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新聞記者やめます。あと17日!【「正社員」であることが「唯一まともな社会保障」である国〜「会社」ではなく「個人」を守る直接支援を!】

長引くコロナ禍、日本政府の無為無策が招いた緊急事態宣言のあおりで、ついに雇い止めになったという話を頻繁に耳にするようになった。大型連休中に配信されたYahoo!ニュース・NEWSポストセブン『リクエストが鳴らない20代のウーバー配達員「コロナは潮時を教えてくれた」』は、いまの雇用状況をよく映し出している。

この記事に登場するのは、東京・秋葉原で仕事を待つ20代のウーバーイーツの新米配達員だ。地方の私立大学を卒業した後に就職した会社を数年で辞め、カラオケ店や居酒屋でアルバイトを続けてきた。月に20万円以上は稼いでいたという。ところがコロナ禍の昨年、アルバイトは「社員でまわすから」という理由でクビに。「まさかコロナになるなんて、こんなに長引くなんて思いもしませんでした。これなら(新卒で入った)会社を辞めなきゃよかった」と嘆く。

コロナ前の日本社会はたしかに非正規労働者の「売り手市場」だった。とくに若者は少子高齢化の日本社会で求人が多く、バイト先は選び放題だった。ところがコロナ禍で労働市場は急変。飲食や小売を中心に非正規を切って正規を守る動きが相次いでいる。

この記事のなかで「会社にしがみつくように」と訴える筆者の主張が生々しい。以下、引用したい。

筆者は昨年から取材や交友のたび正社員の方に「絶対に辞めてはいけませんよ、死んでもしがみついてください」と忠告している。コロナ禍の理不尽な出社やクライアント対応、不機嫌な会社と人間関係に辟易しているサラリーマンは多いだろうが、特殊な能力で糧を得ている者や代々の資産家ならともかく、何であれ一定金額が降ってくる身というのは先行き不透明な疫禍において絶対に手放してはならない地位だ。あえて地位と言わせてもらったが、日本における一般市民にとっての唯一まともな社会保障こそ「正社員」である。まともな社会保障を手放してはならない。

コロナ禍のなかで新聞社に退職届を出した私にとっても他人事ではない。「不機嫌な会社と人間関係に辟易しているサラリーマンは多いだろうが、特殊な能力で糧を得ている者や代々の資産家ならともかく、何であれ一定金額が降ってくる身というのは先行き不透明な疫禍において絶対に手放してはならない地位だ」というくだりなど、読み飛ばすことのできない吸引力がある。私だって「特殊能力」で糧を得ているわけでも「資産家」でもない一人だ。

ああ、これはたいへんなことになった。

正社員であることが「唯一まともな社会保障」という世の中は、なんと歪んでいることか。仕事が面白くなくても「正社員」にしがみついていることが「賢い生き方」となる。そんなことだから、会社は風通しが悪く、新しいアイデアもイノベーションも生まれてこない。日本社会が衰退し「二流国」に転落した大きな要因は、「正社員」と「非正規」の格差があまりに大きく、「我慢して組織にとどまる」ことが経済的にもっとも賢明な選択となり、新しいことにチャレンジする機運を失ってしまったことだ。

コロナ禍で「ステイホーム」を叫ぶことができるのは、資産や安定収入があり雇用環境にも家庭環境にも恵まれた人々なのであろう。自宅に閉じこもっていては暮らしていけない人々は、家から外に出て、必死で糧を探すほかない。そういう人々に対する政府の救済はあまりにも少ない。この国の救済策はほとんどすべて「会社」に対するものなのだ。

政治家は私たちの税金を元手に「会社」を支援して政治献金をゲットし、官僚は「会社」を支援して天下り先をゲットしてきた。だからこそ、コロナのような社会危機においてもひとりひとりの「個人」ではなく「会社」を支援する政策メニューしか出てこないのだ。

このコロナ禍で国家がすべての個人を対象に直接支援したのは、昨年の一度きりの「現金10万円」だけではないか(それも世帯ごとの申請であったため、さまざまな家庭事情で本当に困窮している人々に確実に届いた保証はない)。

会社をいくら支援しても非正規ら末端の労働者には行き届かない。先の記事に登場するウーバーイーツの新米配達員も、アルバイト先から休業手当をもらっていなかった。労働者に対して支払われることが前提の休業支援金・給付金を受け取りながら一円も渡さず丸パクリしている店もあるという。「あの10万円は助かりました。今回も貰えれば、家でおとなしくしてました」という彼の言葉は、今の政治の歪みをそのまま言い当てている。

会社を支援する補償金よりも個人を直接救済する現金一律給付こそ、コロナ禍で優先すべき政策である。会社よりも個人が尊重され保護される世の中になれば、この国で暮らす人々は組織の呪縛から解き放たれ、もっと自由になり、社会全体が活気を取り戻すはずだ。

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