なぜ、中司宏氏だったのか。
高市第2次改造内閣で、維新から初めて入閣したのは中司宏氏であった。規制改革担当相というポストである。高市首相は中司氏の入閣を「自民・維新連立政権が新たな段階に進む象徴」と位置づけた。
だが、入閣からわずか数日で、その過去が再び注目を集めている。
中司氏は枚方市長時代の2007年、清掃工場建設をめぐる談合事件で逮捕・起訴され、懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決を受けた。本人は入閣後の記者会見でも無罪を主張し続けてきたと説明している。
今回、新たに浮上したのは、その事件で中司氏とともに捜査を受けた初田豊三郎元枚方市議の証言である。初田氏は大林組側から受け取った3000万円の一部を中司氏に渡したと証言した。『週刊現代』はこの証言を報じている。
ただし、ここは慎重に見なければならない。金銭授受が裁判で認定されたわけではなく、中司氏は「記載されているような事実はない」と否定している。したがって現段階で問うべきなのは「金を受け取ったのか」と断定することではなく、「高市早苗首相はなぜ、この証言が入閣直後に出てくるリスクを承知で閣僚に起用したのか」である。
そして最大の謎は、むしろ人事そのものにある。
維新には吉村洋文氏、馬場伸幸氏、藤田文武氏という、より知名度の高い政治家がいる。それでも最終的に選ばれたのは、党内で目立つ存在ではなかった中司氏であった。
馬場氏については週刊誌との係争が続き、藤田氏については2025年、赤旗が公設第1秘書の会社への約2100万円の支出を報じた。そのうち約1965万円が政党交付金などの公金だったとされる。藤田氏は取引自体は適法・適正だったと説明しつつ、今後は同社への発注をやめると表明した。
だからこそ、「なぜ中司氏だったのか」という疑問が残る。馬場氏や藤田氏を避けた結果なのか。それとも維新側が、党内の主導権争いを考えて中司氏を選んだのか。現時点で断定できないからこそ、ここは政局として興味深い。
もう一つ見逃せないのが「身体検査」である。
7月31日、内閣情報調査室は発展的に解消され、官邸直属の国家情報局が発足した。政府は国家情報局を政府全体のインテリジェンス活動の司令塔と位置づけている。今回の内閣改造でも入閣候補者たちの「不祥事」をチェックしたとみて間違いない。
問題は、そうした情報機能を持つ新体制が発足した直後の改造人事で、過去の有罪事件を持つ中司氏が選ばれ、その直後に新たな証言が飛び出したことだ。
誰が、どこまで調べたのか。
2007年の事件そのものは公知の事実である。ならば問題は、それを知った上で「中司氏を閣僚にしてもよい」と判断した基準にある。
そして、この人事は維新の現在地も映し出している。
連立入りによって維新は政権与党となった。しかし、今年2月の衆院選で自民党は圧勝し、維新の存在価値は大きく落ちた。さらに維新と距離がある麻生太郎副総裁がキングメーカーとして君臨し、維新を遠ざけている。維新の閣僚枠は1つに限られ、看板政策である衆院定数削減でも自民党との温度差が広がるばかりだ。
維新は政権に近づいたのに、政権内での存在感はむしろ薄くなっていないか。
中司氏の新証言問題は、単なる過去の事件の再燃ではない。「なぜ中司氏だったのか」という一点から、高市政権と維新の距離、そして維新の党内力学まで見えてくるのである。