政治を斬る!

維新は「2000年の自由党」になるのか――麻生が仕掛ける分裂の罠

七夕の夜、高市早苗首相と日本維新の会の吉村洋文代表が再び向き合った。

そこで合意されたのは、キングメーカー麻生太郎副総裁の悲願である皇室典範改正は今国会で実現する一方、連立合意の柱である衆院定数削減法案は今国会成立を断念して先送りするという、維新にとっては衝撃の結果だった。

もうひとつの連立合意の柱である副首都法案も「成立を目指す」ものの、確約は取れなかったのである。

高市首相と吉村代表の約束ーーつまり、連立合意の柱があっけなく空文化されたのだ。政権内での麻生優勢、高市劣勢が如実に反映されたのだった。

麻生の完勝、高市・吉村の完敗ーー。維新のメンツは丸潰れだ。

維新はそれでも連立政権にとどまるのか。連立離脱に踏み切るのか。

それとも、離脱組と残留組に分裂するのか。

私は、この光景を見ながら、26年前のある政局を思い出していた。2000年、自自公連立政権が崩壊したときの自由党である。

当時、自由党を率いていたのは小沢一郎氏だった。自民党との連立を組んだものの、その後に公明党も連立に加わった結果、自由党の連立パートナーとしての価値は暴落し、自民党に軽んじられるようになった。小沢氏は自民党との対立を深め、連立離脱を決断したのである。

しかし、党内の全員が小沢氏についていったわけではなかった。

小沢氏の腹心として1993年に自民党を離党した後、1990年代の政界再編で小沢氏と行動をともにし、自由党の国会対策委員長として自自公連立樹立の立役者となった二階俊博氏らは、「政権に残るべきだ」と判断し、小沢氏に反旗を翻した。そして保守党を結成し、自民党との連立政権に残留したのである。自由党は離脱組と残留組に分裂したのだ。

その後の二階氏の歩みは周知の通りだ。やがて自民党へ復帰し、幹事長まで上り詰め、自民党政権を支える最大級の実力者となった。

政界では、「政党」よりも「政権」が人を引き寄せることがある。その典型例だった。

私は今の維新に、その自由党の姿が重なって見える。昨年10月に連立入りした時、自民党は衆参両院で過半数を割っていたため、国会での首班指名を勝ち抜くには維新との連立がどうしても必要だったのだ。

しかし、今年2月の衆院選で自民党は圧勝し、単独で3分の2を超えた。一方、参院では自民と維新の与党だけでは過半数に届かない。維新は自民党にとって、「数の上では不要」な存在になった。2000年の自由党とまるで同じ立ち位置である。

とくに自民と維新の連立の立役者であり、高市首相と吉村代表をつないだ維新の遠藤敬国対委員長(兼首相補佐官)は、当時の二階氏と非常に重なってくる。

維新は高市政権との連立を維持しながら、定数削減法案と副首都法案という二つの看板政策の実現を目指してきた。

ところが、自民党内ではキングメーカー麻生太郎氏が、別のシナリオを描いている。自らの悲願である皇室典範改正を先行成立させた段階で国会を閉じ、維新二法案を置き去りにする構想だ。副首都法案は成立の可能性が残っているものの、麻生氏と盟友関係にある国民民主党が猛反対する定数削減は、事実上撤回に追い込まれた。

維新から見れば「約束が違う」。ここで吉村代表は重大な決断を迫られる。

約束を破られたとして連立を離脱するのか。

それとも法案成立を信じて連立に残るのか。

しかし、本当に注目すべきなのは、そのとき維新が一つの判断を下せるかどうかだ。

私は、そう簡単ではないと思う。

現在の維新には、大阪で地域政党として歩んできた大阪維新と、国政を主戦場とする日本維新という二つの流れが存在する。

さらに、閣内入りを目指す議員、党勢拡大を優先する議員、地元大阪の利益を重視する議員など、それぞれ置かれた立場も異なる。全員の利害が一致しているわけではない。

遠藤国会対策委員長は、国会運営の最前線で与党との交渉を担ってきた。今回の七夕会談にむけても、土壇場で自民党の松山政司参院議員会長、国民民主の榛葉幹事長と会談し、最終調整を担った。

法案を成立させるには、相手と交渉し、妥協点を探り、政権との信頼関係を維持することが不可欠だ。

国対委員長という役職は、党内で最も現実主義にならざるを得ない立場でもある。

だからこそ、その姿は、2000年当時、自民党との連立維持を選択した自由党国対委員長・二階俊博氏と重なって見えるのである。

もちろん、遠藤氏が連立残留を選ぶと決まったわけではない。しかし、もし吉村氏が「約束は破られた」として連立離脱を決断した場合、党内の全員がそれに従う保証はどこにもない。

「政権に残るべきだ。」「ここで離脱すれば、これまで積み上げた成果が失われる。」

そう考える議員が現れても不思議ではない。それは26年前、自由党で実際に起きたことである。

麻生氏が本当に狙っているのは、維新二法案を潰すことだけではないだろう。より重要なのは、維新そのものを揺さぶり、連立離脱あるいは分裂へ追い込み、高市首相の最後の応援団を壊滅させることではないか。

そのうえで、自らと盟友関係にある国民民主党を連立に引き込む。これにて、麻生支配は完成するのだろう。

維新には3つの道がある。麻生支配に服従する「屈辱の連立残留」か、麻生支配に反発する「怒りの連立離脱」か、それとも離脱組と残留組に袂を分つ「分裂」か。鍵を握るのは遠藤国対委員長のような気がしてならない。