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新聞記者やめます。退職まであと86日!【「会社員記者」時代の終焉】

連載をはじめてからホームページにたくさんのコメントを頂戴している。今後の身の振り方について建設的なアドバイスが多く、とても感謝しています。

とりわけありがたいのは、私が歩んできた政治や新聞の世界からはうかがい知ることのできなかった様々な業界の情報だ。飯塚尚子さんからいただいたゲーム業界をめぐるコメントはとくに興味深く拝読させていただいた。

それによると、新しいゲームの開発チームには世界中から最先端技術に自信のある専門家が集まり、長ければ数年をかけて完成させる。そして発売と同時にチームは解散し、各々は新しいゲーム開発のチームへ散っていく。

「一つのゲームを開発する」という目的の下、自立した専門家たちが期間限定で集結し、目的を達成した時点で解散する。これを繰り返しながら、新しいゲームが世界各地で次々に生まれていくというわけだ。

世界市場をターゲットにして巨額の資金がなだれ込み急成長を遂げているゲーム業界と、人口減社会を舞台として凋落が進む日本マスコミ業界を同列に論じることはできない。だがゲーム業界の「働き方」は、ジャーナリズムの世界にも十分に援用できるのではないだろうか。飯塚さんの言葉を借りれば「組織や地域、言語の垣根を越えて変幻自在に取材コアを形成・解体・形成を継続していく」のである。

日本の新聞記者は新聞社に入るとその会社で定年までそこで働くことがふつうだった。新聞社は他の多くの日本企業と同じように年功序列・終身雇用だ。

最初は地方支局に赴任して取材や執筆のスキルを学び、6年目あたりで東京や大阪の本社に移って政治部、経済部、社会部などの専門記者となり、40代でデスクなどの管理職となって取材現場を離れる。その後は出世競争に勝ち抜いた一部は経営側に回り、一部は編集委員などとして取材現場に戻り、一部はビジネス部門に転出するのだが、私の所属新聞社でいえば、2000人以上の記者全員が取材・執筆に総力をあげているとはとてもいいがたい。記者1人の維持コストは極めて高いといえるだろう。

戦後日本の新聞社が大勢の記者を抱えることができたのは、ほぼすべての世帯が何かしらの新聞を購読し、毎朝配達するビジネスモデルが大成功を遂げたからだった。

誰もが手軽に発信してコンテンツが溢れかえるインターネット時代が到来し、新聞社のビジネスモデルは崩壊した。新聞業界はIT業界に敗北し、メディア界のリーダーから転落した。もはや2000人の記者を抱える体力はない。

日本全国の役所や警察に置かれている記者クラブはその閉鎖性から厳しい批判を受けているが、記者クラブが存続してきたのは、新聞社が全国津々浦々に記者を配置し、全国のニュースを漏れなく報じる余力があったからだ。もはやそれは不可能である。記者クラブはジャーナリズム論というより新聞経営の現実的問題として徐々に姿を消していくだろう。

さらに経営体力を失った新聞社は、取材・執筆・編集の外注を始めるのではないか。すでにテレビ局はそうなっている。取材・執筆・編集のすべてを自前で完結させる時代はまもなく終わる。良い悪いではなく、それが現実だ。

テレビ局・新聞社・出版社などのメディアがあるひとつの取材テーマを掲げ、そこに社内外の腕利きの記者や編集者らを期間限定で集め特別チームを編成し、その報道を終えたら解散する。これからの日本マスコミ界はゲーム業界のような働き方が主流になっていくのではないか。

そこで重要になるのが、記者の自立である。会社に依存し、会社の上司に取り入り、会社の中で大きな顔をしてきたサラリーマン記者は、もはや通用しない。どんなチームでも対応できる記者としての最低限のスキル(取材力、執筆力、技術力)を身につけたうえ、記者としての専門性やオリジナリティを高めなければ、どこのチームからも声をかけてもらえないだろう。

時代の流れは速い。新聞社の凋落で多くの新聞記者が居場所を失う。コロナ禍でその流れは加速する。ジャーナリズム界の雇用の流動化が本格化する。ひと昔前に金融業界などで起きたことが、ついに新聞業界でも起きる。これは厳しい現実だ。しかし、日本のジャーナリズム再建のチャンスでもある。

ゲーム業界は時代の最先端だ。メディアは本来、時代の先頭を走るものだった。新聞はいまや時代の最後尾を走っている。それではだめだ。最先端に立つには会社の中に閉じこもっていてはいけない。会社依存から卒業し、組織や地域、言語の垣根を超えてジャーナリストたちと連帯するしかない。

答えは見えている。あとは勇気をもって一歩を踏み出すかどうかだ。

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