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広島サミット反対デモの参加者を地面に押さえつけた機動隊の動画を報じる英BBCと、岸田政権が演出する「平和サミット」を垂れ流す日本マスコミ

G7サミットが開かれた広島市内で、機動隊がサミットに反対するデモ隊を抑圧し、デモ参加者を激しく地面に押さえつける動画を英BBCが報じた。

ネットを飛び交う動画をみる限りは、デモ参加者はとくに危険な行動をとっていないのに、重装備の機動隊員が一方的に小競り合いを仕掛け、最後は実力行使に及んだように見える。中国当局が香港で民衆を弾圧する場面かと見違えるような光景だ。人権後進国ニッポンの姿を世界にさらけ出したといっていい。

デモは日本国憲法で保障された政治活動の自由である。機動隊の対応は基本的人権の侵害にあたる可能性がある。権力監視の責務を担うメディアとして警察の行動に目を光らせ、不正や過剰とみられる対応があった場合は、ためらうことなく報じるのは当然だ。

ところが、英BBCは日本の警察のデモ抑圧を報じているのに、日本のマスコミ各社はほとんど報じていない。日本のジャーナリズム崩壊を象徴する出来事といえよう。

ジャニーズ事務所の性加害疑惑も日本のマスコミは黙殺しつづけた。英BBCが報じて国際ニュースとなり、ジャニーズ事務所が謝罪に追い込まれて、ようやく報道を始めるという情けない姿を露呈したばかりである。

警察による広島サミット反対デモの抑圧でも、日本のマスコミが国家権力にべったりで、権力監視機能をまったく果たしていない実態が改めて浮き彫りになった。

外務省が用意したメディアセンターにはマスコミ各社の記者が殺到していたのに、目と鼻の先で起きたデモ弾圧を黙殺するのは、もはやジャーナリスト失格というほかない。

社会部記者はなぜ、警察庁長官や広島県警本部長を記者会見に引っ張り出して説明を求めないのか。

政治部記者はなぜ、岸田文雄首相が平和記念公園で行ったサミット後の記者会見で警察の対応を直接追及しないのか。「警察が広島市内の路上で平和を訴える民衆デモを弾圧しているのに、警察に守られたリゾートホテル内でG7首脳が平和を訴えても、説得力がない。平和を通じて守るべき究極の価値は、基本的人権ではないのか」と問いただす必要があったのではないか。情けない限りだ。

2023年世界報道自由度ランキングで日本は68位。G7で最下位なのはもとより、韓国や台湾も大きく下回る評価を受けたのも納得がいく。今やこの国は民主主義の後進国に転落したのである。

訪韓した際にソウルで大統領批判デモと遭遇し、警察の対応が日本とまるで違ったという感想を発信するツイートを見つけた。民主主義や法治主義、報道の成熟さにおいて、日本は韓国に追い抜かれてしまったというほかない。

警察によるデモ抑圧を報じないマスコミ各社が、岸田首相が「歴史的なサミットだ」「G7首脳が平和を願って原爆慰霊碑に献花した平和サミットだ」と自画自賛するままに広島サミットを称賛しているのは、いわば当然の結果だろう。日本メディアはいつのまに「国家の味方・庶民の敵」になったのか。

大本営発表を垂れ流すマスコミ報道の結果として、日本世論は広島サミットを高く評価し、内閣支持率は急上昇している。自民党内では早期解散論が強まり、日本の政治は大きく歪みつつある。「政治不信」のかなりの要因は「政治報道不信」にあるといっていい。

岸田首相が広島サミットを「核なき世界の理想へ踏み出した歴史的サミット」と自画自賛するのは欺瞞である。このサミットは世界から見ると、戦闘機供与を求めるウクライナのゼレンスキー大統領を招待し、G7が結束して対ロシア戦争を後押しする「軍事同盟サミット」「武器供与サミット」なのである。

ウクライナに一方的に加担して軍事支援を強化するG7を冷ややかに眺め、中立的立場から停戦を訴える圧倒的多くの国々とG7との溝は深まるばかりだ。世界人口ではG7は1〜2割に満たない。GDP規模でももはやG7だけでは多数派を形成できないという現実を直視すべきであろう。

その実相を伝えずに、岸田政権が演出するサミット像を垂れ流すのは、国家権力に加担したフェイクニュースである。マスコミは「ネットにはフェイクニュースが溢れている」と言うが、匿名アカウントがネットに流すフェイクニュースよりも、大手メディアが国家に加担して真顔で国策を後押しするフェイクニュースの罪のほうが遥かに重い。


あらためて広島サミットが「平和」より「軍事支援」を優先したものであることを指摘したうえ、その実相を日本のマスコミが報じない理由を簡潔に解説した5分動画を作成した。ぜひご覧ください。

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