政治を斬る!

立憲野党私設応援団(62)政権交代の可能性について考えてみる(その13)〜憲法9条変えさせないよ

※この連載はSAMEJIMA TIMESの筆者同盟に参加するハンドルネーム「憲法9条変えさせないよ」さんが執筆しています。


<目次>

0.野党による政権交代の可能性について考えてみた過去の議論の紹介

1.政権交代の可能性が見えてきた

2.週刊文春による次期衆院選「党派別獲得議席予測」

3.政権交代せずに「自維公連立政権」誕生という悪夢

4.政権交代したのに「なんちゃって救民内閣」誕生という悪夢

5.今日の結論:「維新にキャスティングボートを握らせてはいけない」

6.トピックス①:山本無双~参議院セキュリティ・クリアランス法審議~

7.トピックス②:大石無双~NHK日曜討論~


0.野党による政権交代の可能性について考えてみた過去の議論の紹介

私が連載を担当している「立憲野党私設応援団」において、過去に12回「政権交代の可能性について考えてみる」というタイトルの論考を掲載しました。

今回はその13回目の議論です。

前回までの議論を参照したい方のために、これまでの12回の記事のリンク先を載せてから、議論を始めます。

「政権交代の可能性について考えてみる(その1)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その2)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その3)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その4)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その5)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その6)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その7)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その8)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その9)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その10)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その11)」

「政権交代の可能性について考えてみる(その12)」

1.政権交代の可能性が見えてきた

4月28日に行われた東京15区、島根1区、長崎3区の衆議院補欠選挙でいずれも立憲民主党が勝利したことを受けて、世の中の機運が盛り上がり、政権交代の可能性が見えてきました。

古賀茂明さんが指摘するところによれば、今まで自民党を支えてきた自民党員の一部が選挙で野党に投票するという流れが起きていて、この流れが進むことで、政権交代の可能性が見えてきているのだというのです。

2.週刊文春による次期衆院選「党派別獲得議席予測」

2024年4月10日の『週刊文春』電子版の記事で、今の岸田内閣の下で解散総選挙が行われた場合の党派別獲得議席の予測が出ています。(4月10日時点の数字のため、4月28日に補欠選挙が行われた3つの選挙区に関しては欠員扱いとなっています。)

党派別獲得議席予測

政党名現有議席予測議席
自由民主党259186
公明党3222
立憲民主党95147
日本維新の会4162
日本共産党1010
国民民主党16
れいわ新選組10
社会民主党
NHK党
参政党
教育無償化を実現する会
日本保守党
無所属10
合計462465

出典:週刊文春2024年4月10日記事より

自民党が73議席減、公明党が10議席減で、自公合わせて208議席にとどまり、過半数の233議席を大きく下回るという、衝撃の予測数値になっています。

そこで、次期衆院選での各党の議席配分の数字がこのようなものになるとの前提に立ったうえで、実際にどのような政党の組み合わせなら政権交代が起きるのか、あるいは起きないのかについて、状況を確認していきたいと思います。

3.政権交代せずに「自維公連立政権」誕生という悪夢

「自公過半数割れ」の状況になった時に、まずそれを補完する政党として思い浮かぶのが玉木雄一郎さんの国民民主党ですが、残念ながら、「自公国連立政権」は成立しません。

「自公国連立政権」不成立

自由民主党 186議席

公明党    22議席

国民民主党  16議席

―――――――――――

合計    224議席 < 233議席

それでは、国民民主党ではなく日本維新の会が補完する場合は、どうなるでしょうか。

「自維公連立政権」誕生

自由民主党 186議席

日本維新の会 62議席

公明党    22議席

―――――――――――

合計    270議席 > 233議席

自民党と公明党に国民民主党を加えても過半数の233議席に届きませんが、自民党と公明党に日本維新の会が加わる場合には261議席を上回り「絶対安定多数」を確保できることになります。

この「自維公連立政権」が誕生した暁には、自民党内のキングメーカーが麻生太郎さんから菅義偉さんに変わるようなことがあるかもしれませんが、政権交代は実現せず、国民生活は苦しい状態が続くでしょう。

「圧倒的多数」(3分の2)にあたる310議席は確保できていないことから、「憲法改正」の可能性は遠のきますが、法律はバンバン通せることから、例えば「徴兵制」のような制度が新たに導入されるようなことがあるかもしれません。

ロシアのウクライナ侵攻を受けて、ヨーロッパでは徴兵制復活の動きが広がっており、日本でも同様の制度を、というような議論が出てきてもおかしくありません。

例えば「20歳から40歳までの国民に、2年間、自衛隊での活動を義務づける」といった制度が新たに導入され、革新・リベラル勢力が「それは『徴兵制』で、憲法違反じゃないか!」と叫べば、保守勢力が「自衛隊は軍隊ではないので、『徴兵』にはあたらない。『災害復興ボランティア』だ。」と反論するなど、安保法制の時以上に国論を二分する事態に発展することも考えられます。

もしそうなれば、40代・50代のロスジェネ・就職氷河期世代の人々の一部は、若い世代が新卒の就職活動の際に比較的恵まれた立場で過ごしたことに嫉妬して、(自分たちは年齢的に『徴兵制』の対象にはならないという理由で)「『徴兵制』ざまぁ!」などと言って若い世代の苦境を見て喜ぶというようなこともあるかもしれません。

4.政権交代したのに「なんちゃって救民内閣」誕生という悪夢

それでは、共産党が協力する形で2015年以来の悲願である「戦争法(安保法制)廃止の国民連合政府」が成立する可能性はないのか、考えてみましょう。

「国民連合政府」不成立

立憲民主党 147議席

日本共産党  10議席

れいわ新選組 10議席

社会民主党   1議席

―――――――――――

合計    168議席 < 233議席

仮に2021年衆院選の際の「野党共闘」の枠組みで結集することができたとしても、立憲民主党・日本共産党・れいわ新選組・社会民主党の4党の合計では168議席にしかならず、過半数の233議席に遠く及ばないどころか、自由民主党単独の186議席にすら負けているという状況です。

『週刊文春』が予測した議席配分の下で「政権交代」を実現するには、このような組み合わせしか考えられません。

「なんちゃって救民内閣」誕生

立憲民主党     147議席

日本維新の会     62議席

国民民主党      16議席

教育無償化を実現する会 3議席

無所属         6議席

―――――――――――――――

合計        234議席 > 233議席

この組み合わせであれば、ギリギリ過半数の233議席を超えることができます。

これに例えばれいわ新選組の10議席が加われば、合計244議席で「安定多数」を確保できるところまで与党の議席数を伸ばすことができるわけですが、この顔ぶれを見た場合、れいわ新選組の山本太郎さんがこれに加わることは非常に想定しづらいのではないかと思います。

「なんちゃって救民内閣」の具体的な閣僚の顔ぶれを予想してみます。

「なんちゃって救民内閣」主要閣僚顔ぶれ予測

内閣総理大臣:前原誠司(教育無償化を実現する会)

内閣官房長官:福山哲郎(立憲民主党)

外務大臣兼副総理:泉健太(立憲民主党)

財務大臣:玉木雄一郎(国民民主党)

国土交通大臣:馬場伸幸(日本維新の会)

立憲民主党・日本維新の会・国民民主党・教育無償化を実現する会の新しい与党4党の党首の顔ぶれを見てみると、泉健太さんも馬場伸幸さんも玉木雄一郎さんもいずれも閣僚経験はなく、前原誠司さんが唯一人だけ外務大臣と国土交通大臣を経験しているという状況ですので、結果的に「前原首班」で落ち着くのではないかというのが私の予想です。

民主党政権で官房副長官を経験している福山哲郎さんが官房長官として加わることで、「前原-福山-泉」の旧民主党の京都人脈によるトロイカ体制を構築して、ここを中心に政権を運営していく形をとるのではないでしょうか。

泉健太さんも、「首班をとるのは立憲民主党が単独で政権を獲った時のお楽しみ」ということで、野党第一党の党首として外務大臣兼副総理で初入閣できるのは、決して悪い話ではありません。

玉木雄一郎さんも、自民党の側に走ることが不可能(「自公国連立政権」は不成立)である状況を考えれば、野党政権の一角に加わって財務大臣として初入閣できるなら、十分、自尊心を満たすことができるのだろうと思います。

さて、このメンバーの中で唯一「卓袱台返し」をして自民党の側に走ることができる立場にある党の党首が馬場伸幸さんであるわけですが、維新の馬場さんにとっても、野党政権に加わって国土交通大臣として初入閣することは、決して悪い話ではありません。

もし立憲民主党の泉健太さんが首班になるなら、なかなかその内閣に加わることは難しいでしょうが、統一会派を組んでいる教育無償化を実現する会の前原さんが首班になって、そこに維新も立憲も協力するという形なら、一つの内閣の中に一緒に収まることもできるのではないでしょうか。

もしこの「なんちゃって救民内閣」が成立するなら、この中で唯一、維新だけが一種の「拒否権」を持った形で新しい政権に参加できることになるわけで、維新の要求を何でもかんでも前原総理にぶつけて、結果的にほとんどの要求を飲ませることができ、大阪万博関連の予算もお手盛りでいくらでも増やして利権の恩恵にありつくことができます。

マスコミの事前の予測では、維新が自公政権と一緒になって「自維公連立政権」を作る可能性が高いと見ているようですが、実際に選挙の結果が出て自公が過半数割れした場合には、「野党は党利党略に走らず、まとまって協力して政権交代を実現してほしい」という世論が強く湧き上がるはずで、その世論に逆らって自民党と組んで総スカンを食らうよりは、「政権交代を実現した」ということでヒーローになることを望むはずです。

維新は、前原政権と心中する必要は全くなくて、支持率が高い間は大人しく政権を支えたうえで利権にありつけばよく、支持率が下がってきたら「国民の期待に応えて政権交代の実現に協力したが、やはり『民主党政権』ではダメだった」と言って自民党の側に走ればいいわけで、いつでも「自維公連立政権」を誕生させることができ、状況に応じてフリーハンドで態度を決めることができます。

「なんちゃって救民内閣」による政治がどうなるかという点に関して言えば、意外に「教育無償化」は本当に実現できるのではないかと思います。

なぜなら、「教育無償化」は、私立の学校にとって、一種の「利権」になるからです。

官僚にとっても、天下りの可能性を広げるチャンスとなるので、「WIN-WIN」で大盤振る舞いが行われるのではないでしょうか。

また、自民党が下野することによって、「選択的夫婦別姓」は実現できることになりますので、その点においては、リベラルな考えを持つ人々が宿願を果たす、あるいは溜飲を下げるような成果をあげることができるだろうと思います。

しかし、「なんちゃって救民内閣」には心配する点もあります。

それは、「消費税の税制改革」を言い出す可能性があるのではないかということです。

例えば、こういった内容です。

消費税税制改革(案)

令和7年度:軽減税率を8%から0%に変更(インボイスは運用休止)

令和9年度:標準税率を10%から15%に変更(軽減税率は0%を維持)

令和12年度:標準税率を15%から20%に変更(軽減税率は0%を維持)

令和15年度:標準税率を20%から25%に変更(軽減税率は0%を維持)

軽減税率を現行の8%から0%に引き下げれば、低所得者に対する逆進性を一定程度緩和することができます。

また、複数税率をなくすことができれば、それを理由にインボイスの運用を休止して、個人事業主やフリーランスの人々を救うことも可能です。

まずはそのような形で飴玉を渡すというか、「国民への還元」を行ったうえで、「教育無償化の財源確保」と「ロスジェネ世代の高齢化による生活保護受給者の増加を見越した財源確保」を理由に、中長期的な「標準税率の引き上げ」を提案してくるような展開が、もしかすると有り得るのではないでしょうか。

消費税は、税率3%での導入を決めたのは自民党の竹下内閣でしたが、増税に関して言えば、税率5%への引き上げを決めたのは社会党の村山内閣(増税の実施は自民党の橋本内閣)で、税率8%や10%への引き上げを決めたのは民主党の菅内閣と野田内閣(増税の実施は自民党の安倍内閣)でした。

そういう意味では、財務省は、「野党が政権を獲った時こそ、消費税増税のチャンス!」と考えて、狙ってくるのではないでしょうか。

「教育無償化」や「消費税の軽減税率を0%に」や「インボイスは運用休止」といった政策は、表面的には前明石市長の泉房穂さんが唱える政策とほぼ同じ内容ですが、もしこれに「消費税の標準税率の引き上げ」(消費税増税)が伴うなら、「救民内閣」とは似て非なる「なんちゃって救民内閣」ということになります。

私はその悪夢を心配しています。

5.今日の結論:「維新にキャスティングボートを握らせてはいけない」

こうして見てくると、次期衆院選の結果が『週刊文春』が予測したような議席配分になってしまった場合、維新が全体のキャスティングボートを握ることになり、「政権交代」が実現するにせよ、実現しないにせよ、どちらにしても国民にとって災厄が降りかかりそうな展開が待っています。

このようなことをふまえて考えるなら、次期衆院選の目標は「自公過半数割れ」だけでは不十分で、何としても「自維公過半数割れ」の状態を作り出さない限り、本当の意味での「救民内閣」を誕生させることはできないのではないでしょうか。

6.トピックス①:山本無双~参議院セキュリティ・クリアランス法審議~

2024年4月18日の参議院内閣委員会の「経済安保新法」(セキュリティ・クリアランス法)審議で、れいわ新選組代表の山本太郎さんが質問に立ちました。

「セキュリティ・クリアランス」とは、「重要経済安保情報」へのアクセスを国が信頼性を確認した人だけに限定する目的で、各省庁の役人や民間企業の従業員に対して身体検査としての「適正評価」(スクリーニング)を行うものですが、この「適正評価」を行う対象から大臣・副大臣・政務官の政務三役がなぜか除外されているという矛盾を指摘し、2014年10月~2015年10月の時期に経済産業大臣を務めていた自民党の宮沢洋一さんが政治活動費でSMバーの費用を支出していた件について厳しく追及しました。

れいわ新選組と共産党は法案に反対したものの、自民党や立憲民主党などの賛成多数で、「経済安保新法」(セキュリティ・クリアランス法)は可決・成立しました。

7.トピックス②:大石無双~NHK日曜討論~

2024年5月12日のNHK日曜討論にれいわ新選組共同代表の大石晃子さんが出演し、「裏金問題・政治資金規正法改正」をテーマに、自民も維新もメッタ斬りにしました。

憲法9条変えさせないよ

プロ野球好きのただのオジサンが、冗談で「巨人ファーストの会」の話を「SAMEJIMA TIMES」にコメント投稿したことがきっかけで、ひょんなことから「筆者同盟」に加わることに。「憲法9条を次世代に」という一民間人の視点で、立憲野党とそれを支持するなかまたちに、叱咤激励と斬新な提案を届けます。