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新聞記者やめます。あと10日!【この夏、埼玉の「ときがわ自然塾」で「政治報道」を語ります】

埼玉県ときがわ町は、都心から車で1時間あまり。電車なら東武東上線「武蔵嵐山駅」などからバスに揺られてのんびり旅だ。東京から日帰り圏内だが、都幾川の清流にはヤマメやイワナが棲み、ホタルやカワセミを見かけることもできる。「トカイナカ」である。

この町で8月7日(土)に開かれる「ときがわ自然塾」に講師として招かれた。都会の喧騒を離れた里山を訪ね、定員20人のセミナーで「政治報道」や「政治記者」の実像についてたっぷり話すつもりだ。参加された方々と少人数でゆっくり意見交換する懇親会も楽しみである。

セミナーはオンライン受講もできる。よろしければご参加ください。お申し込みは→以下のボタンから!

5月15日(土)には地域エコノミストの藻谷浩介さんが講師を務め、「コロナ」を題材にお話しされたという。8月上旬にコロナ禍が落ち着いていることを願いたい。おそらく衆議院選挙や自民党総裁選がひしめく「政治の秋」に向けて政治報道が増える時期だ。大いに語り合いたい。

私は1997年春から2年間、埼玉県民であった。浦和支局に勤務し、埼玉県政を担当していた。県庁の記者クラブに身を置き、県職員や県議らを取材する日々だった。当時はサッカー専用の埼玉スタジアム、さいたまスーパーアリーナ、埼玉高速鉄道などの超大型プロジェクトが同時進行していた。人口減社会の到来は十分に予測できたのに、自治体財政はどんどん膨張していた時代であった。私は新聞記者4〜5年生で、ひたすら大型プロジェクトを批判する記事を書いていた記憶がある。

もうひとつ、当時の埼玉発の全国ニュースは、所沢市の野菜が高濃度のダイオキシンに汚染されているというマスコミ報道によって所沢産ほうれん草などが大暴落するという事件であった。所沢市など埼玉県西部の山林には産業廃棄物処理業者が集中し、雑木林で高濃度のダイオキシンが検出され大きな社会問題となっていた。ダイオキシン関連なら何でも本紙(全国版)が食いつきてきたので、私も所沢周辺の産廃業者をずいぶんと回ったものだ。

将来世代に財政負担をつけ回す超大型プロジェクトも、環境を痛めるダイオキシン汚染も、高度経済成長が残した負の遺産である。埼玉県の人口は700万人を超す。東京、神奈川、大阪、愛知に次いで5位だ。東京に隣接しながら自然も豊かな「トカイナカ」は1990年代の「日本の歪み」が最も顕著に表れた地域といえるかもしれない。

あれから20年以上が過ぎた。私は1999年に浦和支局から東京の政治部に異動し、長く永田町の政治を取材してきた。日本はついに人口減社会に突入し、「経済成長による歪み」よりも「経済社会の衰退」に直面している。

この間、お隣の埼玉県をゆっくり訪れる機会はあまりなかった。そのなかで東武東上線沿線にある森林公園の輝きは鮮烈に覚えている。せっかく埼玉県民だったのに、大型プロジェクトやダイオキシン汚染ばかり追いかけて、こんなに豊かな自然を満喫しなかったのはもったいなかった、と後悔したのだった。

5月末に新聞社を辞め、その夏に「近くて遠かった」埼玉を訪れる。自然豊かなときがわ町で政治を語る。う〜ん、楽しみな仕事だ。

さいごに私が「ときがわ自然塾」に寄せたセミナーの紹介文を掲載したい。こんな話をしようと思っている。

政治記者はきちんと仕事をしているのか?

コロナ禍になって「この国の政治はどうなってんだ!」と思った方はたくさんいると思います。そして「この国の政治」を伝える政治記者たちの姿をみて「ちゃんと仕事してるのか」と疑問に思った方も多いでしょう。

なぜ記者会見できちんと質問しないんだ?
なぜ政治家にペコペコしてばかりしてるんだ?
オフレコ懇談会って何だ?
総理大臣とパンケーキを食べて、いったい何をしているんだ?

何を隠そう、私はその評判の悪い「政治記者」のひとりです。

朝日新聞社の政治部に20年以上前に着任し、ずっと「永田町」を取材してきました。与党も野党もたくさんの政治家を担当し、彼らと「オフレコ会食」を重ね、長い時間をともに過ごしてきました。福島原発事故が発生した時は政治部デスクを務め、民主党政権の取材を陣頭指揮しました。「古い政治取材」の現場にどっぷり浸かってきた人間です。

政治取材のあり方には見直すべき点が多々あります。でも、私はそうした政治取材のすべてが悪いとは思っていません。なぜなら、政治家を監視し、政治家を厳しく批判するためには、まずは政治家を知ること、政治家に肉薄することが絶対に必要だからです。

いま、政治記者に対する世の中の不信感が膨らんでいるのは、「政治家に近づきすぎているから」ではなく、「政治家に近づいて得た情報を読者にきちんと伝えていないから」だと思うのです。「政治取材」以上に悪いのは「政治報道」の中身です。

私はことし5月末、コロナ禍のさなかに49歳で朝日新聞社を退社します。いまの新聞報道、政治報道のあり方に限界を感じたからです。自由になった立場から、いまいちど政治報道に取り組みたいと思ったのでした。

政治記者は常日頃何をしているのか?
政治家をどのように取材しているのか?
政治記事はどのようにして作られているのか?
政治報道をどのように変えていけばよいのか?

私は「この国の政治」が緊張感を失い、堕落してしまった大きな責任は「政治報道」にあると思っています。「政治報道」の改革は、まったなしです。

今回のセミナーでは、長く新聞社の政治部に身を置いた立場から「政治記者の実像」を洗いざらいに打ち明け、何が悪いのかを整理し、「新しい政治報道」のかたちを皆さんとともに考えたいと思います。

ことしは与野党が激突する衆議院選挙があります。自民党総裁選挙もあります。私たち主権者がコロナ禍でたまりにたまった「政治への不満」を「一票」で表明する年です。

いまいちど「政治とは何か」「政治報道とはどうあるべきか」を自然豊かなときがわ町で一緒に考え、話し合いましょう!

自然豊かなときがわ町でお会いすることを楽しみにしています。オンライン受講もできます。お申し込みは以下のボタンから!

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