政治を斬る!

麻生支配の「完成」を阻む高市総理の最後の一手

9月16日は自民党役員人事、17日は内閣改造。秋の人事がいよいよ最終局面に入った。

今回の人事を読み解く最大のポイントは、「誰が大臣になるか」ではない。高市総理が、麻生太郎副総裁の影響力をどこまで受け入れ、どこに将来の対抗軸を残すのかである。

高市総理は来年秋の総裁選を乗り切るため、麻生氏の支援を必要としている。麻生氏自身の副総裁留任、その義弟である鈴木幹事長の留任を受け入れた時点で、今回の人事はかなりの程度「麻生支配」の継続を前提としている。

しかし、すべてを麻生氏に委ねれば、高市政権そのものが麻生氏の掌の上に乗ってしまう。だからこそ最後に重要になるのが、「麻生の政敵」の処遇である。

その象徴が武田良太氏だ。

福岡では麻生氏と武田氏が県連会長人事をめぐって火花を散らしている。県連会長をめぐっては旧岸田派の古賀篤氏が浮上し、県議会では武田氏に近い大島県議が議長に就く流れとなった。麻生支配は、福岡では決して盤石ではない。

武田氏にとって今回の人事は、入閣できるかどうかだけではない。武田派を維持し、将来の党内基盤を残せるかが勝負である。高市総理にとっては、武田氏を取り込むことが麻生氏への対抗軸になり得る。しかし麻生氏がそれを許すかどうか。

もう一人の焦点が林芳正総務相である。

林氏は留任するのか、それとも無役となって来年秋の総裁選に備えるのか。本人は「首相の専権事項」と述べ、去就を総理に委ねている。周辺には無役を望む声がある一方、林氏本人は打診されたポストを受ける構えともみられる。

ここで高市氏と麻生氏の思惑がぶつかる。高市氏にとって林氏を閣内に置くことは、競争相手を自陣営に抱え込み、来年の総裁選を無投票で乗り切る狙いがある。逆に麻生氏にとっては、林氏を外に出して総裁選に向かわせるほうが麻生派の数の力を背景に高市総理に頭を下げさせることができて都合がいい。

そして意外なところでは、岸田文雄元首相との関係も動いている。岸田氏に近い村井英樹氏を国対委員長に抜擢する人事は、今回の党役員人事では数少ないサプライズだ。高市氏は岸田氏周辺をも取り込み、党内基盤を広げようとしているのだろう。

一方、沖縄県知事選の勝利での論功行賞として入閣が取り沙汰されていた西村康稔氏の選対委員長留任や鈴木貴子氏の初入閣見送りに終わった。どちらも麻生氏に警戒感があったのかもしれない。派手な「高市カラー」を打ち出す人事には至らなかった。そこに今回の人事の特徴がある。

最大のサプライズは、参院のドンと呼ばれる石井準一参院幹事長の更迭である。

高市氏が最も警戒してきた石井氏を外すことで、総理が人事権を握っていることを示した。もっとも、後任には青木一彦氏が浮上している。青木氏は青木幹雄氏の長男であり、石井氏との関係も深い。石井氏を完全に切り捨てたというより、参院勢力との妥協を図った人事とも読める。

維新からの入閣も注目される。中司宏幹事長が候補に浮上しているが、マスコミに疑惑を報道されたことのある馬場伸幸元代表や藤田文武共同代表ではなく、地味な中司氏の入閣で決着すれば、とても目玉人事にはならない。

今回の人事は「高市政権が麻生氏に屈服した」で終わる話ではない。高市氏は、麻生氏に大きく譲歩しながら、武田氏、林氏、岸田氏周辺、さらには維新まで含めて、麻生氏の対抗軸の芽をどこまで仕込めるかが勝負どころとなる。