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二階俊博元幹事長、「アンチ岸田」で84歳にしてなお存在感〜日中議員連盟会長に就任、奈良県知事選・衆院和歌山1区補選の敗北では老獪な立ち回り

自民党の二階俊博元幹事長(84)が日中友好議員連盟会長に就任した。中国側は「二階先生と日中友好議連は長年、両国の交流と協力の推進に尽力してきた。就任を非常にうれしく思う」(外務省の汪文斌副報道局長)と歓迎している。二階氏は6月にも訪中することを計画しており、存在感を増しそうだ。

二階氏とともに「岸田降ろし」を仕掛けるタイミングをうかがっている菅義偉前首相は日韓議員連盟会長に就任した。岸田文雄首相が自負する「岸田外交」を重鎮二人が日中、日韓関係からどう揺さぶるのかは政局的視点からも注目である。

二階氏は右派から「親中派」として不人気で、「二階氏が日中関係の前面に出るのは国内の反中勢力を刺激して日中関係の回復にかえってマイナス」(岸田派関係者)との見方もある。一方で、中国側は二階氏ほど中国のメンツを立てながら落とし所を探る調整力のある政治家はいまの日本政界には見当たらないと判断しており、米中の覇権争いが強まるなかで二階氏を外して日中関係を再構築するのは容易ではないといえるかもしれない。

二階氏は4月の統一地方選・衆参補選でも意味深な言動で注目を集めた。

自民党が分裂して日本維新の会が漁夫の利を得た奈良県知事選では、安倍支持層から熱狂的支持を受ける高市早苗・自民党県連会長(経済安保担当相)が推す元総務官僚を突き放して旧知の現職知事を水面下で担ぎ出し、自民分裂の芽をあえてつくった。その結果として自民党は共倒れし、維新にとっては大阪以外で初の公認知事が誕生。大阪府知事・市長のダブル選挙での圧勝とあわせて「維新躍進」を全国に印象づけたのである。

だが、自民分裂による奈良県知事選敗北の責任を問う声は県連会長の高市氏に集中し、二階氏が矢面にたつことはなかった。このあたりは老獪な立ち回りといえるだろう。

二階氏の行動は「対中強行派の高市氏の失脚を狙ったもの」とも「岸田首相が統一地方選に勝利して勢いづくことを防ぐため」ともささやかれる。

同じ現象は、統一地方選の後半戦と同時に投開票された衆参5補選のなかでも注目を集めた和歌山1区でも見られた。

和歌山1区補選は、二階氏が気脈を通じてきた国民民主党の岸本周平衆院議員の知事選出馬に伴うもの。二階氏は地元・和歌山での長年の政敵である世耕弘成・自民党参院議員会長(安倍派)に対抗し、当初は腹心の鶴保庸介参院議員を擁立する構えを見せたが、最後は世耕氏が推す門博文・元衆院議員にあっさり譲った。

和歌山県は衆院選の区割り変更で県内の小選挙区が3から2に減り、二階氏が当選を重ねてきた「和歌山3区」は消滅する。二階氏の三男が有力視される跡取り問題や世耕氏の衆院鞍替えの思惑などが複雑にからむ中で衆院和歌山1区補選を迎えたため、二階氏の思惑をめぐって様々な憶測が乱れ飛んだ。

結局、世耕氏が推した自民候補が維新新人に敗れたことで、二階氏としては岸田首相が「衆参5補選の全勝」で勢いづくことを防いだことになる。さらに和歌山1区の敗北責任を最も問われたのは二階氏ではなく、世耕氏だった。これまた老獪な立ち回りだったといえるかもしれない。

二階氏は岸田首相にとって、最大のライバルである菅義偉前首相以上にやっかいな存在であろう。


衆参補選の結果分析と今後の政局を展望した解説動画をYouTubeで公開しました。ぜひご覧ください。

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