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自民と維新が密約?国会延長をめぐる「覚書騒動」の真相に迫る

自民党と維新の間で取り沙汰されている「覚書」で政局が揺れている。表向きは皇室典範改正や定数削減、副首都法案をめぐる国会運営の問題だが、その本質は政策論争ではない。高市早苗首相と麻生太郎副総裁を軸にした自民党内の主導権争いに、維新が深く巻き込まれている点にある。

国会会期末まで残り2週間となる中、野党各党は審議拒否を続け、国会は混乱している。しかし、政局を左右する対立軸は与党対野党ではなく、自民党と維新、さらに言えば麻生氏と高市首相を中心とする勢力の駆け引きへと移っている。

発端となったのは6月22日の高市首相と吉村洋文維新代表の会談だった。両者は、連立合意の柱である定数削減法案、副首都法案に加え、皇室典範改正案も今国会で成立を目指す方針を確認した。ところが、その後の展開は一筋縄ではいかなかった。

6月末には維新が皇室典範改正への了承をいったん見送り、閣議決定も延期される事態となる。その後、麻生氏と維新の藤田文武幹事長が会談すると、維新は一転して了承に転じ、閣議決定も実現した。この経過だけを見ても、最終的な決定権が誰にあるのかを物語っている。

その流れの中で浮上したのが「覚書」問題だった。

維新は自民党に対し、皇室典範改正を最優先とする代わりに、国会を延長し、定数削減法案と副首都法案も必ず成立させることを文書で確認するよう求めた。会期内に参院で可決・成立しなかった場合は国会を大幅延長して衆院の3分の2で再可決・成立させることを視野に入れる内容だ。

維新からすれば当然の要求とも言える。皇室典範改正だけ成立し、自らが悲願とする二法案が棚上げされれば、連立合意を破棄されたようなものだ。

ところが、この「覚書」について自民党内から意外な発言が飛び出した。

小林政調会長は「一部報道は承知しているが、覚書が存在するとは認識していない」と全面否定したのである。

ここで二つの可能性が浮かび上がる。

第一は、維新が要求したものの、自民党が正式には受け入れなかったという見方である。

もう一つは、より政局的な見方だ。つまり、政調会長さえ把握していない(あるいは公式には認められない)水面下の合意が存在する可能性である。

キングメーカーの麻生氏を外して高市官邸と維新が「密約」をかわしたのか。それとも麻生氏も関与して覚書を交わしたものの、その解釈をめぐって対立が続いており、公式には認められないのか。

いずれにせよ、覚書の締結も正式には確認されておらず、報道と各党幹部の発言には食い違いが残る。ただ、この食い違いそのものが、現在の自民党の権力構造を映し出していると言えるだろう。

一方で、維新を取り巻く環境も急速に厳しくなっている。

国民民主党は当初から定数削減法案の先送りを主張してきた。6月25日の麻生・玉木会談でもその考えを伝えたが、自民党は翌日には審議入りを決定した。玉木氏はその後、「協力したいと思っても、それをはねのける現象が次々に起きている」と不満を隠さなくなった。

さらに参政党も維新批判を強めている。神谷宗幣代表は「定数削減を数の力で押し切るなら大阪で維新を落とす戦略に変える」とまで発言し、高市政権にも責任があると警告した。

こうして見ると、維新は国民民主党、参政党という保守系野党の双方から攻勢を受ける構図になっている。

その中で最大の焦点は、麻生氏の本音だろう。

麻生氏は最近、高市政権の外交や経済運営を評価する発言を繰り返す一方、「皇室典範改正は何としても今国会で成立させる」と強い意欲を示している。これは当面、高市首相との全面対決を避けながら、自らの最重要課題を先に実現しようという計算とも読める。

そして、皇室典範改正が片付いた後に、高市政権との力関係がどう変化するのかが次の政局になる可能性がある。

実際、自民党内では林芳正氏、武田良太氏、さらには菅義偉前首相ら、「アンチ麻生」とされる勢力の動きも活発になりつつある。これらの勢力が高市首相や維新との連携を模索するのか、それとも別の政界再編へ向かうのか。水面下では次の主導権争いが静かに始まっている。

覚書は存在するのか。それとも存在しないのか。

この一点だけを追っていては、今回の政局は見えてこない。

本当に注目すべきなのは、誰が最終的な意思決定を握り、誰が情報を共有されず、誰が次の一手を準備しているのかという権力の流れである。

「覚書騒動」は、その権力構造を映し出した一つの象徴にすぎない。国会終盤戦は、法案の成否以上に、麻生氏、高市首相、維新、それぞれの思惑がどこで交差し、どこで決裂するのかが最大の見どころとなりそうだ。