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立憲野党私設応援団(56)政権交代の可能性について考えてみる(その10)〜憲法9条変えさせないよ

※この連載はSAMEJIMA TIMESの筆者同盟に参加するハンドルネーム「憲法9条変えさせないよ」さんが執筆しています。


<目次>

0.野党による政権交代の可能性について考えてみた過去の議論の紹介

1.立憲民主党「ミッション型内閣」に期待集まらず

2.日本共産党「国民連合政府」は行き詰まる

3.れいわ新選組「大同団結は、今は一切考えてない」

4.泉房穂「救民内閣」が今ある唯一の希望

5.トピックス:雨宮処凛「死なないノウハウ」


0.野党による政権交代の可能性について考えてみた過去の議論の紹介

私が連載を担当している「立憲野党私設応援団」において、過去に9回「政権交代の可能性について考えてみる」というタイトルの論考を掲載しました。

今回はその10回目の議論です。

前回までの議論を参照したい方のために、まずは、これまでの9回の記事のリンク先を載せて、議論を始めたいと思います。

「政権交代の可能性について考えてみる(その1)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その2)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その3)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その4)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その5)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その6)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その7)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その8)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その9)」

1.立憲民主党「ミッション型内閣」に期待集まらず

立憲民主党は2月4日に党大会を開き、次期衆院選で国会内第一党を獲り、立憲民主党主導による「ミッション型内閣」を樹立して政権交代を実現することを目標として定めました。

「5年後」だったはずの政権交代目標が「次期衆院選」となった点は、野党支持者の立場からすると大歓迎の話です。

記者会見の動画はこちらです。

THE PAGE 立憲民主・泉健太代表が外国特派員協会で会見(2024年2月6日)

この記者会見の動画を見て私がビックリしたのは、泉健太さんが会見の冒頭でこのように話を切り出したことです。

「みなさん、どうも、おはようございます。日本の新しい政権の総理大臣、泉健太と申します。どうぞよろしくお願いします。」

もし泉健太さんの発言をそのまま英語に訳して配信した場合には「日本で政権交代が起きて泉健太さんが日本の新しい首相になった」と勘違いされかねない内容ですが、英訳では「I will be the prime minister of Japan’s new government.」(私は新しい日本の政府の総理大臣になるつもりです。)と意訳されていましたので、正しい内容で海外に配信されているものと思います。

そのうえで、私がこの挨拶を聞いて第一感、思ったことは、「あぁ、これで次の衆院選で政権交代が起きる可能性は、限りなくゼロに近づいたなぁ」ということでした。

今回の立憲民主党の政権構想は、「子育て支援」と「教育無償化」に特化した「ミッション型内閣」の樹立を目指す構想で、「環境・エネルギー」、「医療・ライフ」、「デジタル」、「ローカル」の4分野を有望な成長分野として位置づける経済成長のビジョンを示すなど、一定程度評価できる内容になっていることは確かです。

もし、立憲民主党に国民的な人気があるか、あるいは、立憲民主党に人気がなかったとしても泉健太さん個人に国民的な人気があるのであれば、この政権構想で政権が取れるかもしれません。

しかし、現実には立憲民主党にも泉健太さんにも国民的な人気はなく、次期衆院選で「泉健太内閣」が誕生しそうな雰囲気は全く漂っていません。

私が以前書いた小説で「泉健太内閣誕生す」という話をしたことがありましたが、これは「自民党と立憲民主党が大連立を行う」というシナリオの話であり、「泉健太首班で野党が自民党から政権を奪う」という話ではありません。

泉健太さんがなぜ突然このように自信満々になったのか、私にはよく理解できないのですが、大阪万博の行き詰まりによって日本維新の会が失速したことで、「野党第一党の座から転落する」という危機が去っていったことが、この自信につながっているのではないかと思います。

また、党大会直前の2月4日に行われた京都市長選と前橋市長選で立憲民主党としては「2勝」したことも、泉健太さんの「自信」を裏付けする要因になっているのかもしれません。

2021年の衆院選で当時の立憲民主党代表の枝野幸男さんが野党共通の首班候補になったのは、①2017年の衆院選でブームを起こした経験がある、②以前の民主党政権の時代に官房長官を務めた経験がある、という2つの強みを持った「野党第一党の党首」だったことで野党支持者の多くの人が(渋々ではあっても)納得感を持ったということであって、泉健太さんの場合には、そうした「経験」がなく単に「野党第一党の党首」であるということだけで野党共通の首班候補になろうとしています。

立憲民主党の支持者の方は「野党第一党の党首が野党共通の首班候補になるべきだ」と主張するのでしょうが、そうした「べき論」だけでは無党派層に訴求することはできないでしょう。

1993年に政権交代が起きた際には、当時の野党第一党(政権交代後は与党第一党)の党首である日本社会党の山花貞夫委員長が首班指名にこだわらず、日本新党の細川護熙さんに首班の座を譲ったことで「非自民連立政権」が誕生しました。

今回はむしろその状況に近いと思うのですが、民主党が国民の圧倒的な支持を得た2009年の政権交代の時のような振舞いを泉健太さんがしようとしていることで、政権交代の実現可能性が、限りなくゼロに近づいている気がします。

また、立憲民主党代表の泉健太さんが自らのことを「日本の新しい政権の総理大臣」と言い出したのは、れいわ新選組代表の山本太郎さんに対する対抗意識もかなりあるのではないかと私は感じています。

立憲民主党代表の泉健太さんとれいわ新選組代表の山本太郎さんはいずれも1974年生まれで、二人とも同じ学年です。

山本太郎さんが2013年の参院選で初当選して以来10年以上の政治歴なのに対して、泉健太さんは2003年の衆院選で初当選して以来20年以上の政治歴を有しており、「民主党系の政党(民主党→民進党→希望の党→国民民主党→立憲民主党)一筋で信念を持って20年以上政治活動をやってきた自分の方が次の総理大臣にふさわしい」というふうに泉健太さんは思っているのかもしれません。

ただ、この「信念が無かったらこの野党で20年以上やらない」という発言自体が、「政権交代への雰囲気が盛り上がらない根本的な原因」を物語っているのではないかと私は考えます。

2003年に衆院選で初当選して以来の泉健太さんの20年以上の政治歴のうち、2009年9月から2012年12月までの3年3ヵ月は、民主党で「与党」を経験しています。

「野党で20年以上」という言い方は、事実に反する内容の発言になります。

本人の中ですっかり忘れてしまっていたのか、あるいは忘れてしまいたいと思ってそのような言い方になったのかは分かりませんが、多くの国民が「失敗だった」と考えている3年3ヵ月の民主党政権について、一体どこが悪かったのか、間違っていたのか、そのことに対する反省をきちんと行ったうえでなければ、「次の新しい政権を私たちに担わせてください」という話にはならないのではないでしょうか。

2.日本共産党「国民連合政府」は行き詰まる

2015年の安保法制に端を発した日本共産党の「国民連合政府」の構想も、現状は全く行き詰っています。

東京新聞の記事から、インタビューのやり取りを一部抜粋します。

東京新聞:2015年に共産党が安保法制廃止を目指す「国民連合政府」を打ち出し、野党共闘のきっかけを作ったが、現在は行き詰まっている。

中北浩爾:当時、「市民と野党の共闘」を掲げて「柔軟路線」を取り、多くの人々が期待した。しかし、共産主義に基づいて革命を起こすという方針と矛盾しない範囲での柔軟化にとどまり、日米安保条約の廃棄や民主集中制といったコアを変えなかった。党大会で22年までに野党連合政権を樹立するという目標を立て、実現しなかったのに、その責任を誰も取らなかった。私もそれなりに期待したが、全くの幻想だった。

3.れいわ新選組「大同団結は、今は一切考えてない」

こうした中で、れいわ新選組代表の山本太郎さんは、1月28日に長崎県佐世保市で行われた「おしゃべり会」で、参加者の質問に次のように答えています。

【LIVE】山本太郎とおしゃべり会2024年1月28日(長崎県・佐世保市)「大同団結して政権を取ってほしい」質問・頭出し済

質問者:大同団結して、嫌な人もいるだろうけども、大同団結してから、政権を早く取ってください。

山本太郎:私たちは、次の選挙は、大同団結だとかっていうことは、今は一切考えてないです。

質問者が「国民のことを思っているのは、山本太郎さんと泉房穂さんだと思ってるんですよ。」と切り出したうえで「大同団結して、嫌な人もいるだろうけども、大同団結してから、政権を早く取ってください。」と質問しているのですが、それに対する答えとして、山本太郎さんは「私たちは、次の選挙は、大同団結だとかっていうことは、今は一切考えてないです。」と言い切ってしまっています。

このやり取りを聞いた私の感想は、「次期衆院選での政権交代の実現は、かなり厳しいな」というものでした。

時系列的には、れいわ新選組の山本太郎さんのこの発言があったうえで、その後に立憲民主党の泉健太さんの「みなさん、どうも、おはようございます。日本の新しい政権の総理大臣、泉健太と申します。どうぞよろしくお願いします。」という記者会見を聞いたので、「あぁ、これで次の衆院選で政権交代が起きる可能性は、限りなくゼロに近づいたなぁ」という感想を持つに至ったのでした。

4.泉房穂「救民内閣」が今ある唯一の希望

現状で「次期衆院選」というスパンで考えた場合には、政権交代を実現できる可能性がある唯一の希望は、前明石市長の泉房穂さんの「救民内閣」構想ということになります。

将来的なビジョン云々の話は別にして、「今年もしくは来年」という「次期衆院選」のことに絞って考えた場合には、「政権交代」への期待は泉房穂さんの手腕に全てを託すしかないと思います。

5.トピックス:雨宮処凛「死なないノウハウ」

雨宮処凛さんが2月15日に光文社新書から「死なないノウハウ」という新刊を出しました。

自民党の二階俊博さんか、その秘書の方がこの記事を読んでいたら、ぜひ5,000冊まとめて爆買いしてくださいね!(笑)


憲法9条変えさせないよ

プロ野球好きのただのオジサンが、冗談で「巨人ファーストの会」の話を「SAMEJIMA TIMES」にコメント投稿したことがきっかけで、ひょんなことから「筆者同盟」に加わることに。「憲法9条を次世代に」という一民間人の視点で、立憲野党とそれを支持するなかまたちに、叱咤激励と斬新な提案を届けます。

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