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食料品の消費税ゼロは消えるのか――高市包囲網と財務省の反撃

食料品の消費税を2年間ゼロにする――。

2026年2月の衆院選で、自民党と維新が掲げた看板公約が、わずか数か月で重大な岐路に立たされている。

焦点となっているのは、来年4月から実施予定の食料品減税を「0%」にするのか、それとも「1%」にするのかという問題だ。

一見すると1ポイントの差に過ぎない。しかし永田町では、この1%をめぐる攻防の背後に、高市早苗首相と麻生太郎副総裁、さらには財務省を巻き込んだ大きな権力闘争が存在するとみられている。

表向きの争点は「レジ改修」である。だが本当の争点は、誰が政権の主導権を握るのかという問題なのかもしれない。

政府・与党内では現在、2027年4月から食料品減税を実施する方向で調整が進んでいる。

ところが、ここにきて急浮上したのが「0%より1%のほうが現実的だ」という議論だ。

その理由として挙げられているのが、レジや会計システムの改修期間である。業界関係者へのヒアリングによれば、税率を1%に変更する場合は半年程度で対応可能だが、0%にする場合は約1年かかるという。

そのため、「まずは早く減税を実施することを優先し、税率は1%にすべきだ」という意見が政府・与党内で強まっている。

しかし、この説明に疑問を抱く向きも少なくない。

そもそもレジ改修に時間がかかることは選挙前から予想できた話である。2月の総選挙で圧勝した時点で準備を始めていれば、来年4月の実施に間に合った可能性もある。

そのため、「レジ問題は技術的な課題というより、政治的な時間稼ぎではないか」という見方も浮上している。

もっとも、世論の空気は徐々に変わり始めている。

最近の世論調査では、「0%にこだわるよりも早く減税してほしい」という回答が増えている。物価高に苦しむ有権者にとって、理念よりもスピードを優先する心理が強まっているのだ。

結果として、「0%より1%」という議論は次第に支持を広げつつある。

この流れを最も歓迎しているのが財務省である。

選挙後に設置された「社会保障国民会議」は、表向きには社会保障財源や税制のあり方を議論する場だ。しかし政界では、この会議が消費税減税のペースをコントロールするための装置になっているとの見方がある。

会議の事務局を担うのは官僚機構であり、実務を仕切るのは財務省だ。

さらに法改正の日程も、財務省に有利な形で組まれている。

仮に税率を1%とするなら秋の臨時国会で法改正が可能だ。一方、0%を実現するには今国会を大幅延長しなければ間に合わない。

つまりスケジュールを握る側が、実質的に政策の方向性を左右できる構図になっているのである。

こうした中で注目されるのが、高市首相と麻生副総裁の関係だ。

高市政権誕生の最大の功労者は麻生氏だった。

しかし高市氏は就任後、麻生氏への依存から脱却しようと動いた。1月の電撃解散もその一つだった。さらに総選挙では食料品ゼロ%を公約に掲げ、自らの政治色を打ち出した。

これに対し麻生氏は巻き返しを図る。

5月には自民党内に巨大議連「国力研究会」が発足。党内の大半を取り込む巨大勢力となり、政権運営の重心は官邸から党本部へ移った。

その結果、現在の自民党内では「高市対麻生」という構図が再び鮮明になっている。

高市首相が0%維持を主張する一方、麻生氏や党執行部、そして財務省は1%案を後押ししているとされる。

この争いは単なる税率論争ではない。

高市氏にとって消費税ゼロは政権の看板政策であり、積極財政路線の象徴でもある。

もしここで公約を撤回すれば、「財務省に屈した」という印象が広がりかねない。高市政権の支持基盤は党内ではなく世論にあるだけに、支持率低下は致命傷になり得る。

一方、麻生氏にとっては党内支配を完成させる絶好の機会だ。

消費税問題で高市氏を譲歩させることができれば、「最終的な決定権は官邸ではなく党にある」というメッセージを党内に示すことができる。

財務省にとっても利益は大きい。

減税論が広がる中で、「0%ではなく1%が現実的」という前例を作れば、将来的な消費税廃止論や大幅減税論を封じ込めることにつながる。

問題は、高市首相に反撃の余地が残されているかどうかだ。

0%実現には国会の大幅延長が必要になる。しかし国会運営を握る党執行部は必ずしも高市氏に協力的ではない。

さらに最近では、自民党国対との関係改善も進み、高市氏が党執行部と正面衝突する環境は整っていない。

それでも高市氏が公約実現を最優先するならば、党内の反対を押し切ってでも国会延長に踏み切る必要がある。

逆にそれができなければ、秋の党役員・内閣人事は麻生主導となり、高市政権の求心力は大きく低下するだろう。

食料品の消費税を0%にするのか、1%にするのか。

数字の差はわずか1ポイントだ。

しかし永田町では、この1ポイントの差の中に、「高市主導の政権運営を続けるのか、それとも麻生・財務省主導の体制へ移行するのか」という、はるかに大きな政治的意味が込められている。

消費税論争の行方は、単なる税制論争を超え、高市政権の命運そのものを左右する局面へと入りつつある。