政治を斬る!

官房長官になりたい!馬場暴走で維新内戦へ〜分裂前夜、泥沼の大臣争奪戦

日本維新の会が、いよいよ岐路に立たされている。

連立政権に残るのか。それとも飛び出すのか。その運命を左右するのが、この夏から秋に予定される内閣改造だ。

その渦中で、永田町を驚かせる発言が飛び出した。維新の前代表・馬場伸幸氏がYouTube番組で「何でも選べるなら個人的には官房長官」と公言したのである。

普通なら冗談と受け流されても不思議ではない。しかし、今の政局でこの発言は笑い話では済まない。むしろ、維新内部の権力闘争と連立政権の危うさを象徴する一言なのである。

官房長官とは、総理大臣の「女房役」と呼ばれる政権ナンバー2だ。

政府の人事を差配し、各省庁をまとめ、与野党との交渉を担い、官房機密費も管理する。毎日の記者会見では政府の顔となり、総理が最も信頼する人物が就くポストである。

歴代官房長官を振り返れば、その重みはよくわかる。

菅義偉氏は官房長官として安倍政権を支え、そのまま総理に上り詰めた。

一方、第1次安倍政権では、若手中心の「お友達内閣」が迷走し、参院選に惨敗した後はベテランの与謝野馨氏が官房長官に就任して後始末に奔走した。

私自身、政治部で官房長官番を担当した経験があるが、官房長官室こそ永田町最大の情報センターだった。官房長官は各党との交渉、人事調整、危機管理まで一手に引き受ける。「政局好きだからやりたい」というだけで務まる仕事ではない。

だからこそ、自民党内では馬場発言に「何様のつもりだ」という反発が噴き出した。

しかし、この発言の本質は別のところにある。

馬場氏は「官房長官になりたい」のではない。「維新が連立政権に不可欠な存在だ」と内外に示したいのである。

維新は昨年、高市政権発足時には「いつでも連立離脱できる」と強気だった。だからこそ、あえて大臣を送り込まず、閣外協力にとどめたのだ。

ところが今は状況がまるで違う。今年2月の衆院選で自民党は圧勝し、維新の「数」は不要になった。この結果、連立合意の柱だった国会議員定数削減法案の成立は先送りされ、もうひとつの柱である副首都構想も、自民党との調整の中で骨抜きにされたのだ。

麻生太郎氏が主導する自民党は、維新をまったく重視していない。むしろ麻生氏に近い国民民主党との連携を模索する動きまで広がっている。

維新にとって最も恐ろしいのは、「唯一の連立相手」という地位を失うことだ。

だからこそ、馬場氏は大胆な発言で存在感を示そうとしているのである。

しかし、この発言は敵を増やした。

第一の敵は、自民党だ。

官房長官を要求すること自体、「分をわきまえろ」という空気が自民党内に広がる。

第二の敵は、国民民主党である。

もし国民民主が連立入りすれば、維新の存在価値は一気に薄れる。

そして第三の敵が、実は維新内部なのである。

馬場氏が最も欲しいのは、実は官房長官ではない。

本人も「維新として一番重要なのは総務大臣」と語っている。

総務省は地方自治を所管する役所だ。

副首都構想を推進するなら、まさに中核となるポストである。

ところが、ここにも大きな矛盾がある。

総務大臣になれば、副首都担当大臣も兼務する可能性が高い。

そうなると、大阪府知事であり維新代表でもある吉村洋文氏との関係が微妙になる。

副首都構想を誰が主導するのか。

大阪の吉村氏なのか。

東京の総務大臣、つまり馬場氏なのか。

さらに、連立合意は党首会談で決まる。

閣議では閣僚として政府の一員になる。

党の代表と閣僚の立場が食い違えば、馬場氏と吉村氏が真正面から衝突する場面も十分考えられる。

さらに共同代表の藤田文武氏との関係もある。

藤田氏も、高市総理から維新に入閣要請があったことを認め、自身の入閣も否定していない。

馬場氏は「藤田さんは非常に優秀」と持ち上げつつ、「国会議員団長と閣僚の兼務は難しい」と釘を刺した。

一見、評価しているようで、「入閣するなら自分だ」と宣言しているに等しい。

馬場氏と藤田氏は長年、維新内部で師弟関係と目されてきた。藤田氏を取り立ててきたのは、馬場氏なのだ。

しかし、維新からの初入閣という現実を前に、その蜜月が試されようとしている。

そして、その背後にはさらに複雑な人間関係が見える。

吉村氏は高市総理との距離が近い。

藤田氏は国会終盤に麻生氏と会談し、新たなパイプ構築がささやかれる。

馬場氏は、麻生氏と対立する自民党の武田良太氏や林芳正氏との関係を築いてきた。

遠藤敬国対委員長は、高市・吉村ラインをつなぎながら、各党に幅広い人脈を持つ。

維新は一枚岩ではない。

それぞれが異なるルートで自民党中枢につながり、次の時代の主導権を狙っているのである。

今後の日程を見れば、この対立はさらに激しくなる。

まず内閣改造で誰が入閣するのか。

来春には副首都構想をめぐる住民投票が控える。

さらに来秋には自民党総裁選が予定され、高市政権が続く保証はない。

そのたびに、維新は「連立に残るのか」「離脱するのか」という選択を迫られる。

かつて自由党は自民党との連立の中で分裂し、一部は連立に残り、一部は離脱した。

同じようなドラマが、維新でも繰り返されないとは言い切れない。

馬場氏の「官房長官になりたい」という発言は、一見すると突飛な放言に映る。

しかし、その裏側には、維新が連立政権の中で生き残れるのかという切実な危機感がある。

そして同時に、「入閣するのは誰か」「連立政権にとどまるのは誰か」をめぐる党内抗争の号砲でもある。

連立離脱か、政権残留か。

それとも分裂か。

維新の本当の戦いは、自民党との交渉ではない。

党内で「次の権力」を誰が握るのか。その内戦が、いま静かに始まっている。