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新聞記者やめます。あと40日!【ツバメの季節がやってきた。今年は格別、ヒナの巣立ちを願う勝手な片想い】

ことしもツバメの季節がやってきた。

彼らはどこからか飛んできて、枝葉をかきあつめ、マンションの駐車場入り口の壁にへばりついている古巣をせっせと補修することからはじめる。毎年同じツバメがやってくるのか、私には見極めることができないのだが、まもなく、黄色い口を開いて所狭しと並3〜4羽のヒナたちの姿と出会える。毎年のたのしみだ。

すべてが無事に巣立つとは限らない。途中で巣から落ちるヒナがいる。その理由はわからない。駐車場入り口の壁を見上げて毎日観察していると、姿を消すのはいちばん身体が大きく元気で巣から身を乗り出してエサを待っていたヒナだったり、いちばん身体が小さく隅に追いやられていたヒナだったりする。巣の下はかたいコンクリートだ。もうすこしだけ大きな巣を作ればよいのにと、勝手な私は思ってしまう。

すべてのヒナが巣立つ年は、晴れやかな気分になる。逆に日々大きくなってきたヒナたちの姿が一斉に消えた年もあった。ほどなく生まれたばかりのヒナたちが同じ巣に姿を現し、いったい何が起きたのか、想像を張り巡らせたこともある。別の大人のツバメが夜通し巣の近くの電線に陣取り、ものすごい声をあげて鳴き続けたこともあった。ツバメたちの事情は知るよしもないが、とても厳しい世界のようだ。

いちばんの天敵はカラスである。スズメはカラスにいじめられると逃げる一方だが、ツバメは勇敢に立ち向かうことがある。その動きはきわめて俊敏だ。利口なカラスもやっかいな相手だと感じるのか、ちょっかいを出すのをやめる。

去年はコロナ禍で都内の飲食店の営業は短くなり、残飯が大幅に減ったせいか、カラスが激減した。それ自体は歓迎すべきことだったのだが、カラスを撃退するツバメの勇姿がみられなかったのはやや残念であった。

さて、今年はどうなるか。いまのところ、カラスの姿はすくない。コロナ禍の行方はツバメの暮らしも左右する。

ヒナが巣立つ時は感動的だ。勢いよく飛び立つ者、なかなか一歩を踏み出せない者、いろいろだ。その瞬間を待ち続けてじっと観察しているわけにもいかないのだが、運良く巣立ちを目撃すると、ずいぶん得をした気分になる。いちど飛び出せばもう巣には戻らないということではなさそうだ。何度か飛び立ったり、戻ったりしながら、いつのまにか巣立っていく。

夏が本格化するころには、空っぽの巣だけが残される。彼らは九州や沖縄を経て、フィリピンやベトナム、マレーシアなどの東南アジアへ羽ばたいていくらしい。あんな小さな身体で俊敏に飛行する彼らが大海原を渡るなんて想像できない。だが、彼らの試練はむしろ海に向かっ羽ばたくに至るまでの成長過程にあるようだ。元気に巣立ったとしても、東南アジアへ飛び立つまで無事に育つのは2割にも満たないという。

さあ、今年は何羽のヒナが黄色い口を開ける愛くるしい姿をみせてくれるだろうか。みんな無事に巣立つだろうか。毎年繰り返される光景なのだが、新聞社に退職届を出して独り立ちをめざす私にとって、ことしは格別な思いがある。例年以上に祈るような気持ちで巣立ちを待つことだろう。どうか一羽も巣から落ちませんように! 実に勝手な片想いであるが、ツバメさん、いつもに増して念入りに巣作りしてください!

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