏に有利な記事を朝日新聞に執筆し、安倍氏の世論工作に利用されていた」という読者の疑念は永久に解消されないだろう。ジャーナリズム史に重大な疑惑を残すことになる。

峯村記者は、無料通信アプリを運営する「LINE」が利用者に十分な説明がないまま、中国の関連会社から個人情報を閲覧できる状態にしていたことを2021年3月17日朝刊で報じ、利用者が投稿した画像・動画データを韓国内のサーバーで保管していたことを翌日朝刊で続報し、昨年度の新聞協会賞を受賞している。この記事を新聞協会賞に申請したのは、朝日新聞社である。

私はこのLINE報道に最初に接した時、大きな違和感を抱いた。何やら物騒な話だと思って記事を読み進めたが、どうもしっくりこない。「これは問題だ」と訴える気持ちは伝わってくるのだが、実際にどこがどういう理由で問題なのか、論理的に示されていないと感じたのだ。むしろ「嫌中感情」や「嫌韓感情」に訴えるふわふわとした記事であるという印象を抱いたのである(当時の違和感を表明した記事は以下である)。実際、この「スクープ」は安倍支持層をはじめとする「嫌中派」「嫌韓派」から大絶賛されたのだった。

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ところが、この峯村記者の「スクープ」を朝日新聞社は新聞協会賞に申請した。私は「本当にいいのかな」と思ったが、新聞協会がこれを新聞協会賞に選んだことを知り、新聞業界全体が「嫌中感情」や「嫌韓感情」にのみ込まれているのではないかと心配した。

私は、今回の問題で峯村記者が安倍氏と「友人」なのか「顧問」なのかはいざ知らず、インタビュー記事の内容の確認を一任されるほどの親密な関係にあったことを知って、驚くとともに、なるほどな、と納得してしまった。

嫌中感情を刺激したLINEの「スクープ」をはじめ、峯村記者のこれまでの記事は、安倍氏やその周辺の意向を踏まえた内容ではなかったのか。

安倍氏やその周辺の意向が峯村記者を通じて朝日新聞の記事に影響を与えたことはなかったのか。

読者がこのような疑念を抱くのは当然だ。

峯村記者は安倍氏との関係が取材に反映されたことは一切ないと主張しているが、朝日新聞社として責任を持ってそう断言できるのか。

朝日新聞社は、東京地検特捜部を担当する社会部の司法記者として黒川弘務検事長と知り合った社員が黒川氏と賭け麻雀を繰り返していたとして懲戒処分にした時、社会部の司法記者たちと黒川氏ら検察当局との密接な関係や、それがこれまでの検察報道にどのような影響を与えたのかを十分に検証しないまま、社員を懲戒処分にして早々に幕引きをした。「司法記者と検察は癒着し、検察報道を歪めているのではないか」という読者の疑問を黙殺したのである。このような隠蔽体質が新聞社への信頼を失墜させるのだ。

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同じ過ちを繰り返してはならない。朝日新聞社は、安倍氏と峯村記者の関係を徹底調査し、峯村記者の過去の記事が安倍氏らの影響を受けていないかを自ら検証し、読者に説明しなければならない。とくに朝日新聞社が新聞協会賞に申請したLINE報道については、取材・出稿に至る背景を詳しく再検証し、公表すべきである。