政治を斬る!

山際大志郎大臣の更迭は立憲民主党を「ゆ党」に迎えるプレゼント、寺田稔総務大臣の首は自公立維4党体制確立の証のプレゼント?

統一教会問題を追及されながら何もかも忘れてしまった山際大志郎大臣。お茶の間ですっかり有名になったこのダメダメ閣僚を岸田文雄首相が守り続けてきたのは、野党からの追及を彼に一点集中させて政権全体への波及を防ぐ「弾よけ」として都合よく使ったからだった。

その山際大臣を岸田首相が一転して更迭したのは、彼が「用無し」になったからである。山際更迭の直前、自民党、公明党、立憲民主党、日本維新の会の4党は、統一教会の被害者救済法案を4党で協議・決定する場をつくり、今国会で成立させることで合意していた。

この4党協議の枠組みが出来た以上、与野党交渉の主舞台は国会審議から4党協議の場へ移る。岸田首相にすれば、4党の水面下の協議を通じていくらでも野党を懐柔できることになったのだ。つまり、国会の表舞台での追及をもはやそれほど恐れる必要はなくなったのである。

むしろこれからの4党協議を円滑に進めるためには、立憲に国会論争の「成果」を献上し、立憲が世間から「与野党の談合だ」という批判を受けないように配慮することが必要だった。

立憲が安心して4党協議のテーブルにつくためのプレゼントが、山際大臣の首だったのである。立憲は4党協議を批判されても「いや、違う。ちゃんと山際大臣の首を取った」と胸を張ることができるのだ。

最後までお務めを果たした山際大臣は退任後、自民党の新型コロナ対策本部長という要職を「ご褒美」として与えられたのだった。

これからの政治は統一教会の被害者救済法案に限らず、自公立維4党の水面化の協議で決まっていく。

立憲はさっそく、次の感染症危機に備える政府提出の感染症法改正案に賛成する方針を決めた。立憲と維新が自公に求めていた修正項目の一部が反映される見込みとなったためだとしている。

これらの政策協議は他の野党を外すかたちで、国会討論とは関係なく、4党の密室協議で決まっていくのだ。

岸田首相は内閣支持率の続落で自民党内での求心力が低下している。この新たな自公立維4党体制に政策決定の重心を移すことで、自民党内の非主流派や公明党を牽制し、政権を延命させる戦略だ。

立憲と維新は岸田政権を補完勢力として支える存在となった。

政治学者の中島岳志さんはこの新たな政界地図を「与ゆ党体制」と呼んでいる。野党第一党の立憲と野党第二党の維新が「野(や)党」と「与(よ)党」の中間に位置する「ゆ党」として政権運営に協力していくという意味だ。

私もこの見立てに賛同する。維新を「自公の補完勢力」と批判してきた立憲は、今や維新とともに自公の補完勢力=「ゆ党」と化したといっていい。

岸田首相が4党体制の入口で立憲に捧げたプレゼントが山際大臣の首としたら、今国会における4党協議の出口で差し出すのは、政治資金問題で追及されている寺田稔総務相の首ではないかと私はみている。国会最終盤に29兆円の補正予算と統一教会の被災者救済法案を成立させる土壇場で、寺田総務相を更迭し、立憲に花を持たせるのではないか。

寺田総務相の政治献金問題は週刊文春が厳しく追及してきた。なかでも後援会の会計責任者が故人であったという事実は、政治資金収支報告書の信憑性を根底から揺るがす問題だ。

しかも総務省は政治資金を所管する官庁である。そのトップの大臣が自らに関する政治資金収支報告書で大きな疑念を向けられ、国民を納得させる説明ができないようでは、もはや地位にとどまる資格はない。即刻辞任すべきであろう。

岸田首相もそのくらいは承知している。ここから先は山際大臣と同じだ。「大臣の首」は貴重だ。それを差し出すタイミングはしっかり見極めないといけない。最も効果的な局面で首を切るのである。

これは補正予算や被害者救済法案が成立する国会最終盤の可能性が高いだろう。それまでは寺田総務相に「弾よけ」として居座ってもらい、最後の最後に立憲の国会論戦の成果となる「捧げ物」としてお務めしてもらう。山際大臣と同じ使い方である。

寺田総務相は宏池会(岸田派)だ。宏池会と密接な関係にある財務省出身でもある。しかも宏池会初代会長である池田勇人は義理の祖父にあたり、池田、宮澤喜一、そして岸田首相らと同様、宏池会の聖地とも言うべき広島を地盤としている。岸田首相にとっては身内中の身内ともいうべき存在だ。

だからこそ守りたいと考えるか、だからこそ切りやすいと考えるか。政治の世界には両面の見方がある。

だが、自公立維4党体制を確立する狙いが、最大派閥・清和会による自民党支配を終焉させ宏池会時代へ移行させることにあるのなら、さらには4党体制の究極の目的が財務省の悲願である消費税増税の実現にあるのなら、寺田氏は一役買うことには大きな抵抗を感じないのではないか。

いずれにせよ、国会最終盤に向けて立憲は山際大臣の次なるターゲットとして寺田総務相を吊し上げる「演出」に力を入れるに違いない。これは統一教会問題から徐々に世間の関心をそらす効果もあろう。


サメタイYouTubeで大好評の「ダメダメTOP10」。今週は寺田総務相もランクインしています。寺田総務相のクビをめぐる国会攻防も詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

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