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新聞記者やめます。あと9日!【「なぜ君は朝日新聞を辞めたのか?」6.1退職後の初仕事は大島新監督とトークイベント 】

5月末で新聞社を去る私の初仕事を、ドキュメンタリー監督の大島新さんが用意してくれた。退社の翌日、6月1日午後6時半から東京・東中野の「ポレポレ座」(ポレポレ東中野1階カフェ)で開催するトークイベントである。

大島監督は、小川淳也衆院議員を追った「なぜ君は総理大臣になれないのか」で注目を集めた。ドキュメンタリー映画としては異例の観客動員3万5000人を超え、キネマ旬報ベスト・テンの文化映画作品賞(第1位)を受賞した2020年の話題作である。

私は小川議員と香川県立高松高校の同級生で、彼が総務官僚を退職して国政に挑んだ後も、政治家と政治記者として折に触れ意見交換してきた。その縁で「なぜ君〜」の映画パンフレットに寄稿し、小川議員、大島監督、ジャーナリストの田﨑史郎氏とのスペシャルトークにも参加させていただいた。

その大島監督が「今じっくり話を聞きたい人物」を招く「ライブ配信&リアルイベント」を6月からはじめる。題して『大島新の「なぜ君」トークライブ&配信』。観客は限定30名で、2時間超の生トークを有料配信するという。

その栄えある第一回のゲストに、私を招いていただいたのだ!

ちなみに第二回のゲストは「週刊文春」編集局長の新谷学さん、第三回のゲストは共産党の参議院議員である田村智子さん。まさに「旬の人」ふたりと並んで私を紹介するプレスリリースを前に恐縮するばかりだ。

ラインナップは以下。新谷さん、田村さんに負けないようにがんばります。お申し込みは→こちらをクリック!

6月1日(火)18:30〜 「なぜ君は朝日新聞を辞めたのか?」 ゲスト:鮫島 浩(ジャーナリスト)

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7月3日(土)18:30〜 「なぜ君はスクープを連発できるのか?」 ゲスト:新谷 学(「週刊文春」編集局長)

”文春砲”の生みの親!3か月の休養処分から復活した不屈の壮絶編集者魂!

7月末〜8月初旬 「なぜ君は共産党なのか?」 ゲスト:田村 智子(日本共産党 参議院議員)

キレッキレの国会質疑で話題の「タムトモさん」にずっと訊きたかった!

「なぜ君は朝日新聞を辞めたのか?」はこの連載で綴ってきたが、大島監督の鋭い突っ込みで自分では気づかない深層心理が飛び出してしまうかもしれない。まして退社した翌日である。気分が高揚しているのは間違いない。さて、どんなトークイベントになるか。私自身も楽しみである。

実は、50歳を迎える今年、新聞社を辞めようと思うに至ったきっかけは、大島監督から「なぜ君〜」のパンフレットへの寄稿を依頼されたことだった。原稿を執筆するため、高校の同級生の小川淳也との30年来のつき合いを振り返るうちに、彼が最初の選挙で掲げた公約を思い出した。若かりし日の彼は国会議員になる前から「50歳」を政治人生の節目として掲げていたのである。

私は「50歳」をキーワードにして、以下の「同級生として、政治記者として」という原稿を大島監督に送った。およそ一年前のことだ。この執筆を経て「50歳で退社」という私の決意は固まっていったのだった。大島監督のお許しを得て、ここに再掲したい。

同級生として、政治記者として

都心でばったり再会して、かれこれ20年になる。小川淳也は高校時代に思い描いたとおり東大法学部に進学し、自治省(現・総務省)のキャリア官僚になっていた。

アンチ東京・反権力に凝り固まっていた高校時代の私は、京大法学部へ進み、朝日新聞社に入社して政治記者になっていた。

「鮫ちゃん、東大に行って一緒に日本を変えよう」

香川県立高松高校時代、小川淳也は私をそう誘った。彼の熱い語り口は歳月が流れても変わらなかった。ただ、その眼差しにはいくらか陰りがあった。官僚という立場に限界を感じているようだった。

若手官僚と駆け出しの政治記者。ふたりは折を見て、その時々の政治について意見を交わすようになった。彼は日本を変えるには自分が政治家になるしかないという思いを日増しに強めているようだった。

そんなある日、電話がかかってきた。

「大事な話があるから、今日はうちに来てくれんか」

公務員宿舎を訪ねると、同じく高松高校の同級生である奥さんがいた。高校卒業以来の再会である。そして、4歳と2歳の女の子がいた。

「ごめんよ。わざわざこんなところまできてもろうて。でも、この決断は、家族の前でしたかった。娘二人はわけがわからんかもしれんけど、それでも彼女たちの前で言いたかったんや」

小川淳也はそう切り出し、官僚を辞して衆議院選挙に挑む決意を告げたのだった。

あれから6回の衆議院選挙があった。私は衆議院が解散されるたびにできる限り時間をみつけて高松を訪れ、彼の演説を聴いた。最初の選挙は落選だった。彼のご両親に「鮫島くんとあのとき再会しなければうちの息子は官僚を続けていただろうに…」とぼやかれたこともある。

初当選後も小川淳也の「蒼さ」は変わらなかった。

自民党の古賀誠や竹中平蔵、民主党の菅直人ら手練手管の政治家に番記者としてそれなりに食い込み、政界の汚さをのぞいていた私は、彼に会うたびに、政治家という者は一般の人の想像を絶するほど権力闘争に明け暮れ、時にとんでもなく酷いことを考え実行するものであると説いたが、彼はそのたびに「陰謀論だろう」と一蹴し、嫌そうな顔をしたのだった。

彼のご両親は時折「息子は政治家に向いていないかもしれない」とこぼしていたが、私も政治記者として「こんなに蒼くては政治家として上り詰めるのは相当困難だ」と心底思ったものだ。そうしたアドバイスをしたこともあるが、彼は自分の蒼さを決して曲げなかった。

なかでも最初の選挙で「50歳を過ぎたら早期に身を引く」と公約したのは信じがたかった。「こいつ、何もわかってないな」と真面目に思った。でも、彼の眼差しはいつも真剣だった。人気取りでそう言っているのではなく、本気で言っているのだ。

案の定、野党・民主党で彼の「出世」は早くなかった。同い年の細野豪志(元民主党幹事長。京大法学部・佐藤幸治ゼミ以来の私の友人である)や高松高校の二期上である財務省出身の玉木雄一郎(現・国民民主党代表。初当選は小川より後だった)が民主党内で頭角を現すなかで、小川淳也は明らかに後塵を拝してきた。

しかし、想像を超えるスピードで流転する時代が、ついに小川淳也を求めはじめたのかもしれない。

民主党政権が誕生して崩壊し、安倍政権が誕生して不正や隠蔽が相次ぎ、そしてコロナ危機の襲来……。

この間、小川淳也は国会質疑で少しずつ存在感を示すようになった。統計不正や桜を見る会疑惑をめぐり、ほとばしる熱情を発しながら至極論理的に安倍総理大臣を追及するその姿は、多くの人々の心に強い印象を刻みはじめている。従来の政界ではともすれば浮いてしまいそうな「蒼さ」が、政界全体があまりにも堕落した今、稀少な価値として認められつつあるのではないかと、政治記者としては分析している。

なぜ君は総理大臣になれないのか――。この映画は、まさに政治とは何かを問う至高の問いである。

その問いはこれまでは確かに正しかった。しかし、時代が大きくうねるなかで、この問い自体が過去のものになることを私は政治記者として予感し、同級生として願っている。

ただし、その前に大きな関門がある。「50歳を過ぎたら早期に身を引く」という若かりし日の公約だ。

小川淳也が17年前の最初の選挙で有権者に宣言した約束を自ら振り返る場面は、この映画のクライマックスであろう。政治記者としてはこの公約を忘れるわけにはいかない。持ち前の「蒼さ」に加えて政治家としての幅を蓄えつつある小川淳也がこの関門をどう乗り越えるのか、注目したい。彼も私も来年には50歳になるのだ。

映画では小川淳也の奥さん、立派に成長したふたりの娘さん、ご両親の17年間が印象的に描かれている。彼の政治活動を傍らで長らくみてきた同級生として、ご家族の登場シーンや高松の懐かしい街並みが映る場面はとても論評できない。この部分は、この映画のもうひとつの醍醐味である。

50歳を目前に、私はこの5月末に新聞社を去る。小川淳也はこの4月、一足先に50歳になった。そして、ことし10月までに行われる7回目の衆議院選挙に挑む。

おっとっと。今回の「主役」は小川淳也ではなかった。大島監督と私である。

6月1日(火)18:30〜 「なぜ君は朝日新聞を辞めたのか?」 ゲスト:鮫島 浩(ジャーナリスト)

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