高市首相がニューヨークの国連総会で「世界一の防災大国を目指す」と宣言した。注目すべきは、その直前に行った内閣改造にまで言及し、「国際防災協力担当大臣を新たに任命した」とわざわざ紹介したことである。
名前は出さなかったが、その人物は細野豪志氏である。
先週の内閣改造でサプライズ入閣し、閣議では高市首相の隣に座った細野氏が、今度は国連の舞台に登場した。高市首相が細野氏を政権の顔として売り出そうとしていることが鮮明になった。
しかも細野氏に与えられた担当は六つ。復興、福島原発事故再生総括、防災、防災庁設置準備、国際防災協力、国土強靱化である。
防災担当就任からわずか4日後には台風25号が関東を襲った。千葉県では印旛沼の堤防の一部が決壊し、大規模な冠水が発生。千葉・神奈川では土砂災害が相次ぎ、死者・行方不明者が出る事態となった。細野氏は就任早々、実戦に投入された形である。
この人事で見逃せないのが国土強靱化である。
国土強靱化は、政界を引退した二階俊博元幹事長が長年力を入れてきた政策領域であり、道路、河川、堤防などへの公共投資と深く結びついてきた。今回の国土強靱化関係の来年度概算要求は、15府省庁合計で約8.2兆円。前年当初予算の約1.53倍に膨らんでいる。
もちろん、この8.2兆円を細野氏が一人で自由に差配するわけではない。各府省庁の要求を合計した数字である。しかし、高市政権が防災・国土強靱化を積極財政の柱として押し出すなかで、その政策領域を担う中心閣僚に細野氏を据えた意味は小さくない。
ここには高市政権の人事戦略が透けて見える。
防災庁は石破政権が進めてきた政策である。細野氏はかつて石破陣営にも近かった。その政策と人材を高市政権が取り込んだ格好だ。
一方、国土強靱化は二階氏の影響力が色濃く残る分野である。その後継を、旧二階派を継承した武田良太氏ではなく、武田グループの一員に過ぎない細野氏に担わせるとすれば、これは単なる閣僚人事ではない。
麻生太郎副総裁を政権運営の後ろ盾としながら、次の世代では細野氏を対抗軸として育てる。高市首相がそんな政治地図を描いている可能性もある。
もっとも、細野氏の急浮上を快く思わない政治家も少なくないだろう。旧二階派を引き継いだ武田氏にとっては、細野氏は強力なライバルになる。主流派では萩生田光一幹事長代行も、高市・麻生間をつなぐ立場から、細野氏という新たな政権の顔の台頭を無視できない。連立パートナーとして高市総理と連携を強めてきた維新の吉村洋文代表にとっても、細野氏の急浮上によって相対的な位置づけが変わりかねない。
高市首相の訪米では、もう一つ象徴的な出来事があった。
高市首相がトランプ大統領と会談した翌日、トランプ大統領は習近平国家主席を米軍基地まで自ら出迎えた。高市首相の訪米には米中接近を牽制する意味合いもあっただけに、日本側の思惑どおりには進まなかった。
その一方で、高市首相は国連で「世界一の防災大国」を打ち出した。首尾よくいかなかった日米首脳会談にかわって、外遊の成果を国連総会に求めたと言えるのではないか。
防災・国土強靱化を巨大な政策領域として前面に押し出す。その中心に細野氏を置く。
「世界一の防災大国」。その看板の下で、細野豪志という政治家がどこまで大きくなるのか。高市首相の人事を読むうえで、見逃せないテーマである。