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新聞記者やめます。あと42日!【GOTOトラベル中断で宙に浮いた1兆2000億円の税金を国民の手に取り戻せ!】

世論の反発で中断に追い込まれたGOTOトラベルの再開が6月以降となった。菅政権内には「ワクチン接種が進むまで再開は難しい」との見方が強く、6月以降にほんとうに再開するのか、先行きはかなり不透明だ。

私は当初、GOTOトラベルについて「コロナウイルスを全国にばらまく」という感染拡大防止の立場からというよりも、大手旅行代理店を露骨に救済する歪んだ制度に巨額の税金を投じる「利権構造」を追及する立場から批判的だった。コロナ禍において、もっと他に税金の適切な使い道があるのではないかという主張だ。

その立場からいうと、この巨大事業の中断が延々と続くなかで、巨額予算はいったいどうなるのかが気になって仕方がない。報道によると、GOTOトラベルはいまなお約1兆2000億円の割引予算を残しているというのだ。

かくも巨額の予算を積み残したまま新しい年度に突入する事業は極めて珍しい。さすがに政府内でもこの巨額予算をどう消化していけばよいのか議論が始まっているようだ。

そこで浮上したのが、都道府県が独自に行う住民向けの旅行割引の財源に「流用」する案である。コロナ感染が落ち着いている地域を対象に1人1泊あたり最大7000円を政府が負担するため、GOTOトラベル予算から3000億円をまわすという国土交通省の方針があまり目立たない形で報道されている。

同じ旅行業界への支援なのだから、まあ、いいのではないか…。そう思う方もいるかもしれないが、ほんとうにいいのか?

GOTOトラベル事業の是非はともかく、この巨額予算は国会での予算審議を経て成立したものである。その趣旨は「全国の人々を対象に旅行代金の一部を税金で負担し、旅行需要を高めることで、全国の宿泊施設等を支援する」ことにあったはずだ。

私は当初から「東京都民だけ対象外」などという扱いには極めて批判的だった。法の下の平等に反するのではないか? すべての人々がコロナ対策に連帯して向き合わなければならないときに、政府が不公平感を煽る経済政策の旗を振って、わざわざ社会を分断して、どうするつもりだ? そう思ったのである。感染拡大防止に逆行することや旅行業界に税金をばらまくこと以上に、政府がコロナ禍にわざわざ巨額の税金を投じて不公平感をかき立て「社会の分断」を煽ることに腹が立ったのだ。

全国一律にGOTOトラベルが中断され、「社会の分断」という懸念はひとまず収まった。そこへ浮上した「コロナ感染が落ち着いている地域に限定した補助」である。いわば、国家予算を使って一部地域の住民や業界に限定した「ミニGOTOトラベル」を復活させるというのである。これは再び不公平感をかき立て「地域間の対立」や「社会の分断」を煽る最悪の政策ではないか。

しかも、である。それを国会で十分に議論することなく、予算の「流用」で進めるとしたら、あまりにひどい。とりあえず「3000億円」で目立たぬように「流用」をはじめ、世論の批判が高まらなければ、次から次へと「流用」を広げていこうという役人たちの魂胆はミエミエではないか。

族議員や官僚はいったん手にした予算を手放さない。彼らはそれがどう使われようが、そこから自分たちの「利益」さえ生み出せればよいのである。コロナ禍で巨額の補正予算編成が決まった昨年一年間、族議員や官僚は予算のぶんどり合戦に奔走した。そこで獲得した予算を「自分たちのもの」と錯覚し、あとはさまざまな形で「流用」する。巨額の予算は中抜き業者や天下り団体に投下され、政治献金や天下りの財源に化けていく。それぞれの事業にほんとうに必要な予算の何倍もの予算が、政治献金や天下りの財源を合法的に捻出するために、無駄に使われているのだ。これが「政官業の癒着」の構造である。国会の予算審議を経て巨額の税金が「合法的」に消費される分だけ、タチが悪い。

GOTOトラベルは中断されても、手元に残った1兆2000万円を族議員や国土交通省の官僚は「自分たちのもの」と錯覚している。これは違う。余った税金は、国民の財産だ。勝手に流用しないでほしい。新年度に突入したのだから、いったん国庫に返上し、その使い道はいちから議論をやりなおして決めるべきであろう。ただでさえ、コロナ対策の予算は足りないのだ。医療にも検査にも休業補償にも莫大な予算が必要なのだ。

私は「GOTOトラベル中断で宙に浮いた1兆2000億円の行方」に世論の関心が高まることを願ってやまない。国民的関心を呼んだGOTOトラベルの「余剰予算」をめぐる議論が沸騰すれば、税金の使い道をみんなで監視する文化がこの国に根づく絶好の機会になるだろう。そして、この巨額の税金を族議員や国土交通省の官僚から国民みんなの手に取り戻すことができれば、日本の民主主義はさらに一歩進化すると思うのである。

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