政局は夏に動き、秋に人事が固まる。
永田町では、そんな季節感がある。昨年は石破政権が参院選惨敗を受けて揺らぎ、一昨年は岸田首相が8月に総裁選不出馬を表明した。今年は高市政権の番である。
7月に急落した内閣支持率は、8月に入って下げ止まりの兆しを見せ始めた。ここで注目したいのは、その最大の要因が消費税減税ではないかということだ。
高市首相は当初、食料品の消費税をゼロにする構想を掲げていた。しかし、自民党内の反対や財源論などから、最終的には2年間に限って1%に引き下げる方向へと修正した。
「たった1%、しかも2年間」と見れば、決して大きな減税ではない。
ところが、世論の反応は単純ではない。
若い世代ほど高市政権を支持している。直近のFNN世論調査では、29歳以下の支持率が8割を超える一方、70歳以上では5割を下回った。高市人気には、明確な世代差が生まれている。
さらに食料品の消費税減税をめぐっても、世論は割れている。
ここが重要だ。
減税そのものに反対する人がいる一方、「2年後に元へ戻す」という期限付き減税に反対する人もいるからだ。
つまり、減税反対の緊縮財政派と、「どうせ2年後に増税するのなら意味がない」という積極財政派が、同じ「減税反対」という数字の中に混在している。
高市政権にとって、これはむしろチャンスなのかもしれない。
消費税減税によって支持率の下落に歯止めがかかったのなら、次に問われるのは、その政策を一過性の人気取りで終わらせるのか、それとも政権の基本路線にするのかである。
その答えが出るのが、秋の内閣改造・自民党役員人事ではないか。
高市首相が本気で積極財政を進めるのであれば、人事も変わるはずだ。
そこで浮上するのが、積極財政派の急先鋒である世耕弘成氏である。
世耕氏を官房長官に起用する。
この人事が実現すれば、単なるポストの付け替えではない。政権の政策路線を示す強烈なメッセージになる。
官房長官は、政府のスポークスマンであると同時に、各省庁を束ね、首相官邸を動かす中枢だ。そこに積極財政を唱える世耕氏を置けば、「高市政権は減税・積極財政路線をさらに進める」という意思表示になる。
さらに注目したいのが財務相人事だ。
候補として考えられるのが、高市減税に明確な賛意を示していた西村康稔氏である。
もちろん人事は最後まで分からない。しかし、もし世耕氏を官房長官、西村氏を財務相とするような布陣が組まれれば、高市政権はかなり明確に「積極財政型」へと舵を切ったと見ることができる。
ここで初めて、これまで繰り返し語られてきた「高市と麻生」の権力関係にも、新しい意味が生まれる。
焦点は「高市が麻生を切るか」ではない。
むしろ、高市が自分自身の政策を実行できる政権を作れるかどうかだ。
キングメーカーの意向を無視して人事を行うことができるのか。財務省を中心とする緊縮財政派の抵抗を押し切れるのか。そして、自ら掲げた減税を、単発の選挙対策ではなく、政権の看板政策として定着させられるのか。
この意味で、今年の夏は高市首相にとって重要な時間になる。
高市首相は、総理恒例の夏の外遊をほぼ見送った。8月の外遊予定はなく、9月も国連総会が中心となる。
熊本地震への対応など、当然の理由はあるだろう。
しかし、政局という観点から見ると、もう一つの見方もできる。
総理が国内を離れている間に、政局が動く。
過去2年、夏から秋にかけて首相の進退をめぐる動きが激しくなった。今年も同じ展開になることを警戒しているのか。それとも、外遊よりも秋の人事に神経を集中させているのか。
高市首相にとって、この夏は「反撃の夏」になる可能性がある。
6月の支持率急落で一時は高市おろしの観測まで出た。しかし、消費減税によって若者を中心とする支持が戻り、支持率も下げ止まった。
ならば次は、人事である。
「減税をやる高市政権」を支える人事を組めるかどうか。
その象徴が、世耕官房長官であり、西村財務相なのではないか。
秋の内閣改造は、単なる顔ぶれの入れ替えではない。
高市首相が、自らの政権を本当に「減税・積極財政型」へ転換できるのか。その覚悟と力量が問われる人事になる。
高市首相はいま、秋の人事でどんな政権を描いているのか。
政局の夏は、すでに過熱しているのだ。