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小池百合子知事の学歴詐称疑惑再燃で大混戦に 衆院東京15区補選を大予測!立憲新人が優勢?それとも乙武氏が盛り返す?鍵を握るのはやはり公明票

小池百合子知事が学歴詐称疑惑で出馬を見送り、代わりに作家の乙武氏を無所属で擁立した衆院東京15区補選は、自公与党が乙武氏の推薦を見送り、大激戦となっている。

各党の情勢調査では立憲民主党新人の酒井氏がわずかにリードしているが、予断は許せない。

鍵を握るのは、公明票の行方だ。

投開票日の4月28日は大型連休前半の中日。投票率の伸び悩みが予想され、組織票の行方が勝敗を決する。

乙武氏推薦を見送った自公の組織票の動向が焦点だ。

自民支持層は裏金事件のようなスキャンダルが発生した時、自民党に「お灸」をすえる傾向がある。自民党内の闘争は激しく、現主流派に批判的な勢力が手を抜くことはしばしばあることだ。時折、野党候補に票を回して自民候補を落選させることもあるが、大概の場合は「棄権」で抗議の意思を示す。

今回は元自民党議員で汚職事件で起訴されながら出馬した秋元氏(上告中)に一部の票は流れるものの、棄権に回る票が多いのではないか。いずれにせよ、票の振り分けが簡単ではないのが自民党の特徴だ。

これに比べ、創価学会を支持母体とする公明党は上位下達で票の差配がしやすい。

石井幹事長は東京15区について告示前には自主投票とするかどうかも含めて方針を決めず、今後は決めても公表しない可能性があると表明した。土壇場まで情勢を見極め、最後は勝ち馬に乗って「公明票のおかげで当選した」とアピールし、影響力を最大化する狙いだろう。

公明票を誰にどれだけ高く売りつけるかが最大の関心事なのだ。

注目選挙になると、各党は独自に情勢調査を実施し、その数字が政界やマスコミ界を駆け巡る。しかしこれらの数字はあまり当てにならない。なぜなら、各党がかなり思惑を込めて数字を操作し、意図的に流布しているからだ。

私の政治取材経験では、とりわけ参考にならないのが自民党の調査結果である。組織を引き締めたいときはあえて劣勢な数字を流すし、勝ち馬に乗る流れをつくりたいときはあえて優勢な数字を流す。限りなく世論操作を狙ったデータなのだ。

これに比べて、比較的信憑性が高いのは、公明党の数字だ。自分たちが勝ち馬に乗るための調査なので、できる限り現実に即したデータを求めているからである。

今回、政界やマスコミ界に出回っている公明党の情勢調査は以下のようなものだ。

①酒井 13%   立憲+共産

②乙武 10%           小池+国民(連合)

③須藤 10%           立憲離党(元参院議員)

④金澤 9%               維新

⑤飯山 2%               日本保守党

公明党は今回の衆院3補選にあたり、小池知事が衆院投票15区補選に出馬して国政復帰を果たし、自民党に復党して9月の総裁選に出馬し、女性初首相になることをベストシナリオに描いてきた。不人気の岸田首相による6月解散は断固阻止し、小池政権のもとで解散総選挙に挑むのがもっとも戦いやすいと考えていたのである。

ところが、小池知事が学歴疑惑再燃で出馬を見送り、かわりに擁立した乙武氏が過去の女性問題を抱えていることで困った。公明党の組織選挙を支えている創価学会婦人部(現在は女性部)が女性問題に反発し、乙武氏を敬遠したからだ。

そこで公明党は乙武氏推薦は難しいという考えを自民党に伝えたが、本当の理由は、小池氏が国政復帰しないのなら、乙武氏を敗北させ、自民党を補選全敗に追い込むことで、岸田首相の6月解散を阻止したほうがいいと考えたのではないかと私はみている。小池知事との連携よりも、岸田首相を追い込むことを優先したわけだ。

公明党が離れ、小池知事の学歴詐称疑惑が追い打ちをかけ、乙武氏は劣勢になった。すると、自民党はあっけなく乙武氏の推薦を見送った。これにより、自民党は3補選のうち2補選で不戦敗が確定したのである。

この結果、公明党が乙武氏推薦を見送るひとつの大きな要因がなくなった。乙武氏が勝利しても自民党の勝利にはならず、岸田首相の得点にはならないからだ。

もちろん、婦人部には乙武氏への抵抗は強く、表向きは応援しないのだろうが、土壇場で乙武氏が巻き返せば裏で支援に回り、「勝因は公明党が最後に応援に回ったことだ」という決着を狙う可能性は否定できない。

とはいえ、乙武氏を支援して敗北すれば、婦人部の不満は高まるだろう。乙武氏が勝てる見込みが相当に高くならない限り、現実的には躊躇せざるを得ないのではないだろうか。

一方、立憲の酒井氏は共産との協力に大きく傾いている。告示日の街頭演説でも共産党の田村智子委員長や社民党の福島瑞穂党首、れいわ新選組の櫛渕万里共同代表とともに立ち、野党共闘をアピールした。

しかし、公明党や連合はアンチ共産の姿勢が強い。共産色が出るほど、公明党や連合は酒井氏を敬遠する可能性が高い。実際、連合と密接な関係にある国民民主党は乙武氏推薦を決め、告示日には玉木雄一郎代表が応援に駆けつけた。公明も酒井氏には裏であっても乗りにくくなったのではないか。

それでは、維新はどうか。維新の本拠地・大阪で、維新は公明と裏取引を重ね、府議会や市議会で協力を得る代わりに衆院選の大阪府内の選挙区では公明現職には対立候補擁立を見送り、激突を避けてきた。しかし府議会と市議会で単独過半数を得たことで公明党と決別し、次の衆院選では大阪府内でも激突する方針を掲げている。東京で維新・公明の裏取引が成立するかどうかは見通せない。

公明党はギリギリまで選挙情勢を見定め、土壇場で勝ち馬に乗る戦略を描く。ギリギリまで様子をみて組織を動かせるのが公明党の強みだが、どの候補に乗るにしてもリスクが高く、最後まで決めきれない可能性もある。

他候補からすれば、選挙戦前半で一歩抜き出れば、公明党が近寄ってくる可能性が出てくるだけに、スタートダッシュがとても重要になるといっていい。

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