高市政権と日本維新の会の関係が、新たな局面を迎えている。
焦点となっているのは、衆院定数削減、副首都構想、日本国旗損壊罪という、いわゆる「維新3法案」だ。
高市早苗首相と維新の吉村洋文代表が3月の党首会談で、今国会成立を目指すことを確認した重要法案だが、ここにきて、麻生太郎副総裁が牛耳る自民党内や、麻生氏に近い国民民主党から異論が噴出している。
表向きは政策論争に見える。しかし、その背後で進んでいるのは、高市首相と麻生副総裁の主導権争いだ。
維新3法案は、単なる法案審議ではなく、政権の権力構造そのものを映し出す鏡になりつつある。
まず最大の焦点は、衆院定数の1割削減法案である。
議員定数削減は維新の結党以来の看板政策だ。自民党との連立に踏み切る際、支持者に対して「身を切る改革を実現するためだ」と説明するための象徴的な政策でもあった。
当初、自民・維新両党は小選挙区25、比例代表20の計45議席を削減する法案を提出した。しかし当時は与党が衆参両院で過半数を持たず、成立の見通しはなかった。その後、高市首相が衆院解散に打って出て圧勝し、衆院で圧倒的多数を確保したことで状況は一変する。
維新はさらに踏み込み、「比例代表のみ45議席削減」を求めるようになった。
ここに大きな政治的意味がある。維新は大阪を中心に小選挙区で強く、比例依存度は比較的低い。一方で国民民主党や参政党、れいわ新選組、日本共産党などは比例代表への依存度が高い。比例削減は維新に有利であり、他の野党には不利に働く。
維新としては連立の成果を示したい。一方、自民党内では「そこまで維新に譲歩する必要があるのか」という不満が広がり始めている。
その象徴が萩生田光一幹事長代行の発言だった。
萩生田氏は記者会見で、維新が求める比例45削減案について「半年前に提出した法案を安易に変えるのはいかがか」と疑問を呈した。
単なる意見表明ではない。萩生田氏は党執行部の一員であり、さらに高市首相と麻生副総裁の関係修復に尽力した人物でもある。その萩生田氏が維新の看板政策に異議を唱えたことは、自民党内の空気の変化を示している。
高市首相が主導してきた維新との連携よりも、党内基盤を重視する流れが強まっているということだ。
もう一つの火種が、副首都構想である。
維新にとって大阪の副首都化は長年の悲願だ。単なる名称の問題ではない。首都機能の一部移転や大型インフラ投資などを通じて、大阪経済の発展につなげる狙いがある。
維新は二度にわたり大阪都構想の住民投票に挑戦したが、いずれも否決された。吉村代表はなおも三度目の挑戦を模索している。
今回の副首都構想法案には、住民投票の対象地域を大阪市だけでなく大阪府全域へ広げることができる仕組みが盛り込まれている。大阪市内では反対論が根強い一方、大阪府全体では賛成票が増える可能性があるためだ。
さらに、副首都担当大臣の新設も盛り込まれている。維新側から閣僚を送り込む布石との見方もある。
しかし、これに強く反発しているのが大阪自民党だ。
大阪府連会長の松川るい参院議員は、「大阪市のことを大阪府民が決めるのは憲法違反だ」と厳しく批判した。
大阪自民は長年、維新との激しい対立を続けてきた。高市政権発足後は連立関係に配慮して表立った批判を控えていたが、ここにきて再び反撃に転じ始めたのである。
そして三つ目が、日本国旗損壊罪だ。
これは高市首相自身が強く推進してきた法案であり、自公連立時代には実現できなかった保守色の強い政策の一つである。
ところが意外にも異議を唱えたのは、国民民主党の玉木雄一郎代表だった。
玉木氏は国旗保護の考え方自体には理解を示しながらも、「何が処罰対象になるのか曖昧だ」「表現の自由との関係が整理されていない」など法技術上の問題を指摘し、慎重姿勢を示した。
この発言も単なる法律論では片付けられない。
現在、永田町では国民民主党を連立政権に加える構想が再び取り沙汰されている。実現すれば、自民党内で強い影響力を持つ麻生副総裁と国民民主党との関係はさらに深まり、高市首相の相対的な立場は弱くなる。
高市首相が維新との連携強化を図るのに対し、玉木氏は自民・維新関係に一定の距離を置こうとしている。その意味で国旗損壊罪への異論も、政局上のメッセージとして読むことができる。
現在の高市政権は、自民党が強く、官邸が弱い「党高政低」の色彩を強めている。
麻生氏を頂点とする議員連盟「国力研究会」には、自民党所属議員の大半が参加し、党内基盤の強さを誇示している。一方で高市首相は、維新との連携を梃子に政権運営の主導権を確保しようとしてきた。
その象徴が維新3法案だった。
もし今国会で成立すれば、高市首相は維新との連携成果を示し、求心力を維持できるだろう。逆に頓挫すれば、「高市首相は連立相手との約束も実現できない」という評価が広がりかねない。
維新3法案をめぐる攻防は、政策論争であると同時に、高市首相と麻生副総裁の主導権争いでもある。
その結果は、今後の連立再編や政権運営の方向性を左右する重要な分岐点となりそうだ。