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鈴木更迭、一転見送り!? 米価暴落で高市首相が農水相に屈服か

昨年の「米不足・米価高騰」から一転、今年は「米余り・米価急落」である。

業者間取引価格は昨年10月のピーク時、玄米60キロ当たり3万7058円だった。ところが今年6月には3万1305円まで下落。1カ月の下落率は6%で、調査開始以来最大となった。スーパーの5キロ価格も年初の4000円台から、8月下旬には3156円まで下がっている。

さらに衝撃的なのがJAの概算金である。2026年産米について、宮崎のコシヒカリは1万8000円、新潟のコシヒカリは1万8500円、北海道のゆめぴりかも1万8500円。いずれも前年から4割前後の大幅下落である。

なぜ、ここまで値崩れしたのか。

昨年の米不足を受けて政府が備蓄米を大量放出し、安い備蓄米や輸入米に消費が流れた。その一方で、25年産米の生産量は増え、販売が鈍化。民間在庫は今年7月末で162万トンと、前年の約1.8倍に膨らんだ。そこへ26年産の新米が出てくる。古米を抱えた業者が売り急ぐため、価格がさらに下がるという悪循環である。

ここで浮上するのが鈴木憲和農水相の進退問題だ。

鈴木氏は典型的な農林族である。生産調整によって米価を維持し、農家所得を守るという農水省の伝統的な農政に立つ。備蓄米についても早期に買い戻し、需給を引き締めるべきだと主張してきた。

ところが高市総理は慎重だった。

高市政権は物価高対策を最大の政治課題の一つとしている。米価が下がれば消費者には朗報である。政府が備蓄米を買い戻せば、米価を下支えすることになる。「物価高対策に逆行する」というのが高市側の論理だった。

6月11日、鈴木氏は官邸を訪れ、備蓄米買い戻しを提案した。しかし高市総理は受け入れなかった。

やがて「鈴木更迭説」が浮上する。7月には、鈴木氏が秋の内閣改造で交代させられるのではないかとの観測が広がった。

ところが鈴木氏は引かなかった。

7月28日の会見で、買い戻しの検討を進めるよう指示したことを明らかにし、8月末の作柄を見て判断する方針を示したのである。

そして8月、状況が変わった。

鈴木氏が警戒していた米価暴落が、現実になったのである。

新潟、北海道、秋田など主要産地で概算金が次々と大幅に引き下げられた。農家にとっては死活問題である。昨年3万円前後だった概算金が、わずか1年で1万8000円台に落ち込む。高市政権としても、この現実を無視することは難しくなった。

ここへきて、備蓄米買い戻しをめぐる政府の姿勢にも変化が出ている。

9月中に15万トン程度を軸に買い戻す方向で調整しているとの報道が出た。正式決定ではないが、7月末の「買い戻し見送り」から明らかに空気が変わった。

鈴木氏も8月28日の会見で、具体的な時期や数量は決まっていないとしながら、8月31日に公表される作柄を確認し、9月2日の農水省の審議会「食糧部会」を踏まえて判断すると説明した。

つまり、こういう構図である。

「買い戻すべきだ」と主張した鈴木氏が追い込まれたはずだった。ところが米価が暴落し、高市官邸の方が鈴木氏の主張を取り込まざるを得ない状況になってきた。

ここから秋の人事が難しくなる。

鈴木氏を留任させれば、「高市が鈴木に屈した」と見られかねない。一方、鈴木氏を更迭しても、米価暴落への対応を続けるなら、結局は鈴木氏が主張してきた農家・JA重視の農政を継承することになる。

そこで考えられるのが、「鈴木を代えるが、農水族を後任に据える」という人事である。

選択肢は三つある。

第一は鈴木留任。米価暴落対策を鈴木氏自身にやらせる。

第二は規制緩和・消費者重視の路線に転換し、小泉進次郎氏のような農政を再び打ち出す。

第三は別の農林族を農水相に起用する。政策は生産者重視のまま、鈴木氏を外すことで高市総理のメンツを守る。

私は第三の可能性が無視できないと見る。

その場合、鍵を握るのが森山裕氏ら農林族である。森山氏の側近である坂本哲志氏を再登板させるような人事になれば、鈴木氏を外しながら農林族との関係を維持できる。

そしてもう一つの変数が茂木敏充外相である。

鈴木氏は旧茂木派。現在も茂木派系の閣僚は高市内閣の3分の1を占め、茂木氏自身の幹事長起用説も浮上している。

もし茂木氏が幹事長になり、その影響力のもとで農水相人事が決まるなら、鈴木氏の進退は単なる農政問題ではなくなる。

高市総理が鈴木氏を残すのか。切るのか。切るなら誰を置くのか。

米価暴落によって、鈴木農水相は崖っぷちから息を吹き返した。

しかし、それがそのまま留任を意味するわけではない。

むしろ高市総理にとって最大の難題は「鈴木を切っても鈴木路線を続けなければならない」というねじれである。

秋の内閣改造は、米価をめぐる高市・鈴木の攻防に決着をつける人事になる。

そしてその人事を見れば、高市政権が本当に農政の主導権を握っているのか、それとも農林族、そして茂木氏ら党内勢力に押し戻されているのかが見えてくるはずである。