政治を斬る!

高市総理が始めた「側近再編」 細野豪志抜擢の裏にある世代交代と脱麻生

サプライズに乏しい今回の内閣改造で最も目を引いた人事は、細野豪志氏の復興相起用である。

細野氏は民主党政権で環境相などを務め、希望の党騒動を経て自民党に移った。自民党入りからまだ年月の浅い政治家を、いきなり閣僚に抜擢しただけではない。初閣議では高市早苗総理の隣の席に座った。細野氏を新内閣の顔に据える高市総理の狙いを感じさせる配置である。

なぜ細野氏なのか。

その答えを考えるには、今回の人事を「新トリオ」という視点から見る必要がある。

高市総理を支える顔ぶれは、これまで木原稔官房長官、尾﨑正直官房副長官、佐藤啓官房副長官という官邸内のチームだった。いわば総理執務室の近くで政権を守る側近集団である。

その高市官邸の政治力の弱さがずっと指摘されてきた。そこで今回、木原氏に加え、閣僚に細野氏を起用し、さらには国会対策委員長に閣僚未経験の村井英樹氏を抜擢し、高市側近の「新トリオ」をつくった。

木原氏は官房長官として官邸を仕切る。細野氏は閣僚として総理の隣に座り、村井氏は国対委員長として国会を担当する。つまり「官邸・閣僚・国対」という、政権運営の三つの重要な場所に高市総理がお気に入りの中堅政治家を一本釣りして配置したのである。

ここに今回の人事の意味がある。

細野氏は京都大学法学部を卒業し、三和総合研究所を経て政界入りした。民主党政権では原発事故担当相、環境相などを経験し、その後、自民党に移った。現在は安全保障やエネルギー政策などで現実主義を掲げている。

村井氏は財務省出身で、岸田政権では首相補佐官を務めた。今回は国対委員長に抜擢された。

3人に共通するのは、派閥の領袖ではないことだ。年齢も高市総理より一世代下。細野氏55歳、木原氏57歳、村井氏46歳。上の世代が党内の要職を握る自民党で、これまで十分に表舞台に出切れなかった世代である。

しかも、それぞれ違う政治的なネットワークを持つ。

細野氏は旧二階派系、野党時代からの人脈も残る。木原氏は旧茂木派で保守派ポープとして知られる。村井氏は旧岸田派で財務省出身だ。

官邸の中で総理を守る「内向きの側近」だけでは政権は安定しない。党内や国会へ総理の手足を伸ばす「外向きの側近」へ。高市総理が今回の改造で作ろうとしているのは、新たな「高市親衛隊」ではないか。世代交代の歯車を一気に回し、自民党内の勢力図を塗り替える狙いが透けて見える。

その先に見えるのが「脱麻生」だ。

もちろん、高市総理が麻生太郎氏から完全に自立したと見るのは早い。自民党内で麻生氏の影響力は依然として大きい。だが、高市総理自身の人脈で次の世代を取り込み、党内に新しい政治基盤を築こうとしているとすれば、今回の人事はその第一歩になる。

細野氏を総理の隣に置いたことは、単なる入閣ではない。

高市総理が「自分の時代」を作るために、誰を自分の側に置くのか。その答えが、細野、木原、村井という新トリオなのである。

今回の内閣改造で目玉が少ないと言われる中、実は最も重要なのは、閣僚の顔ぶれそのものではなく、高市総理が1年後の総裁再選を見据え、自らの政治基盤を作り始めたことなのかもしれない。