前回は「豪州では、社会保険料は無し。相続税も固定資産税も無し。食料の消費税0%当たり前。年金や社会福祉もしっかりあります」を書きました。
豪州は、低中所得者層で、約40万円も、日本より低い所得税金+保険料、インボイス制度(約1千万円以下の売り上げ事業者も、売り上げの10%の消費税を払う)無しで、消費者だけでなく、命に必要な食品関係や零細企業を守っているという内容でした。
また、所得約200万円以下の労働者は、所得税も社会保険料(豪州は、メディケアという医療費のみ2%)も0%で、取られません。
豪州と比べると日本では、税金や社会保障費が、“低所得者から、より徴収され、十分に持っている人々に多額が再分配されている”ようです。その上、過剰に円が安くなり、日本国内は物価高が進み、高い消費税になり、ますます生活が大変になる人々が、増えているのではないでしょうか。
豪州の税金や政策と比べると、日本の税制、社会保障費のとり方、配り方、使われ方、という仕組み全体が、自ずから衰退を生んでいるようです。
前置きが長くなりました…。本題の“豪州のスーパー政策”には入ります。
トランプ大統領が魅力を感じた豪州の“スーパー退職金制度”
それは米国、トランプ大統領も、絶賛した豪州の「スーパー・アニュエーションSuperannuation(超退職金制度)」という貯蓄積立型+投資型退職金制度です。ここでは「スーパー退職金制度」と呼ぶことにします。
トランプ大統領が、2025年12月に「人々が気に入って話題にしている、オーストラリアの退職金制度がある」「優れた計画」であり「非常にうまくいっている」と称賛するスピーチが話題になりました。
その前、2025年2月に、豪州の若き48歳の財務大臣チャルマーズ(Jim Chalmers)は米国を訪問し、トランプ大統領との関税交渉の手段とし、“スーパー退職金制度”を売り込んだそうです。(こちら参照)
2026年7月始め、トランプ氏はローズ・ガーデンでの昼食会で次のように踏み込みました(Foxニュースの抜粋引用)
「オーストラリアで非常に良い取り組みが行われていることに言及したが、それは本当にうまくいっている」「この制度によって人々は定年退職までに“はるかに良い状態”になる可能性がある」
「すでに政権幹部のベセント財務長官、ルトニック商務長官が、この提案に取り組んでいる」
これは、米国議員たちが社会保障制度の長期的な財政状況を巡る圧力に直面している中で起こった発言だそうです。(こちら参照)
世界的な位置づけでは、オーストラリアのスーパー退職金貯蓄額は、人口規模に対する割合で世界トップレベルだそうです。その合計は、4.5トリリオン(4兆5,000億豪ドル)で、8月20日の為替レート(1豪ドル=約112.90円)で計算すると、約508兆円超です。人口規模費で、世界でもトップレベルだそうです。2040年には、倍以上の1241兆円超になる可能性もあると予測されています。
“スーパー退職金制度”発明のエピソード
これは1980年代の労働党のレジェンド、ホーク首相(Bob Hawke)政権から構想が始まり、1992年、無鉄砲で「豪州経済を終焉に導いている、葬儀屋だ」と経済運営を揶揄されていた、キーティング首相(Paul Keating)が、実現させました。 “奇妙な首相だ”とからかわれたキーティング首相は、非難を物ともせず、ぶれずに、信じるアイディアを実現し、約30年後には、世界に誇る結果を出したことになりました。キーティング元首相は、今でも発言が注目され、彼らは、語り継がれるリーダーとなりました。
“スーパー退職金制度”とは
「多額の退職金を払えば、財政は苦しくなるのでは?」と思うかもしれませんが、この退職金が、“お金を生み→増え→利益を更に生む”というプラスのループとなっています。
払うのは雇用主が、労働者の口座へ直接払うので、政府の支出はありません。
職業に貴賤は無し
これは、古く日本で使われていた言葉ですが、なぜかずっと、覚えている言葉です。今では、聞かなくなってしまったかもしれません…。
豪州のスーパー退職金制度・年金制度・税制を見ると、どんな仕事(無報酬を含め)も尊重され、最低限の生活が、保障しようという雰囲気を感じます。
過剰に利益を得た人々から、より必要な人々へ、富が分配され、分け合い、よりお金が回って、社会も周り豊かになっているようです。
日本では、現役世代と高齢世代の分断。高齢者のホームレスの人々が、いじめられた。道端で亡くなっていた。というニュースにふれます。豪州では、信じられない事です。
日本では、例えば高収入の公務員の人々は、高い年金も、高額の退職金がもらえ、その後も天下りして、高い給料がもらえる人々もいます。鮫島さんは「多くの官僚は、そのために働いている」と解説されています。
一方で、大切な農家など一次産業、自営業や零細企業で働く人々は、高い税金や社会保険料を払いながら、保障されない、老後に不安を抱きながら、働いているのではないでしょうか。
“スーパー退職金制度”の仕組み
AIにきくと、日本では、正社員であれば、「雇用主が、社会保険料(年金や健康・雇用・介護保険など)の半分を負担し、残りの半分を労働者の給与から天引きして一緒に支払っています。平均的な会社負担額は、月給のおよそ15%~16%です。たとえば月給30万円の場合、会社は毎月約4.5万円~4.8万円を負担しています」という説明でした。
ということは、労働者負担も合わせると、給与の約30%(月に約10万)が社会保険料に取られています。豪州では、約2%の医療費のみ労働者払いで、たった6千円です。
日本では、これだけ払っていても、退職金については、退職金が少ない会社、無い会社、派遣・契約労働者は、無い人がほとんどでしょう。
豪州では、社会保険料の代わりに、雇用主は、税金込みの給与の12%を労働者の“スーパー退職金”の個人口座へ振り込みます。しかも、派遣・契約社員も、労働時間や所得額に関係なく全労働者に支払うことが、義務化されています。
その代り、雇用主は、国に労働者の保険料は、一切払わなくてよいのです。例えば、年収300万円(月給約25万円)なら、1年で36万円が、退職金積み立て口座に振り込まれます。これは、一般的に60歳時に、積立額より2~3倍に増えているのです。
60歳で退職するとして、年収300万円で40年間働いたとすると、36万円×40年=1440万円です。しかし、この合計額は、約60歳時で、雪だるま式に約3倍に増え、一般的に4千万円~4千500万円に増えているのです。年収500万円が40年間続けば、合計約2千万円になります。これが60歳時、6千500万~8千500万円ほどになり、場合によったり、より長く働いたりすと、1億円以上に達する可能性もあるようです。
そして、退職金を引き出す時は、非課税です。(こちら参照:豪州政府のMoneySmartのホームページ )
あまりにも“美味しい話”?
あまりにも、“美味しい話”に聞こえるかもしれませんが、スーパー退職金制度は、豪州人の老後生活の支えとなり、働く励みになっている、嘘のような本当の話です。老後生活を話す時、この“スーパー”(スーパーアニュエーションの通称)の話題が、必ずと言ってよいほど出てきます。
なぜ、スーパーは、何倍にも増えているのか?(こちら参照)
積立金は、労働者が選択した民間団体で、管理され、投資されます。この投資が年間約10%前後の利益をうみます。(こちら参照)
もちろん、スーパーの管理団体が、リスクを考えながらも、増える投資を上手く行っているから、雪だるま式に増えるシステムが維持されているのでしょう。
人気があるのは、Industrial Super(業界型スーパー)という非営利の退職金基金管理団体が複数あり、加入者への利益還元を目的としています。そのため、外部株主がいません。そこに口座を持つ顧客全員に、投資利益が分配されるので、高い利益率を生むそうです。(こちら業界型スーパー団体を紹介するホームページ)
スーパーは、健康保険や失業、病気になった時の保障保険も含まれ、もし亡くなってしまった場合、受取人を決めておけば、引き継ぐことができます。
私も少ない額ではありますが、何年もチエックしていなかったスーパーが、約2倍に増えていて、驚きました。1年間で、10%近い増加がありました。
年金は、その人の資産(居住する住宅は除く)と収入により、額は決まりますが、このスーパーによる大型の退職金を受け取った人々は、年金に頼らずに、老後を過ごすことができるでしょう。
その分、年金が必要な人々にお金が配られ、健全な財政にもつながるので、裕福層が「年金がもらえない」という、文句を聞いたことは、ありません。
個人の選択ですが、例えば、5千万円のスーパーがあれば、スーパー口座を維持し利率10%だとすれば、年間500万円収入になります。安全な銀行の定期預金(現在約5%金利)では、250万円の収入が得られます。もし、退職金を使っても、豪州の寛大な年金制度に申し込めます。
ちなみに、個人事業主の方々も、スーパーの積み立て口座預金で、貯金することができます。
それでも豪州の寛大な年金
豪州では約60%の高齢者が、年金または部分年金を受け取っているそうです。 所得税を払ったことがない人(例えば主婦)でも、国籍か永住権保持者なら年金がもらえるようです。
興味のある方へ、年金についても少し詳しく書いておきます。
単身者で一月約27万円(2週間で約1200ドル)、夫婦で一月約40万円(2週間で約1810ドル)です。私にとっては、シンプルな生活を送るには十分です。医療費も介護費もほとんど、負担は無く、様々な援助があります。(こちら参照:豪州政府サービス)
例えば、通常以下の、条件の高齢者(67歳以上)の人々は、年金を受け取れます。低い条件だと思います。また、豪州の40%もの高齢者が、これらの条件で、年金をもらっていないということに、驚きました。
・住宅所有の単身者:資産(住居する住宅は除く)が733,500ドル未満(約8千200万円未満)、または、2週間あたりの収入が約2,627.80ドル未満(2週間で約29万円、月で約58万円未満)
・持ち家の夫婦で資産(住居する住宅は除く)合計$1,102,500ドル未満(約1億1千万円未満)または、2週間当たりの収入が合わせて、$4,016.80(約45万円、月で約90万円以下)の収入であれば、それぞれの額に応じて、年金がもらえます。これだけの資産や収入があっても、年金がまだもらえるのは、豪州年金制度は、高齢者に寛大で国を支えてきた高齢者を大切にしている、という態度を感じます。現役若者世代と高齢者世代の分断を煽る雰囲気も感じません。
(こちら豪州政府ホームページ:参照1いくら年金もらえるの? 参照2資産について 参照3年金テスト)
お金に関するマインドセット
日本では、年金制度が、コロコロ変わる、十分な年金がもらえるのか? と心配する人々が、多いと思います。私もそれが心配で、安定した職業を選んでいました。
豪州のように、派遣や契約社員でも、仕事を変えても、退職金が貯まって増えてもらえるなら、又は、十分な年金があるなら、報われそう、続けて働いてみよう、将来を考えよう、とポジティブなエネルギーが湧いてくるのではないでしょうか。
私は、安心して投資つぎ込むほどお金が無いからか、投資には興味が全然なく、別世界のようでした。豪州では、全ての労働者が、株主で投資家で貢献しその上、利益を得られているので、プラスのイメージも持つようになりました。お金の事や、老後の生活設計も考えるようになりました。
また、保障された生活、お金に対する安心感を政府が与えてくれれば、お金への不安や執着も薄れ、より人々は穏やかに、自分らしく、幸せな社会がつくれるのでは、と思うようになりました。
一石多鳥のスーパー
豪州のスーパーは、一石多鳥です。
🔶労働者や雇用主へ
・雇用者からの支払いが所得の12%で、退職金・怪我病気時の保険・生命保険が含まれ、日本より少ない負担率です。
・労働者に、何倍にも増加して、払われます。
・全労働者対象で、透明で、励みになるシステムです。
日本では、給与の約30%(雇用主と労働で約15%ずつ)が社会保険費として国に支払いますが、どのように使われるのか、不透明で、相当の見返りはあるのか不安を感じます。また、労働時間・賃金の条件があり、所得の低い労働者に、社会保険が適用されません。例えば、一般的に週の所定労働時間が20時間以上、月額賃金が8.8万円以上などの条件があります。
日本の、この多額の保険料の支払いのために、事業主は、短時間労働で給与の低い、派遣や契約社員を多く雇いたいのでしょう。
🔶オーストラリア(自国)への投資と成長(これはAIにききました)
・インフラ整備:地方の道路、空港、病院、グリーンエネルギープロジェクトの建設に、スーパーの資金から数十億ドルが、充てられています。
・事業資金:小規模なスタートアップ企業、成長企業、およびASX(オーストラリア証券取引所)に上場している大企業に重要な資金を提供します。
・雇用創出:スーパーの資金から投資に支えられた国内プロジェクトや事業拡大は、オーストラリアの雇用創出と維持に貢献します。
・金融の安定性:長期的な貯蓄の流れが国内市場を安定させ、世界的な経済ショックから国を守る緩衝材となります。
🔶政府予算の負担軽減
・年金負担の軽減:自己資金で生活する退職者が増えることで、政府の年金に完全に依存している人が減り、将来の政府予算の負担が軽減されます。
・国民貯蓄の増加:雇用主による義務的な拠出金制度により、オーストラリアは貯蓄率の高い国へと変貌し、経済成長の資金調達における外貨への依存度が低下します。(以上がAIからの説明です)
トランプ大統領が魅力を感じたのは、大規模な資産となる“スーパー退職金”をもとに、国内経済の活性化・国内のインフラ整備・政府予算の助成となるからでしょう。
スーパー親米の日本政府も、トランプ政権と足並みを合わせて、税制や社会保障制度を抜本から大改革し、“スーパー退職金制度”に取り組んでは、どうでしょうか。日本も、一時的な小さな減税や手当では、変化は望めないでしょう。実現できれば、後世に日本を改革した首相として、名を残すことができる、偉業になるかもしれません。
他にも大きな違いはありますが、長くなるので、今回はこの辺で“スーパー退職金制度”中心で、終わります。
前回のコメントで、「豪州は資源があるからだ」と言う意見がありましたが、日本には最先端の自動車関係・テクノロジー・食品等世界で、スパー人気のあるが産業が資源としてが多くあります。その利益を国益に、生かし切れていない、政策が問題だと思います。
冒頭の写真は、オーストラリアの50ドル紙幣に描かれているアボリジニの男性はデビッド・ウナイポンさん(David Unaipon 1872 ~1967)です。オーストラリアの「レオナルド・ダ・ヴィンチ」と呼ばれていました。作家、発明家、説教者であり、先住民の権利擁護の力強い提唱者でした。
彼は英語で作品を出版した最初のアボリジニ作家でした。多くのアボリジニの伝統的な物語や伝説を書き留めました。優れた発明家で、羊の毛刈り用の新しい機械式ハンドピースを発明し、偏光ツールや飛行機などのアイデアもだしました。地域のリーダーとして、先住民文化について語るために、広く旅をし、先住民が公平かつ敬意をもって扱われるよう懸命に闘った人でした。

今滝 美紀(Miki Imataki) オーストラリア在住。 シドニー大学教育学修士、シドニー工科大学外国語教授過程終了。中学校保健体育教員、小学校教員、日本語教師等を経て早期退職。ジェネレーションX. 誰もがもっと楽しく生きやすい社会になるはず。オーストラリアから政治やあれこれを雑多にお届けします。写真は、ホームステイ先のグレート オーストラリアン湾の沖合で釣りをした思い出です。