政治を斬る!

新聞記者やめます。あと3日!【サメタイは「無料公開」を続行します!(寄付のお願い)】

新聞社に退職届を出して、たったひとりで立ち上げた「SAMEJIMA TIMES(サメタイ)」。2月末から連載「新聞記者やめます」を毎日一本執筆することに全力をあげてきました。

この3か月、多くの方々からさまざまなアドバイスをいただきました。記事を有料化したほうがいい、オンラインサロンで課金できる、テレビなどメディア出演を増やさないとダメだ…この場をお借りして御礼もうしあげます。

この連載も「あと3回」となりました。退社日が近づくにつれ、サメタイの今後の運営について私が考えたのは「なぜ新聞社を辞めて小さなメディアを立ち上げることにしたのか」という原点でした。

新聞発行部数は減り続け、新聞社のビジネスモデルは行き詰まり、新聞記者の年収はさらに落ちていくでしょう。それでも「正社員であることが唯一の社会保障」であるこの国で安定して暮らしていくには「社員」にとどまるほうが賢明だと思います。実際に大半の同僚はそう判断し、現在の新聞にさまざまな不満を抱えつつも「残留」したのでした。

でも、私は新聞社を飛び出すことにした。自らが所属する新聞社の未来に希望を持てなくなったからです。「安定収入」を失うこと以上に、それは私には耐えられないことでした。

2012年末に安倍政権が発足した後、日本の報道の自由度ランキングは急落しました。メディア支配を強める安倍一強の長期政権に対し、新聞の批判精神は大きく失われ、主張・解説・分析・批判を押し殺す「両論併記」の記事が溢れました。新聞記者が記者会見で厳しく追及する姿も影を潜めました。弱い者の立場から権力を監視・追及して政治に緊張感をつくるジャーナリズムの責務を放棄し、「客観中立」を装って「自己保身」や「責任回避」を優先する「傍観的報道」が蔓延したのです。

新聞社は政治家や官僚らエスタブリッシュメント(既得権益層)の一員となり、民衆とかけ離れてしまったーー。大手新聞社が東京五輪のスポンサーに名を連ねる現状は、新聞ジャーナリズムの荒廃を象徴しています。

私は新聞社内で声をあげてきたつもりです。しかし、新聞社は自浄作用を失い、管理統制を強めました。新聞記者が権力者に対して声をあげる以前の問題として、会社のなかで声をあげる自由が脅かされているのです。

新聞社にとどまって内側から改革を進めることは限界だと思いました。50歳を目前に残りの人生のエネルギーを社内改革に注ぐことに気概を持てなくなりました。むしろ新聞社を飛び出し、内側からの改革に費やしてきたエネルギーを「小さなメディア」をつくって読者と直接触れ合うことに振り向けたほうが、世の中に貢献できるのではないか。独立して「新しいニュースのかたち」をつくってみせることに全力を注いだほうが、日本のジャーナリズムの再建に寄与できるのではないかと考えたのです。

私は貧しい母子家庭で育ち、高校時代から奨学金をいただいて大学に進学しました。「社会の支え」がなければ新聞記者になることはなかったでしょう。日本社会は衰退期に入り、「社会の支え」は崩れ始め、貧富の格差は拡大するばかりです。政治もメディアも既得権益化し、「弱き者」から離れてしまいました。

新聞記者として、政治記者として、貴重な体験を重ねることができました。「社会の支え」によって政治史やジャーナリズム史に残る場面に身を置く「特権」を享受することができたのです。今こそ「自分を支えてくれた社会」へ「自分が受けた恩恵」を還元する責任があります。

以上が、新聞社を飛び出し「小さなメディア」を立ち上げる動機です。目指すべきは、新しいメディアのビジネスモデルを確立することではありません。ひとりでも多くの方に「新しいニュースのかたち」を伝えることにあります。やはり記事の「無料公開」にこだわりつづけたいと思いに至りました。

記者人生27年は政治取材と調査報道に明け暮れてきました。ビジネスはまったくのオンチです。起業に必要なITなどのスキルも資金力もありません。あるのは「新しいニュースのかたち」をつくりたいという思いと、ひとりでも「やってみせる」という独立心だけです。

そこへ「筆者同盟」メンバーをはじめ手弁当で参加してくれる同志が現れました。読者の皆様からも激励のことばがたくさん届きます。ほんとうにうれしいことです。決断してよかったと心から思っています。

SAMEJIMA TIMESは6月1日からの本格始動にあたり、①記事は無料公開とする②皆様にご支援(寄付)をお願いするーーで行けるところまで走り続けることにしました。何事も「ひとりでやる」ことを原則としつつ、志を同じくする人々と緩やかなネットワークをつくって「新しいニュースのかたち」をめざします。

コロナ禍の厳しいご時世に心苦しいお願いですが、ご協力いただける方は「寄付のお願い」をクリックしてください。ご支援のほど、よろしくおねがいいたします。

SAMEJIMA TIMES(サメタイ)主筆 鮫島浩

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