政治を斬る!

麻生太郎86歳、権力の風向きが変わった 高市人事が動かした「世代交代」

9月20日は麻生太郎氏の86歳の誕生日だった。自民党の現職議員としては政界最高齢。それでも麻生氏は副総裁として党中枢に座り、党内の「数の力」で高市早苗総理を抑え込んでいる。

高市総理は9月16日の役員人事で、麻生氏を副総裁、麻生氏の義理の弟である鈴木俊一氏を幹事長に再任した。麻生支配の継続である。

ところが、9月17日の内閣改造に目を移すと、別の風景が見えてくる。

自民党へ移ってまだ5年の細野豪志氏(55)が復興相として入閣し、高市総理と距離がある岸田文雄元総理の側近・村井英樹氏(46)は自民党の国会対策委員長に就いた。とりわけ細野氏は、民主党政権で環境相や首相補佐官を務め、その後自民党に移った異色の経歴を持つ。高市総理は今回の人事で、派閥の論理ではなく、本人の専門知識や課題意識、やる気を重視したと説明している。

ここに高市人事の狙いが透けて見える。

麻生氏が守りたいのは、これまで築いてきた党内秩序だ。高市総理が今回、そこを正面から壊すことはしなかった。麻生氏も鈴木氏も残った。つまり政権の骨格については、麻生氏の影響力を認めたのである。

しかし、その一方で高市総理は「脇役」と見なされがちな人事で、これまで自分とは政治的立場に距離があった次世代を組み込んだ。昨年までのように長老の意向で政権の顔を並べるのではなく、次世代をターゲットに一本釣りし、自らの「親衛隊」を作り始めたのである。

この違いは小さくない。

政治の世代交代は、ある日突然「引退します」と宣言して始まるものではない。次の権力者の周囲に、次の世代の政治家が集まり始めることで、古い権力者の相対的な存在感が薄れていく。今回の人事は、まさにその第一歩と見ることができる。

しかも、人事直後に麻生氏は86歳になった。もちろん誕生日は偶然である。しかし政治的には、長老政治の象徴ともいえる麻生氏の年齢と、次世代の台頭が同じ時期に重なったことで、「そろそろ時代が変わるのではないか」という空気を強く意識させることになった。

高市総理にとって、来年の総裁選は大きな分岐点になる。麻生氏を敵に回して一気に排除するのではなく、まずはその影響力を残したまま、自分の周囲に次の世代を増やしていく。今回の人事は、そんな長期戦の始まりにも見える。

焦点は、麻生氏がこの流れを止められるかである。

高市政権の中で麻生さんが「キングメーカー」であり続けるのか。それとも、高市総理と次世代の政治家たちが新たな権力の軸をつくるのか。

キングメーカー麻生太郎の86歳の誕生日は、皮肉にも「その次」を考えさせる日になった。