高市早苗内閣の支持率が大きく下落している。
時事通信の7月世論調査では、内閣支持率は49.0%。ついに発足以来初めて5割を割り込んだ。しかも2カ月連続の大幅ダウンである。なかでも目を引くのは無党派層の支持率急落だ。自民党支持層の支持はなお高い一方、「高市さんなら日本を変えてくれる」と期待していた無党派層が静かに離れ始めている。
昨年秋の自民党総裁選で大逆転勝利を収め、今年2月の総選挙でも圧勝した高市首相。当時の勢いはまさに「高市フィーバー」だった。長く続いた自民党政治を刷新し、積極財政で日本経済を立て直す――。そんな期待感が保守層だけでなく、現役世代や若者にも広がっていた。
しかし、その熱狂は長く続かなかった。
最初のつまずきは、ネガティブキャンペーン動画疑惑だった。疑惑そのものは尻すぼみに終わったものの、国会答弁は二転三転し、それまで封印されていた「高市批判」が一気に噴き出した。
続いて消費税減税をめぐる迷走である。
減税を期待していた層は「公約違反ではないか」と失望し、一方で財政規律を重視する層は「インフレを加速させるのでは」と不安を抱いた。結果として双方の期待を裏切る格好となり、高市政権の求心力は徐々に低下していった。
そして決定打となったのが、皇室典範改正ではないだろうか。
今回成立した改正では、室町時代に皇室から分かれた旧宮家の男系男子を養子として皇族に復帰させる道が開かれた。
政府は皇族数確保のための制度改革だと説明する。しかし、多くの国民には「女性天皇、すなわち愛子天皇への道を閉ざす制度ではないか」という印象を与えた。
さらに、この改正を強力に主導したのがキングメーカー麻生太郎氏だったことも、大きな意味を持つ。
これまで高市政権は「高市カラー」が前面に出ていた。しかし皇室典範改正では、政策の主導権が麻生氏にあることが誰の目にも明らかになった。
積極財政を掲げて誕生した高市政権は、いつの間にか麻生氏の政治日程を実現する政権へと映るようになったのである。
もちろん、麻生氏が皇統をどう考えているのか、その真意を断定することはできない。しかし今回の制度改正によって、「麻生氏の影響力があまりにも大きい」という印象が広がったことは否定できないだろう。
その結果、高市政権が持っていた「新しい政治」というイメージは急速に色あせてしまった。
もっとも、支持率が下がったからといって、高市政権がすぐに倒れるわけではない。
むしろ今回の世論調査が示しているのは、「積極支持」から「消極支持」への転換である。
自民党支持率は政権発足以来最低を更新したとはいえ、依然として野党を大きく引き離している。さらに「支持政党なし」は約6割に達し、自民党から離れた人々の多くは野党へ向かわず、無党派層へ流れている。
野党各党も低迷が続く。
国民民主党は「手取りを増やす」旋風で一時は政局の主役となったが、今では勢いを失った。維新も連立協議をめぐる迷走で存在感を失い、中道や立憲も皇室典範改正への対応をめぐって支持を伸ばせていない。
つまり、高市政権の最大の強みは「人気」ではなく、「代わりがいない」という現実なのである。
だからこそ、高市首相は支持率が下がっても政権を維持できる。
しかし、それは同時に危うさでもある。
熱狂的な支持を失った政権は、自らの理念で政治を動かす力を失い、党内実力者の影響を受けやすくなる。
その象徴が、今回の皇室典範改正だった。
これから焦点となるのは、夏から秋に予定される内閣改造と党役員人事である。
幹事長人事はどうなるのか。麻生氏はさらに影響力を強めるのか。それとも高市首相は失われた主導権を取り戻すことができるのか。
来年の自民党総裁選まで、高市政権は続く可能性が高い。
しかし、その姿は昨年秋に国民が期待した「高市一強政権」とはまったく違うものになっているかもしれない。
支持率急落が示しているのは、単なる数字の変化ではない。
それは、「高市人気の終わり」と「麻生支配の始まり」という、日本政治の新たな転換点なのではないだろうか。