政治を斬る!

高市早苗を脅かす「女たち」 ポスト高市レースは始まっているのか

高市早苗首相を取り巻く政治環境が、急速に厳しさを増している。

自民党内では、キングメーカーとして影響力を誇る麻生太郎氏が党運営の実権を握り、高市首相は孤立感を深めつつある。一方、高市政権を支える最大の与党外勢力となった日本維新の会も、国会では与野党双方から包囲され、「維新包囲網」が形成されつつある。

高市・維新ラインが揺らげば、「高市おろし」が現実味を帯びる――そんな空気が永田町に漂い始めている。

しかし、高市首相には一つ、大きな強みがある。「次」が見えないことだ。

麻生氏の本命とされる茂木敏充氏は、政策能力への評価は高いものの、国民的人気や党内での求心力には課題を抱える。林芳正氏は麻生氏との距離が遠く、小泉進次郎氏や小林鷹之氏も決定打を欠く。

そこで浮上してきたのが、「女性総理から女性総理へ」というシナリオである。

高市首相は、安倍政権を熱烈に応援した自民党保守層だけではなく、「日本初の女性首相」という象徴性によって若年層や女性からも一定の支持を集めた。その高市氏を退陣させ、再び男性中心の古い自民党へ戻ったという印象を与えれば、世論の反発は避けられない。

ならば次も女性を担ぐことで、高市支持層を党内に引き留める――。そんな計算が水面下で広がり始めている。

本命は小渕優子

現在、ポスト高市候補として最も有力視されているのが小渕優子氏だ。

その象徴的な出来事が、自民党税制調査会インナー辞任だった。

表向きは、高市政権が掲げる食料品消費税減税への反対が理由とされた。しかし永田町では、「高市包囲網が形成されるタイミングを見計らって、真っ先に反旗を翻した」という見方が少なくない。

小渕氏は群馬県を地盤とする小渕恵三元首相の娘であり、平成研究会の流れをくむ政治家でもある。

34歳で戦後最年少入閣を果たし、「将来の女性首相候補」と期待されたが、経済産業相時代の「政治とカネ」問題で失速。「ドリル優子」という不名誉な異名まで付けられ、長く表舞台から遠ざかってきた。

その小渕氏が今、再び動き始めている。

背景には、森山裕氏、木原誠二氏、石井準一氏ら高市政権では非主流派となった有力政治家の存在がある。さらに財務省とも近く、「打倒高市」の結節点として小渕氏を担ぐ動きがあるとの見方も根強い。

さらに注目を集めたのが、税調インナー辞任が報じられた当日に開かれた「女子会」だ。

参加者は小渕氏、野田聖子氏、小池百合子東京都知事、そして連合の芳野友子会長。

これは小渕擁立の決起集会なのか。それともベテラン女性政治家たちによる牽制なのか。真意は明らかではないが、「女性総理」をめぐる水面下の駆け引きを印象づける場面となった。

最大のライバルは片山さつき

一方、高市政権内部から浮上する対抗馬が片山さつき財務相である。

片山氏は東大卒業後に財務省へ入り、女性初の主計官となった異色の経歴を持つ。高市首相とは積極財政路線で歩調を合わせ、財務相に抜擢された。

ところが最近は両者の間に微妙な距離感が生まれている。

最大の理由は円安対応だ。

大型の為替介入を実施したものの円安は止まらず、市場では財務相としての手腕に厳しい視線が向けられている。

さらに、高市氏が消費税減税や低金利維持を重視する一方、片山氏は財政規律や金融政策ではより現実路線に近いとの見方もある。

もし高市政権が行き詰まれば、「私なら立て直せる」と考えるのは自然なことだろう。

秋の内閣改造で財務相に留任できるかどうかは、片山氏自身の政治的命運を左右する重要な局面となりそうだ。

大穴は小池百合子

そして「大穴」と言える存在が東京都知事の小池百合子氏である。

現在は国政を離れているため、通常であればポスト高市候補に名前が挙がる立場ではない。

しかし、小池氏ほど総理への執念を持ち続けてきた政治家も珍しい。

日本新党、新進党、自由党、保守党、自民党と渡り歩き、環境相、防衛相、自民党総務会長を歴任。2008年には女性として初めて自民党総裁選へ挑戦した。

その後は東京都知事となり、希望の党を立ち上げるなど国政復帰を狙ったが、思うような成果は得られなかった。2025年、高市氏が「初の女性首相」の座を手にしたことで、小池氏にとっては悲願を先に果たされた形になった。

それでも政治家・小池百合子は簡単には諦めない。

女子会への参加も含め、政界再編の局面で存在感を示そうとしている可能性は十分ある。

もっとも、小池氏には麻生氏との長年の確執がある。自民党への本格復帰は容易ではなく、「麻生後」の政界再編こそが最大のチャンスになるのかもしれない。

初代女性総理候補だった野田聖子

忘れてはならないのが野田聖子氏である。

かつて女性総理候補の筆頭と目され、小渕内閣では37歳で戦後最年少郵政相となった。

しかし郵政民営化への反対で自民党を離党。その後復党したものの、総裁選では思うような支持を広げられず、「初の女性総理」の座は高市氏に奪われた。

さらに今度は妹分ともいえる小渕氏がポスト高市候補として脚光を浴びている。

複雑な心境であることは想像に難くないが、政治家としての野心が消えたとは考えにくい。

カギを握るのは連合会長

女子会のもう一人の重要人物が、連合会長の芳野友子氏だ。

総理候補ではないものの、立憲民主党と国民民主党の橋渡しを担い、自民党とも独自のパイプを築いている。

政界再編が動き出す局面では、連合の意向が政権の枠組みに影響する可能性もある。

女性政治家たちの連携を考える上でも、芳野氏の存在は見逃せない。

稲田朋美は復活するのか

最後に注目したいのが稲田朋美氏である。

かつては安倍晋三氏の後継候補と目され、防衛相や政調会長を歴任した。

しかし近年は選択的夫婦別姓やLGBT問題で従来の保守路線から距離を置き、高市氏とは政治的立場の違いが鮮明になっている。今国会では再審制度見直しに反発した「稲田の乱」が注目を集め、野党支持層から拍手喝采を受けた。

現時点で本命視する声は多くないが、政局が大きく動けば再浮上する可能性を完全には否定できない。

高市政権は依然として続いている。しかし永田町では、すでに「その次」を見据えた動きが始まっている。

小渕優子、片山さつき、小池百合子、野田聖子、そして稲田朋美――。

女性初の首相を生んだ日本政治は、今度は「二人目の女性首相」を誰にするのかという新たな局面に入るかもしれない。