※この連載はSAMEJIMA TIMESの筆者同盟に参加するハンドルネーム「憲法9条変えさせないよ」さんが執筆しています。
<目次>
0.野党による政権交代の可能について考えてみた過去の議論の紹介
1.中野晃一さんが唱える「野党共闘の必要性」
2.市民連合が進める「野党共闘の今」
3.木俣正剛さんが唱える「政権奪取のための秘策」
4.鮫島浩さんMCによる「橋本徹×泉房穂大激論」
5.泉房穂さんは「衆議院で多数を確保するための戦略を」と語る
6.世論はどう動いているのか?
7.憲法9条変えさせないよの私的提言①「天下三分の計」
8.憲法9条変えさせないよの私的提言②「泉房穂プロデュース木村英子首班」
9.トピックス①:参政党の現状
10.トピックス②:れいわ新選組の現状
0.野党による政権交代の可能について考えてみた過去の議論の紹介
私が連載を担当している「立憲野党私設応援団」において、過去に6回「政権交代の可能性について考えてみる」というタイトルの論考を掲載しました。
今日はその7回目の議論です。
前の議論を参照したい方のために、まずは、これまでの6回の記事のリンク先を載せて、議論を始めたいと思います。
1.中野晃一さんが唱える「野党共闘の必要性」
「2021年の衆議院選挙以降、えらいバッシングに遭って、まるで『オワコン』みたいに言われている『野党共闘』について」というテーマを取り上げて、上智大学教授の中野晃一さんは、「野党共闘が避けられない理由」について分かりやすく説明する動画をアップしています。
中野晃一さんは、この動画の中で「『立憲共産党』なんて言われて怯んでいる暇があったら、『黙れ、統一教会電通神道政治連盟創価学会利権世襲政党』と言い返せばいい」などと過激なことを言っていて、非常に面白いのですが、冷静に指摘されていたのは、日本の戦後の衆議院と参議院の選挙結果から見た歴史的な観点での「野党共闘の必要性」です。
55年体制ができた後の衆議院の選挙結果の歴史を見てみると、自民党が単独過半数を取れなかったのは、1983年(中曽根内閣→新自由クラブとの連立政権を組んで対応)、1993年~1997年(宮沢内閣で選挙に敗れ下野→非自民連立政権→自社さ連立政権)、2000年(森内閣→自公保連立政権を維持して対応)、2009年~2012年(麻生内閣で選挙に敗れ下野→民主党政権)という限られた時期だけで、それ以外はずっと自民党は選挙で勝ち続けて単独過半数を維持し続けてきました。
これに対して、参議院では、消費税を争点に土井たか子さん率いる社会党が竹下首相率いる自民党を破って「山が動いた」と言われた1989年以降、自民党が参議院で単独過半数を確保できない状況が常態化し、自民党が参議院の単独過半数を回復したのは、あの選挙に強かった安倍政権の中でもほんの一時期の2016年~2019年のわずか3年に過ぎません。
2009年の衆院選で圧勝して政権を獲得した民主党も、参議院では単独過半数を確保することができず、社民党・国民新党と連立政権を組んで政権運営を行っていました。
このような事実をふまえれば、1989年以降、「参議院である一つの政党が単独で過半数を確保する」ということは極めて困難になっており、現実的に、少なくとも参議院の1人区では「野党共闘」を行う必要がある、というのが中野晃一教授の主張です。
そのことをベースにしたうえで、参議院の1人区と同じで1人しか当選できない衆議院の小選挙区においても「野党共闘」を行うべきだ、という論理展開になっていきます。
2.市民連合が進める「野党共闘の今」
それでは、中野晃一教授も参加している市民連合が進める「野党共闘」の現状は、一体どうなっているのでしょうか。
市民連合 野党共闘の実現に向けて 立憲野党に要請を行いました(2023.8.10)「立憲野党と市民の共闘で、憲法9条と13条の政治の実現を」
SAMEJIMA TIMES 立憲・枝野氏の埼玉5区に「刺客」を立てて野党共闘を迫る共産党の戦略~政治責任を負わない「市民連合」頼みの野党共闘から脱却を
SAMEJIMA TIMESのコメント欄では、TOMOさんが次のように述べています。
TOMO
野党共闘で最も恩恵を受けるのは野党第一党の立憲民主党です。だからこそ立憲民主党には率先して譲歩の意を示し、共闘を強力なものにする責任がありました。しかし実態は美味しいとこ取りと言わざるをえないでしょう。結果、立憲民主党は議席を減らすことに。中途半端な共闘でも接戦区は増えたため、がっちりと組んでいれば十分に勝てたはずです。野党第一党は「いち参加者」ではいけません。「責任者」でなければならないのです。(中略)
立憲民主党がどのようなを示すのか、それによって立憲民主党の運命は決まります。今までの傲慢さや迷走を反省し、真の共闘に向けて動くのであればまだ救いはあります。しかし再び一方的な譲歩を迫ってくるようでは立憲民主党は終わりです。維新に敗れ、まるで引き裂かれるかのように解党することとなるでしょう。
3.木俣正剛さんが唱える「政権奪取のための秘策」
市民連合が主導する「野党共闘」のラインとは別に、野党による政権奪取を実現するための方法論を模索する議論があります。
元週刊文春・月刊文藝春秋編集長の木俣正剛さんが書かれた「来る解散総選挙で、野党が政権に返り咲くための『二つの方法』」という論文を皆様に紹介します。
ダイヤモンド・オンライン 木俣正剛 元週刊文春・月刊文藝春秋編集長 来る解散総選挙で、野党が政権に返り咲くための「二つの方法」
ここでは、大きく分けて2つの方法論が示されています。
A案:「世襲制反対」を旗印にしたうえで「国会レッドカード制度」と「国民提案制度」を訴えて「本格的な政権交代」を目指す
B案:「自民党を政権から叩き出し、1年で日本の大掃除」をすることを公約にし、「今度の総選挙では1年だけ、野党に政権を任せてください。1年で日本の大掃除をします。そして、1年で再び解散して信を問います」と訴えて「暫定的な政権交代」を目指す
A案で示されている「世襲制反対」とは、三親等までの議員が地盤としていた選挙区から立候補できないというルールの導入を図るもので、諸外国の中には、すでにこうしたルールを導入している国もあります。
「国会レッドカード制度」とは、各野党が問題のある自民党議員にイエローカードを付けて書き出し、多くの野党がイエローカードを突きつけることが二度、三度と重なった大臣に対して不信任案を突き付ける、という木俣さんオリジナルのアイデアで、「問題が起きたら、ほとぼりが冷めるまで知らんぷりしてやりすごす」という「逃げ得」を許さずに最後まで問題追及の手を緩めないための考え方となっています。
そして、「国民提案制度」とは、スイスや台湾などで導入されているもので、台湾ではデジタル担当大臣オードリー・タンの手により「公共政策オンライン参加プラットフォームJOIN」が構築され、市民一人でも政府に具体的な政策の提案ができて、その提案に5,000人以上の賛同者がいれば、政府の関連部門が市民に対して書面で回答する義務を負うことになっています。
もし、れいわ新選組の山本太郎さんが「野党陣営の共通の首班候補」になるのであれば、A案のようなやり方で「本格的な政権交代」を目指してみるのも面白いのではないかと思います。
一方、B案のようなやり方で「暫定的な政権交代」を目指すなら、2024年の立憲民主党代表選で例えば岡田克也さんか小沢一郎さんあたりに「私が立憲民主党の代表になった暁には、次期衆院選で政権交代を目指します。政権交代が果たせなかった時には、党代表を辞任します。政権交代を果たした時には、1年だけ総理大臣をやらせてもらって、日本の大掃除をしたうえで、総理大臣と党代表を辞任します。そして、新しい党代表の下で、本格政権の樹立を目指して解散総選挙に臨んでもらいたい。そこまでやって、私は政界から引退します。」みたいな感じで切々と訴えてもらえば、かなり盛り上がるのではないかと期待します。
4.鮫島浩さんMCによる「橋本徹×泉房穂大激論」
「どうすれば自公政権を倒せるのか」という命題について、鮫島さんがMCを務めて、元大阪市長の橋下徹さんと前明石市長の泉房穂さんが討論する、トークショーが開催されました。
SAMEJIMA TIMES 7・15政局動く『橋本徹×泉房穂 新党旗揚げか シナリオなき生討論!』私がMCを務める忖度無しトークショーを東京・池袋で開催
このトークショーでは様々な内容が語られましたが、一番大きな提案は、「立憲民主党と日本維新の会がガチンコで準決勝の予備選をやって、負けた方は出馬を見送り、勝った方が自民党と衆議院の小選挙区で決勝戦を戦う」というアイデアだったと思います。
小沢一郎さんと橋下徹さんの対談でも、同様の内容が議論され、大いに盛り上がったようです。
SAMEJIMA TIMES 小沢一郎氏と橋下徹氏が意気投合した「立憲・維新の予備選」の具体像~「選挙協力」ではなく「激しく競い合う準決勝」という発想の転換
5.泉房穂さんは「衆議院で多数を確保するための戦略を」と語る
その後、泉房穂さんは、「X」(旧twitter)で次のように投稿しています。
7月23日投開票の三田市長選挙は、次のような結果でした。
三田市長選挙(2023.7.23)
当選:田村克也(無所属)元銀行員 14,774票
落選:森哲男(無所属)現職三田市長 13,761票(自民、立憲、公明、国民推薦)
落選:長谷川美樹(無所属)元共産市議 6,541票(共産推薦)
落選:多宮健二(無所属)元維新市議 2,439票
泉房穂さんが新人の田村克也さんを全面支援した三田市長選挙について、「SAMEJIMA TIMES」と「いずみチャンネル」と「一月万冊」では次のように解説しています。
SAMEJIMA TIMES 自公立国が相乗り・神戸市長の支援も受けた現職を、泉房穂・前明石市長の支援を受けた無名の新人が倒した兵庫県三田市長選の衝撃
自民公明立憲維新が完全敗北!元明石市長の底力。与野党が警戒する異常事態とは?元明石市長・泉房穂氏出演!安冨歩東大教授。一月万冊
衝撃!選挙に弱い自民党。公明も立憲も維新も実は選挙に弱い!元明石市長・泉房穂氏が与野党相乗り候補を三田市長選挙で打ち破った実績と共に解説。!安冨歩東大教授。一月万冊
泉房穂さんの基本的な選挙の捉え方は、「こちらは70人の一般庶民の有権者に支持されて、そのうち4割が投票に行って28票、あちらは30人の組織で、そのうち9割が投票に行って27票、結果として『28対27』の大接戦になる」というものです。
従って、「街の空気が『7割方こちら』ではなく『8割方こちら』になるか、一般の有権者の投票率が5割になるかすれば、(組織候補を負かして)こちらが圧勝する」ということになるのだそうです。
この「泉理論」のおかげかどうかは分かりませんが、三田市長選に続き、岩手県知事選や立川市長選でも、泉房穂さんが応援する候補が自民党系の候補を破り、今後に向けてますます期待が高まっています。
6.世論はどう動いているのか?
ここで、現状の世論調査の動向を見てみましょう。
世論調査の動向を見る限り、自民党や立憲民主党への投票を考える有権者が減少し、日本維新の会やれいわ新選組への投票を考える有権者が増加してきているようです。
このような状況をふまえたうえで、私独自の提言をしてみたいと思います。
7.憲法9条変えさせないよの私的提言①「天下三分の計」
全く私の個人的なものの見方ですが、橋下徹さん、泉房穂さん、小沢一郎さんなどがさかんに言っておられる「予備選」は、あまり有効ではなく、やらない方がいいと思っています。
なぜかというと、確かに「候補者」は一本化できるかもしれませんが、「有権者の考え」まで一本化することはできないからです。
例えば、自民党支持者40人、立憲民主党支持者32人、日本維新の会支持者28人という100人の母集団があって、「予備選」で立憲民主党の候補が勝って、自民党の候補と「決勝戦」を争ったとしましょう。「決勝戦」で日本維新の会支持者のうち12人が自民党候補に投票し、16人が立憲民主党候補に投票すれば、結果として自民党の候補が勝利します。(右派的な考えを持つ日本維新の会支持者は、左寄りの立憲民主党を忌避して自民党の候補に投票するため、こうなってしまいます。)
同じように、自民党支持者40人、立憲民主党支持者28人、日本維新の会支持者32人という100人の母集団があって、「予備選」で日本維新の会の候補が勝って、自民党の候補と「決勝戦」を争ったとしましょう。「決勝戦」で立憲民主党支持者のうち12人が自民党候補に投票し、16人が日本維新の会候補に投票すれば、結果として自民党の候補が勝利します。(リベラルな考えを持つ立憲民主党支持者は、新自由主義的な日本維新の会を忌避して自民党の候補に投票するため、こうなってしまいます。)
ここ数年間の過去の国政選挙で、「野党候補の一本化」が実現した選挙は一定程度ありましたが、私の印象では、「右派・中道(自公系)vs左派・リベラル(民共系)」で一騎打ちをやると、およそ「60対40」の割合で票が分かれて、結果として「右派・中道(自公系)」が勝つ例が多かったように思います。
私はむしろ、「自民・公明vs立憲・共産・れいわ・社民vs維新」の三つ巴の構図を作る方が、望ましい選挙結果を期待できる可能性が高いのではないかと考えます。
具体的に、毎日新聞の世論調査の数字を基にしたシミュレーションを考えてみましょう。
自民21%+公明3%=24%
立憲10%+共産5%+れいわ8%+社民1%=24%
維新21%
実際には、これに「態度未決定」の人々(主に無党派層)の投票行動(投票に行くか行かないか、投票に行く場合にどの候補に投票するか)が大きく結果を左右することになるわけですが、こうした三つ巴の構図であれば、「立憲・共産・れいわ・社民」の4党による「野党共闘」を行うことで、「自民・公明」や「維新」に小選挙区で勝てる可能性が出てくるのではないかと思います。
8.憲法9条変えさせないよの私的提言②「泉房穂プロデュース木村英子首班」
それでは、実際に「立憲・共産・れいわ・社民」の4党で「野党共闘」ができるのか、という問題ですが、SAMEJIMA TIMESのコメント欄で、TOMOさんは「野党第一党(筆者注:立憲民主党)は『いち参加者』ではいけません。『責任者』でなければならないのです。」と述べておられます。
確かに、筋論としては、TOMOさんが指摘されている通りだとは思うのですが、現実的には、「立憲民主党が『責任者』の野党共闘」の形を実現することは非常に難しいのではないかと思います。
なぜかといえば、労働組合の「連合」が「共産党との共闘」を嫌がるからです。
そのため、立憲民主党の立場からすれば、「『市民連合』の方々の呼びかけに応じて他の野党と協力して選挙を進めていこうと思ったら、たまたまその会合に共産党の人たちも来ていました」的なノリで、「共産党と直接ガッチリ握手をしない形で、『第三者』を介する形で間接的につながる」みたいなことをするのが、(彼らの立場での)「精一杯の譲歩」(傍目で見ると、ほとんど何も譲歩していないように見えますが)になってしまいます。
かといって、前回同様に「市民連合」を中心とした「野党共闘」をしてしまっては、「立憲民主党がほぼ一方的に美味しいとこ取り」をすることになり、結果として全体が盛り上がらず、選挙に負けることになることは必定です。
それではどうすればよいのかといえば、「選挙全体をプロデュースすることができる泉房穂さんが立憲・共産・れいわ・社民に協力を呼びかけて、4党がそれに応じる」という形をとり、前明石市長の泉房穂さんが全体の「責任者」になって、新たな「野党共闘」を進めていけばよいのではないかと思います。
すなわち、「誰一人見捨てない政治」という基本理念と「明石の子育て支援を全国に」という基本政策の実現を目指す新たな「野党共闘」を、泉房穂さんが呼びかけるのです。
民進党の末期に前原誠司さんが東京都知事の小池百合子さんに全面的にすがったように、立憲民主党もこのままジリジリと支持率が落ちてくれば、「このままでは選挙に勝てない」という危機感が高まって、最終的に「前明石市長の泉房穂さんに全面的にすがる」という展開が生じる可能性は十分あると思います。
あとは「野党共闘」の首班候補を誰にするのかという話ですが、立憲民主党の泉健太さんでもなく、れいわ新選組の山本太郎さんでもなく、参議院議員の木村英子さんを首班候補にするのがよいのではないかと私は考えています。
泉房穂さんの弟さんが障害を持って生まれてこられたという経緯もあり、泉房穂さんと木村英子さんの間には、一定の親近感があるようです。
SAMEJIMA TIMESの読者の方の多くは、「なぜ山本太郎を首班候補にしないんだ」とお怒りかもしれませんが、今はまだ時期尚早なのではないかと私は考えます。
「山本太郎総理」では、立憲民主党の議員のうち、かなり多くの議員が山本太郎さんへの「嫉妬」を感じてしまい、うまくまとまることができないのではないかと懸念します。
また、自民党の側が首班候補として「小渕優子」というカードを切ってきた時に、「女性総理に期待する」という有権者が一定の割合で出てくることを考慮に入れると、それをあらかじめ予測して、こちら側も女性の総理候補で臨む方がよいのではないかと思います。
木村英子さんを首班候補にする場合には、「誰一人見捨てない政治」というスローガンが、単なるお題目ではなく、実態を伴った目標であり理念であるということが目に見えて分かる形になります。
この「政権構想」に関しては、また時期を見て深掘りして考えていきたいと思います。
9.トピックス①:参政党の現状
参政党は、20代・30代の女性5名を「東京ファイブ」と名付けて、東京都内の小選挙区に次期衆院選公認候補予定者として配置することを決めました。
一方で、松田学代表が辞任し、参議院議員の神谷宗幣さんが新しい代表に就任するという動きもありました。
10.トピックス②:れいわ新選組の現状
れいわ新選組は、8月29日・30日と続けて、次期衆院選公認候補予定者を発表しました。
これに伴い、9月1日の時点で、れいわ新選組の次期衆院選公認候補予定者は全部で8名にまで増えています。
れいわ新選組次期衆院選候補予定者(2023年9月1日現在)
東京22区:櫛渕万里
千葉11区:多ケ谷亮
愛知15区:辻恵
京都1区:安持成美
大阪1区:八幡愛
大阪5区:大石晃子
福岡3区:奥田芙美代
沖縄4区:山川仁
憲法9条変えさせないよ
プロ野球好きのただのオジサンが、冗談で「巨人ファーストの会」の話を「SAMEJIMA TIMES」にコメント投稿したことがきっかけで、ひょんなことから「筆者同盟」に加わることに。「憲法9条を次世代に」という一民間人の視点で、立憲野党とそれを支持するなかまたちに、叱咤激励と斬新な提案を届けます。