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岸田首相に「今すぐ解散を!」と迫るのではなく「今は解散しないで」と泣きつくしかない立憲民主党の窮状

岸田内閣の支持率が上昇して不支持率を7ヶ月ぶりに超えた(NHK世論調査)。永田町では岸田首相が早期解散・総選挙に踏み切るのではないかという観測が急速に広がっている。

野党第一党の立憲民主党の支持率は低迷し、野党第二党の日本維新の会との選挙協力は進みそうになく、共産党やれいわ新選組との野党共闘も崩壊しつつある。岸田内閣の支持率が不支持率を上回った今、電撃的に衆院解散に踏み切れば自民党が負けることはなく、今のうちに衆院選をやってしまおうという政局分析は的確であろう。

「野党はバラバラ」を象徴するのが、自民党議員が政治資金問題で辞任したことに伴う4月の衆院千葉5区補選だ。本来なら自民批判が高まって野党優位なはずだが、立憲、維新、国民、共産がそれぞれ独自候補を擁立し、自民新人(元国連職員の女性)の前に共倒れしそうな状況である。今解散総選挙に突入すれば、千葉5区補選と同様の光景が全国でみられるに違いない。野党陣営は選挙戦に突入する前から総崩れになる恐れがある。

そうしたなかで立憲民主党の安住淳国会対策委員長が「いきなり解散をやったら、よほどの党利党略ではないか。大義がない解散は今までほとんどない」と発言し、岸田首相を牽制した(こちら参照)。

首相が有利なタイミングで解散権を行使することには憲法上も政治倫理上も疑念が指摘されているが、過去の衆院解散のほとんどは首相が有利なタイミングを見計らって断行したものである。政治学者や言論人が早期解散論を批判するのはまだしも、当事者である野党幹部が早期解散に反対するのは「今解散されたら勝てない」と自白するようなもので、自民党から舐められるだけだ。

野党第一党は本来、政権交代の旗印を掲げ、常に「国民の信を問え」と衆院解散を迫らなければならない。いつでも衆院選に臨めるように臨戦体制を整えておくことが野党第一党の最大の使命といってもよい。

ところが、立憲の泉健太代表は次の衆院選での政権交代は難しいと公言している。戦う前から衆院選に勝って政権を奪うことを諦めているのだ。

立憲はそれほど選挙準備が整わず、選挙戦略(野党共闘のあり方を含む)も描けていないということである。安住氏の発言は「今解散したら惨敗だ」という危機感の現れであろう。野党第一党の責任放棄である。

マスコミや政治家はしばしば「解散に追い込む」という言葉を使う。しかしこれは論理矛盾だ。首相が追い込まれて不利なタイミングで解散を打つはずがない。追い込まれれば衆院解散ではなく内閣総辞職をして首相の首をすげ替え、それから解散に打って出るのである。2021年秋の衆院選はそうだった。支持率低迷にあえぐ菅義偉首相が衆院任期満了を目前に退陣し、岸田文雄首相に交代して衆院選に臨んで大勝したのである。

つまり、野党第一党に求められる戦略は「解散に追い込む」という非現実的なことではなく、常に衆院選の臨戦体制を整え、首相に有利な政治状況をつくらせず、解散権を行使させないまま4年間の衆院任期満了まで持ち込むことなのだ。野党は衆院任期4年間で一瞬でも気を抜けば、そこを与党に狙われて解散を打たれ惨敗する。だからこそ常在戦場で備えなければならない。

任期満了が間近になれば、首相にとってどんなに不利な状況でも衆院選を行うしかない。そこで初めて与党は大敗し、政権交代が実現するのである。2009年衆院選で自民党が下野し、民主党政権が誕生したのはこのパターンだった。

ところが、今の立憲民主党はいつ解散を打たれても勝てないという情けない状況である。これでは野党第一党が政権交代を掲げ、与党にプレッシャーをかけるという二大政党政治が機能するはずがない。だからこそ自民党は政権を失う恐れがなく、安心して党内権力闘争に明け暮れ、不正・隠蔽・虚偽答弁を重ねることができるのだ。

野党を再建することが政界浄化への第一歩である。強い野党第一党をつくらなければ、自民党政治の凋落も止まらない。

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