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岸田内閣の閣僚辞任ドミノが止まらない〜寺田総務相の呆れる答弁にみる深刻なモラル崩壊

岸田内閣の閣僚辞任ドミノが止まらない。山際大志郎・経済再生担当相、葉梨康弘法相に続いて更迭に追い込まれそうなのは寺田稔総務相だ。

寺田総務相は政治資金規正法や公職選挙法に抵触する疑惑を「文春砲」に次々に指摘され、国会で連日追及されている。統一教会との関係について「記憶にない」と繰り返した山際氏の「後釜」として野党やマスコミのターゲットになり、自民党内からも辞任論が高まった。

岸田首相が立憲民主党に急接近した結果、自民党内では岸田首相への反発が広がっている。岸田派の葉梨法相が死刑制度に関する失言をした直後から自民党内で批判が噴出したのは、岸田包囲網が急速に広がっていることを浮き彫りにした。同じく岸田派の寺田総務相が更迭に追い込まれるのは避けられない情勢だ。

寺田総務相は岸田首相が東南アジア訪問中の一週間、与野党からの批判を浴びながらも耐えに耐えた。しかし国会や記者会見での答弁は日々、苦しさを増した。もはや限界だろう。

岸田首相は、立憲と統一教会の被害者救済法案で合意する局面まで寺田総務相を続投させ、立憲と手を握る最終局面の「捧げ物」として寺田総務相の首を差し出す予定だったのだろう。だが、与野党から想像を超えるスピードで批判が高まり、被害者救済法案の審議入り前に更迭を前倒しするしかなくなった格好だ。

政局はいったん動き出すと加速する。岸田政権は音を立てて崩れていく。

寺田総務相は11月18日の記者会見で、自民党内からも辞任を求める声が上がっていることを聞かれ、「辞任を求める声は直接、耳にしていない。何人かの自民党関係者からは激励を受けている」と強弁。そのうえで述べた次の言葉は常軌を逸する内容だった。

「私が接する国民というのは、ほとんど地元の方々ですね。(選挙区の)皆さんから非常に激励をいただき、『よくああやって正直に説明して感心しました』という声しか私は聞いておりません」

『よくああやって正直に説明して感心しました』という声しか私は聞いておりませんーーこの開き直りぶりはもはや山際氏の「記憶にない」を超えているかもしれない。裸の王様そのものだ。

寺田氏は東大法学部を卒業して大蔵省(現・財務省)に入り、宏池会(現・岸田派)を創設した池田勇人元首相の孫娘と結婚。池田家の地盤を受け継いで政界に転身した。永田町・霞が関のエリート中のエリートであるエスタブリッシュメントだ。

それがこのような言い訳をテレビカメラの前でしてしまうのだから、この国のエリートの底の浅さがわかる。所詮はこのレベルの人物がエリート官僚として持て囃され、自民党議員として当選を重ね、大臣の椅子についているにすぎないことを露呈してしまった。

寺田氏の言動は山際氏以上に政治不信を増し、この国の権力中枢を担う面々のモラル崩壊をさらけ出したといえるのではないか。

言い逃れするにしてももうすこしマシな言い回しがかつての政界にはあった。そこが自民党の底力でもあった。いまの自民党は実に薄っぺらい。政権担当能力のかけらも感じることはできない。日本が凋落した最大の要因は長く政権に居座り続ける自民党の能力欠如にある。

寺田総務相が辞任すれば、次は同じく政治とカネの問題を抱える秋葉賢也復興相に飛び火する可能性もある。

秋葉氏はポスト岸田を狙ってこのところ岸田首相と距離を置いている茂木敏充幹事長が率いる茂木派だ。麻生派の山際氏、岸田派の葉梨氏、寺田氏に続いて茂木派の秋葉氏に注目が移るのか、それとも「弾よけ」を失った岸田首相自身への追及が強まるのか。

岸田首相の求心力は落ちに落ち、最大派閥・清和会の安倍晋三元首相を失って混迷を深め、自民党内は抗争状態に陥っている。いったんこうなると、政治家たちは自分の利益だけを考えてうごめき出す。

岸田政権の後ろ盾である麻生太郎副総裁も、老獪な二階俊博元幹事長も80歳を超え、往年の求心力はない。復権への意欲を隠さない菅義偉前首相も無役・無派閥で決定力を欠く。菅氏を後ろ盾とする河野太郎デジタル担当相にもかつての勢いはない。茂木幹事長は自派を完全掌握できておらず、パワハラ体質も指摘される。自民党はバラバラだ。

連立相手の公明党を含め、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党など野党も巻き込んだ政局の行方は極めて不透明になってきた。


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