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次の本命「茂木政権」の顔ぶれは東大・米国留学のエリートばかり?自民党総裁選後の布陣を大胆予測

今後の政局について、次のような予測をこれまで示してきた。

①岸田文雄首相は内閣支持率の続落で解散総選挙を断行できず、来年秋の自民党総裁選での再戦は困難。来春の予算成立後、国賓待遇の訪米を花道に退陣を表明。

②ただちに緊急の自民党総裁選が開かれ、「麻生太郎副総裁が担ぐ茂木敏充幹事長vs菅義偉前首相が担ぐ石破茂元幹事長vs安倍支持層に人気の高市早苗経済安保担当相」の三つ巴の戦いになる。

③麻生派・茂木派・岸田派の主流3派に加え、最大派閥の安倍派の多くを引き込むことに成功して、茂木氏が勝利。

④新内閣を発足させ、ただちに解散総選挙を断行(5〜6月解散、6〜7月投開票か)。

政局は一寸先は闇だし、米国やウクライナ、パレスチナなど国際情勢にも左右されるので、あくまでも現時点で想定される最も可能性が高いシナリオだが、これをベースに政局は進んでいくのではないか。

今回はさらに動きを先取りして、「茂木政権」が誕生した場合の布陣を大胆予測してみよう。

茂木氏はパワハラ体質が報じられたこともあり、人望がない。国民人気もない。知名度もイマイチだ。だから新政権発足直後の「ご祝儀相場」に乗ってただちに解散総選挙に踏み切り、来年秋の自民党総裁選を事実上の無投票で乗り切る道筋を描くだろう。つまり新政権の布陣で総選挙を戦うことになる。このため、一般的には「人気」を重視することになろう。

とはいえ、最初の人事は「総裁選の勝ち方」に大きく左右される。非主流派の菅氏が担ぐ石破氏はマスコミ世論調査の「次の首相」トップだ。緊急の総裁選は党員投票がなく、国会議員と都道府県連の票だけで勝敗が決するとはいえ、各派閥の実力者を引き込まなければ勝利は難しく、その結果としての「論功行賞」は不可欠だ。

さらに首相に就任した以上、本人のこだわりもある。東大卒でハーバード大でも学んだ茂木氏はエリート好きだ。

安倍晋三元首相がかつて「同期一番の男前は岸田文雄、一番頭がいいのは茂木敏充、そして性格が良いのが安倍晋三」と語ったのは有名な話だ。麻生氏も茂木氏を「分析能力、説明能力、記憶力、どれをとってもたいしたもん」と持ち上げ、「『性格がなあ』っていうのが皆よく言っておられたせりふだったが、最近よくなられた感じがする」と評している。

私は以上の要素を総合的に判断して、茂木政権の布陣は「東大卒」や「米国留学」の学歴エリートがズラリと並ぶのではないかと予測している。

まずは幹事長に有力視されるのは、林芳正前外相だ。岸田派のナンバー2で、ポスト岸田にも名が上がる林氏も茂木氏同様、「東大→ハーバード」の華麗な学歴の持ち主なのだ。「二人はともに英語が堪能で、ハーバード同士ということもあり、気が合う。東大受験に失敗して二浪し早稲田へ進学した岸田首相のことはどちらも内心では馬鹿にしている」(岸田派関係者)というわけだ。

岸田首相は辞任後も派閥会長にとどまり影響力を残したい意向だが、内閣支持率が続落して国民から総スカンの状況で退陣すれば、岸田派の求心力は林氏に集まる可能性が高い。いずれ林派に移行していくだろう。茂木氏とすれば、落ち目の岸田氏よりは有力な首相候補の林氏を幹事長として取り込んでおく方が政権が安定するという打算も働くだろう。

次の重要なのは、安倍派だ。麻生氏と茂木氏は安倍派を引き寄せるために、官房長官のポストを用意するのではないか。今の岸田政権で安倍派の松野博一氏を官房長官に起用しているとの同様だ。

石破氏を担ぐ菅氏は安倍派取り込みを狙って、森喜朗元首相が寵愛する萩生田光一政調会長との連携を深めている。麻生氏はこれに対抗し、萩生田氏とはライバル関係にある世耕弘成参院幹事長に接近してきた。

世耕氏は総理総裁を目指しながら、地元・和歌山の政敵である二階俊博元幹事長に衆院への鞍替えを阻まれ続けており、今すぐに総裁選に出馬することは難しい。その二階氏は岸田政権の非主流派の立場で菅氏と連携している。こうした構図から麻生氏と世耕氏が手を結ぶのは自然な流れだ。

私は茂木内閣の要である官房長官に世耕氏を起用する可能性が高いとみている。最大派閥の実力者である参院議員を官房長官に据えた例としては、小渕恵三内閣の青木幹雄氏がある。青木氏はその後、参院のドンとして君臨した。世耕氏も官房長官になればそのような道を歩むかもしれない。

この世耕氏は早大卒だが、NTT入社後にボストン大へ留学した経歴がある。そして近畿大の第4代理事長でもある。政界や学界の名門一族だ。

もうひとりの官房長官候補は、萩生田氏と総裁候補の座を争う西村康稔経済産業相だ。

西村氏は現職閣僚として、岸田首相が総裁選に出馬する場合は支持するものの、不出馬の場合は自らが立候補したいと表明している。だが、萩生田氏が西村氏の出馬を簡単に容認することはなく、安倍派は分裂含みの様相となる。

西村氏が総裁選出馬に固執すれば「茂木vs石破vs高市vs西村」の構図になるが、安倍派は四分五裂し、西村氏自身の影響力低下も免れない。それよりは麻生・茂木連合との連携を選択し、茂木政権下で要職に就いて萩生田氏を抑え込み、派閥会長レースで先行する道を選ぶのではないだろうか。

逆に石破政権が誕生すれば、菅氏は萩生田氏を幹事長に推すだろう。その場合、安倍派はそのまま萩生田派へ移行する可能性が高まる。西村氏にとっては、それだけは絶対に避けたい展開だ。

この西村氏は灘高→東大→通産省(現経産省)のエリートコースを歩んできた。これもまた「茂木好み」といっていい(ちなみに西村氏もパワハラ体質が繰り返し報道されている)。

世耕氏と西村氏を取り込んで萩生田氏を抑える。これは麻生・茂木連合の基本戦略だろう。世耕氏と西村氏のどちらか一方が官房長官で、もう一方が政調会長ではないか。

外相は上川陽子氏(岸田派)が留任だろう。岸田首相は、岸田派ナンバー2の林氏が外相として存在感を増してきたことへの警戒感から、軽量級の上川氏に交代させた。この結果、上川氏はポスト岸田候補に急浮上。麻生氏らが上川氏を「女性初の首相候補」として喧伝していることが背景にある。これは党内人気がイマイチの茂木氏が早くから本命視されて風あたりが強まることを避けるためのブラフではないか。

とはいえ、茂木氏にとっても軽量級の上川氏は使い勝手がよい。茂木氏も外相を歴任し、外交にはこだわりがある。上川氏には首相官邸と対抗して独自外交を進める党内基盤はなく、首脳外交の存在感を薄める恐れがない。この上川氏も東大→ハーバードなのだ。

麻生氏の義弟である鈴木俊一財務相(麻生派)は早大卒で、以上の路線を徹底するならば交代の方向だ。財務省は麻生氏の牙城となっており、麻生派から起用する場合は、伊藤博文の子孫として知られる松本剛明氏(前総務相)の可能性がある。松本氏も東大卒だ。

まさに東大や米国留学という華麗なキャリアを持つエリート集団が要職を占める。これが「茂木好みの布陣」というのが私の大胆予測だ。

岸田首相はポスト岸田への意欲を隠さない茂木氏を警戒し、9月の内閣改造・党役員人事で幹事長から外すことを画策したが、土壇場で麻生氏に猛反対され、実行できなかった。

その後の内閣支持率の急落で年内解散の見送りを表明し、レームダック化した。非主流派の菅氏が担ぐ石破政権が誕生して岸田政権を全否定されることを避けるには、今となっては茂木政権への移行を進めるほかない。

9月の人事で幹事長交代を断行できなかったことが、岸田政権の寿命を縮める大きな要因となったといえるだろう。その茂木氏を後継に推すしかないのだから、政局は皮肉なものである。

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