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新聞記者やめます。あと16日!【医師会の実像をさらけ出した「日医会長と自民議員の政治資金パーティー」】

日本医師会の中川俊男会長がコロナ感染拡大防止のための行動自粛を国民に強く訴える一方で、自らは日医の政治団体「日本医師連盟」の組織内候補である自民党の自見英子参院議員の政治資金パーティーに発起人として参加していたことが発覚した。パーティーは「まん延防止等重点措置」が適用されていた4月20日に東京都内のホテルで開かれ、約100人が参加したという。

政治家や官僚の「飲み会」が「言ってることとやってることが違う」として批判されてきたのと同様に、中川日医会長にも批判の声があがっているのは当然であろう。

指導的立場にある人間の「言動不一致」に加え、私にはもうひとつ指摘しておきたいことがある。むしろそちらの問題のほうが根深いと私は考えている。その要点は以下のツイートに示した。

行動自粛を呼びかける中川日医会長の言葉を、多くの国民は「専門家の意見」として受け止めている。「医師会」という言葉の響きには「公的な医師の集団」というイメージがあり、そのトップは「公共性の高い客観中立の専門家」と信じている人は少なくないだろう。だからこそ日医会長の発言は大きなニュースとして報じられてきたのだ。

しかし、日医の実態は「客観中立の専門家集団」ではない。有力な開業医が実権を握り、診療報酬改定などで彼らの利益を実現させる「業界団体」として、政治家や官僚にさまざまな働きかけを行ってきた。「業界」の利益を守るため、選挙では自民党を支援し、組織内候補まで擁立して自民党に肩入れしてきたのである。

中川日医会長の言動は、医師会という組織の実像を露呈した。自民党の支持勢力として立ち振る舞う人物の呼びかけを、「客観中立な専門家」の声としてすべての国民が受け入れることができるだろうか。答えはNOだ。

公的な立場から全国民に広く行動自粛を訴えたいのなら、自らの客観中立性にとりわけ注意を払わなければならない時であった。そのさなかに自民議員の政治資金パーティーに参加するというのは、本気で全国民に協力要請する気がないと受け止められても仕方がない。彼はもはや「全国民に協力を訴える」資格を失ったのだ。

選挙で与野党が激しく対立するのは当然である。国会で与野党が激しく論争するのも当然だ。それが政党政治である。だが、選挙に勝利した与党が構成する「内閣」は、すべての国民の代表である。与党支持者にも野党支持者にも選挙を棄権した人々にも責任を負うのが「内閣」なのだ。

安倍晋三氏が内閣総理大臣の時に街頭演説で自らを批判する人々を指さして「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と発言したのが重大な問題だったのは、全国民を代表すべき最高権力者の内閣総理大臣が自らの批判勢力を「こんな人たち」と公然と切り分けて敵視したからである。

政権与党が「支持勢力」と「批判勢力」を分断し、「批判勢力」を敵視することで「支持勢力」の結束を固める政治手法が近年繰り返され、社会は大きく分断された。「批判勢力」は内閣の主張にますます逆らい、耳を傾けなくなる結果、いったい何が起きたのかーー。

それがコロナ危機下で菅内閣が発した緊急事態宣言を多くの国民が聞き流す今の日本の姿である。「内閣がすべての国民を代表している」と思っていないから内閣の要請を無視するのだ。「内閣は所詮は一部の支持勢力の味方」と思っているから「自分たちは関係ない」と聞き流すのだ。「社会の分断」は内閣に対する信頼や共感を失わせ、「社会の連帯」を奪うのである。

国家的危機下で連帯できない社会はもろい。それがいまの日本である。その責任は、自分の政治基盤を固めるために社会の分断を煽った政治指導者たちにある。いまになって彼らが緊急事態宣言を無視されるのは、自業自得なのだ。

それは政治家だけではない。医師会のような公共性の強い組織は本来、社会全体の代表として振る舞うことが望まれる。だからこそ幅広い信頼や共感を集めることができるのだ。

それなのに露骨に自民党に肩入れする姿は、多くの国民の疑念を膨らませた。「日医会長が自民議員の政治資金パーティーに出席した」という事実は、医師会の実像を世の中に広く知らしめたのだった。もはや中川日医会長が何を言っても耳を傾ける人はほとんどいないだろう。それでコロナ危機下の日医会長が務まるのか。

今回の問題が発覚する直前、私はこの連載「新聞記者やめます。あと22日!【五輪利権よりも庶民の命を救え!これは政治の優先順位の問題だ】」で、医師会について以下のように言及していた。ここに再掲したい。

医師会に言いたい。「医療逼迫」を訴えるのなら、今後は「医師増員」を先頭に立って訴えるべきである。医師会は開業医の競争激化を避けるため「医師増員」に反対してきた。自民党政権は医師会の支援をあてにして「開業医を既得権」を守ってきたのだ。その結果の医師不足・医療崩壊である。しかもコロナ対応に消極的な開業医は少なくない。コロナに協力する医師が絶対的に不足しているのだ。ならば医師を増やすしかないではないか。

さらに言いたい。医師以上に不足しているのは看護師である。なぜ看護師が集まらないのか。それは医師会の支援を受ける自民党政権のもとで「医療の市場化」「看護労働の規制緩和」が急速に進み、非正規の看護師が急増したからである。医療ビジネスが拡大する一方で、看護師の労働環境は悪化したのだ。

大正生まれの私の祖母は戦後、看護現場で長く働いてきた。昭和の日本で看護師は羽振りが良かった。祖母も自由に生きていた。昭和世代の人々にはそうした印象が強いだろう。しかし、平成以降の看護現場は様変わりしている。非正規労働が常態化し、看護師の待遇はかなり劣化した。

一方、「医療の市場化」によってビジネスに成功した病院の利益は膨らんだ。医療・看護業界でも強者が利益を吸い上げ、格差が拡大した。その「勝ち組」には「利益につながらない」コロナ対策に非協力的な者が少なくない。

コロナ禍という国家危機において、私たちはいま、「看護師不足」という形のしっぺ返しを受けている。この反省をもとに看護師の労働環境を改善しなければならない。看護師の雇用環境を不安定にしてきた「医療の市場化」を見直さなければならない。医師会はその先頭に立つべきである。開業医の利益ばかり考えている時ではない。

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