5月になった。連載「新聞記者やめます」も「あと30日!」まで来た。私が新聞記者を名乗れるのは残すところ30日である。
今の日本社会で最も知られている「新聞記者」は望月衣塑子記者だろう。この連載のタイトル「新聞記者やめます」も望月記者を題材にした映画「新聞記者」がなければ思いつかなかった。独り立ちをめざす私を、望月記者はツイッターでSAMEJIMA TIMESを紹介したり、Clubhouseで一緒にトークしたり、さまざまなかたちで応援してくれている。感謝しています。
望月記者のバイタリティーあふれる行動力には感服するばかりだ。彼女が組織の枠を超えてジャーナリストが連帯する新しい時代の先頭に立っているのは間違いない。
彼女が最近力を入れているのが、スリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん=当時(33)=が今年3月、名古屋出入国在留管理局に収容中に死亡した事件である。外国人の人権を尊重しない「人権後進国ニッポン」を映し出すニュースだ。4月28日東京新聞に執筆した「スリランカ女性、死亡時の血液検査で異常な値 「点滴や入院必要だった」と医師」という特報は、密室の入管施設内で適切な医療が行われたのかを問う内容だった。
日本で暮らす外国人の人権問題は日本国内で関心を集めにくいテーマである。望月記者はそのなかで今回のスリランカ人女性の死亡事件の取材にはやくから取り組み、様々な媒体を通じて世論喚起に努めてきた。大手マスコミがとおりいっぺんの記事を流すよりも、ひとりひとりのジャーナリストが全力をあげて発信するほうが世論が動くという現実を痛感する。ジャーナリズムは「マスコミ各社の競争」から「ジャーナリスト個人の連帯」の時代へ大転換を遂げているのである。
望月記者は、国軍による市民弾圧が続くミャンマーで拘束された現地在住の日本人ジャーナリスト北角裕樹さんの早期解放を求める活動でも機敏に動いた。幅広い人脈を駆使して署名を集め、記者会見を開いて世論喚起に動くスピード感は見事だった(4月20日東京新聞)。
この件を含め、報道の自由、表現の自由を断固守る抜くためなら労を惜しまず、当事者としてその闘いの先頭に立つという彼女の姿勢は、ジャーナリストが本来最も大切にすべきものである。「客観中立」を口実に傍観的態度をとる大手マスコミ各社が失いかけている貴重なものだ。菅義偉官房長官会見にたったひとりで乗り込み、官邸から質問を何度も妨害されたのに、官邸記者クラブの政治部記者たちから傍観され突き放された実体験が、望月記者の「報道の自由」に対する強い信念と行動力を裏支えしているのは想像に難くない。
その望月記者と5月1日夜、インターネット番組「デモクラシータイムス」に一緒に出演した。山口二郎教授らとともに今後の政局の行方について意見を交わした。ぜひご覧ください。