政治を斬る!

政治改革を骨抜きにする自民党の極秘シナリオ「改革案中間とりまとめ→岸田退陣→新内閣で解散総選挙→骨抜き法案提出・成立」を許すな!

岸田文雄首相は1月4日の年頭記者会見で、自民党派閥の裏金事件を受け、総裁直属の「政治刷新本部」を党内に設置し、1月中に政治改革案の中間とりまとめを打ち出す考えを表明した。外部有識者の参加も得て、政治資金や派閥のあり方を抜本的に見直し、信頼回復につなげたいとしている。

本部長には岸田首相が就任し、最高顧問に麻生太郎副総裁と菅義偉前首相が就任する。

岸田首相は改革の中身について「パーティーの収支を党として監査するとか、現金から原則振り込みへ移行するべきだとかは考えられる」と説明するにとどまった。

以下の大きな論点にどこまで踏み込めるかが焦点となろう。

①収支報告書への不記載・虚偽記載の不正があった場合、会計責任者(秘書や派閥職員)だけではなく、議員本人も連座する罰則規定の新設

②政治資金パーティーの存廃を含め、20万円超のパーティー券購入の公開基準の大幅引き下げなど抜本改革

③政党から政治家個人への寄付が特別に認められ、使途も報告する義務がない「政策活動費」の廃止や透明化

④企業団体献金の全面廃止

自民党としてはいずれも受け入れ難いテーマであり、抜本改革に突き進むことはあまり期待できない。

一方、野党は解散総選挙に向けて政治改革を最大の争点に据える構えだ。自民党の政治改革案が中途半端に終われば、次の総選挙で大逆風にさらされるリスクが高まる。

🔸法改正の前に国民の信を問う「奇策」

そこで自民党の選挙戦略家たちが考えるのは、まずは中間的な政治改革案を打ち上げ、法改正など最終決定する前に衆院を解散して国民の信を問い、選挙中は「検討します」「前向きに取り組みます」でかわし、選挙が終われば骨抜き法案を成立させておしまいーーというシナリオであろう。

そうなると、以下の日程が見えてくる。

1月下旬 検討項目を羅列した「政治改革案を中間取りまとめ」を公表

2〜3月 衆参予算審議は「中間取りまとめに従って改革を進める」という答弁で野党の追及をかわす

3月下旬 予算成立後に岸田首相が退陣表明

4月上旬 緊急の自民党総裁選を経て新内閣発足。所信表明で政治改革断行を訴える

4月中旬 新内閣が衆院を解散、総選挙へ

4月下旬 自公与党が過半数を維持、新内閣は続行へ

5〜7月 自公与党が骨抜きの政治資金規正法改正案を提出し、与党の賛成多数で成立

岸田首相が粘れば、退陣時期が大型連休明けにずれ込み、衆院解散は6月、総選挙は7月という展開も予想される。いずれにせよ、通常国会で政治資金規正法を改正した後に解散総選挙を行えば、改正内容が不十分と批判を浴びるため、改正前に解散総選挙を断行する「奇策」を用意しているのは間違いないだろう。

このような「逃げ切り」を許してはいけない。麻生氏ら政権中枢が描く「奇策」に備える必要がある。野党はレームダックの岸田首相ではなく、次の内閣との対決を想定し、政治改革論争を展開することが不可欠だ。

🔸岸田、麻生、菅の駆け引き激化

自民党の政治刷新本部でもうひとつ注目されるのは、政敵関係にある麻生氏と菅氏という二人の首相経験者が最高顧問として入ったことだ。

最大派閥の安倍派と反主流派の二階派が裏金事件の強制捜査で大打撃を受ける中、第二派閥・麻生派、第三派閥・茂木派、第四派閥・岸田派の主流3派は相対的に優位となった。麻生氏は派閥の多数派工作によって岸田政権から茂木政権への移行を実現して主流3派体制を維持し、引き続きキングメーカーとして君臨したい意向だ。このため、政治改革が脱派閥論に発展することを極度に警戒している。

一方、無派閥の菅氏は、ポスト岸田に世論調査「次の首相」でトップに返り咲いた石破茂元幹事長を担ぐ考えだ。石破氏も無派閥であり、「脱派閥」の大きなうねりをつくって麻生氏から主導権を奪いたい。

岸田首相が麻生氏から迫られる「3月の訪米と予算成立を花道に退陣」を回避するため、政治刷新本部の本部長に菅氏を起用し、麻生氏を牽制する案もささやかれたが、結局は、岸田首相が自ら本部長となり、麻生氏と菅氏を最高顧問に据える折衷案で決着した。麻生氏を切れなかったといえるだろう。

この結果、派閥改革は中途半端に終わり、主流3派の優位は維持されるのか。麻生氏の思惑とは裏腹に脱派閥を求める世論が高まって主流3派も追い込まれる展開となるのか。

岸田首相は政局が混迷を深めるなかで少しでも政権を延命させる狙いなのかもしれない。

政治刷新本部における岸田首相、麻生副総裁、菅前首相の3者の駆け引きが激化し、そのなかで政治改革の方向が定まってくるだろう。

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