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来春の退陣で消え去る岸田首相と、入れ替わるように浮上してきた林芳正官房長官〜宏池会トップ2の明暗くっきり、岸田派から林派への移行が始まった

岸田文雄首相がいよいよ追い込まれてきた。

自民党最大派閥・安倍派の裏金事件は、政権最大の危機であると同時に、内閣支持率をV字回復させる最後の好機だった。

岸田首相は安倍派一掃人事を断行する意向を党幹部に伝え、「安倍派成敗」で人気回復を狙う起死回生の一手を狙ったが、足元の岸田派にも検察の裏金捜査が進行しているとの報道があり、安倍派ばかりか党内全体に「なぜ安倍派だけなのか」と慎重論が広がり、一掃人事は撤回に追い込まれた。

さらに安倍派事務総長を務めていたことから捜査線上に浮上した松野博一官房長官を更迭し、その後任人事を無派閥の浜田靖一元防衛相に打診されたが固辞され、求心力の低下をさらけ出した。

岸田首相が12月13日に行った国会閉幕の記者会見は、沈鬱なムードに包まれ、時折言葉に詰まり、今にも泣き出すのではないかと思われる異例の首相会見だった。

そこまで追い込まれた背景には、さまざまな出来事があったのだろう。岸田派に対する検察捜査をめぐっても政権中枢でさまざまな駆け引きがあったに違いない。

私は、岸田首相がこの日、裏金事件をめぐる一連の政局に敗北したことを自覚し、来春の予算成立と訪米を花道に退陣する大きな方向性を受け入れるほかないと観念し、感極まったのではないかとみている。

岸田首相と入れ替わるように浮上してきたのは、官房長官に就任した岸田派ナンバー2の林芳正氏だ。

林氏は9月の内閣改造で外相を外されたばかり。ハーバード大留学仕込みの英語は堪能で米政界に人脈がある一方、日中友好議員連盟会長も務めた親中派としても知られ、華やかな外交を展開していた。

これに対し、首脳外交を重視する岸田首相は嫉妬していたようだ。さらに林氏がポスト岸田候補に浮上してきたことから警戒感を強め、外相更迭に踏み切った。後任に同じ岸田派でも軽量級の上川陽子氏を起用したのも自らの首脳外交を打ち消さないという安心感があったからだろう。

ところが、浜田氏に官房長官就任を固辞されたことが岸田首相を追い込んだ。次の打診も拒否されたら一気に内閣総辞職に追い込まれかねない。それを避けるには身内の岸田派から起用するほかなく、林氏に就任を要請するほかなかった。

落ち目の岸田首相に対し、林氏は内閣の要に就任し、岸田派内でも霞が関でも一気に求心力を高めるだろう。今後は政治家も官僚も、先の長くない岸田首相よりもポスト岸田候補に浮上してきた林官房長官の意向に神経を尖らせるようになるに違いない。

岸田首相は退陣後は岸田派会長に復帰し、キングメーカーとして影響力を残すつもりだったが、国民人気も党内求心力もここまで下がった以上、退陣後は急速に存在感を失い、岸田派は着実に林派へ移行していく可能性が高い。
林氏の強みは、東大・ハーバード大の学歴を共有する茂木敏充幹事長と氏と相性がいいことだ。岸田首相は茂木氏にも警戒感を抱き、何度も幹事長交代を画策したが、麻生太郎副総裁に反対されてきた経緯がある。だが、林氏が派閥会長を受け継げば、茂木派との関係は良好となり、茂木ー林体制が確立するかもしれない。

岸田派関係者は「茂木政権が誕生すれば、林氏が幹事長に就任し、ボロボロになった清和会(安倍派)を外して経世会(茂木派)・宏池会(岸田派→林派?)の黄金時代が復活する」と早くも展望する。

一方、林氏は麻生氏の天敵である古賀誠元幹事長と近く、麻生氏には警戒されている。麻生氏が林氏を幹事長など要職で起用することに抵抗する可能性は十分にある。

最大派閥の安倍派が壊滅し、岸田首相もレームダック化するなかで、今後は、キングメーカーの麻生副総裁、茂木幹事長、林官房長官の3者関係が政局を動かす軸となろう。

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