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新聞記者やめます。あと53日!【日米首脳会談前に「北京五輪の共同ボイコット案」を急浮上させた米国の狙いとは?】

菅義偉首相が4月16日に米国のバイデン大統領と会談する日程が固まった。バイデン大統領と対面で会談する最初の首脳になるらしく、菅政権は「大きな成果」と誇っているようだ。マスコミ各社もそうした視点で報じている。

米国大統領といちはやく会談すること自体が「外交成果」という感覚は、はなはだ時代錯誤である。トランプ大統領と真っ先に会うことに躍起になった安倍政権から何も成長していない。それを自慢する政治家や官僚、それを持ち上げる記者たちの感覚がいかにズレているかと思わずにはいられない。

第一、コロナが再拡大するなかで、訪米する余裕があるのか。訪米に政権内のエネルギーを割く余裕があるのか。政権浮揚策としての訪米に夢中になるあまり、コロナ対策がおろそかになるのではないか。現に一年前の安倍政権は東京五輪をどうするかで頭がいっぱいになり、コロナ対策の初動に大きく出遅れたではないか。

日本の「ワクチン敗戦」の現実が日増しに明らかになっている。このままでは欧米諸国もアジア諸国もワクチン接種を終えてコロナ禍を脱出しても日本だけが取り残される、という悪夢が現実となる恐れもある。

いま首相として優先すべきは、「米国大統領と最初に会った首脳」ということをアピールする「政権浮揚策」としての訪米ではなく、国内に腰を据え、ワクチンの入手と接種をはじめとするコロナ対策の陣頭指揮をとることではないのか。コロナ対策を二の次にしてでも訪米で得られる「成果」など、果たしてあるのだろうか。

訪米で沖縄の負担がかさむ米軍基地問題が進むのか。こじれる日韓関係が米国の仲裁で打開されるのか。米国の力添えでコロナワクチンを前倒しで確保できるのか。むしろ、米国が強行に進めようとしている対中包囲網に引きずり込まれ、日中の経済関係に悪影響が出るのではないか。

今回の首相訪米は「名」をとるばかりで「実」を失うリスクが極めて高いのだ。

そんな懐疑的な視線で日々の日米首脳会談の記事に目を通していたら、さらに新たな難題が浮上してきた。五輪の話である。今夏の東京五輪ではない。来年2月の北京冬季五輪の話だ。

米国務省のプライス報道官が4月6日の記者会見で、中国国内の新疆ウイグル自治区などでの人権問題を理由に、米国の同盟国との間で、北京五輪を共同でボイコットする可能性を協議したいという意向を示したのだ。米国と中国の覇権争いが強まるなかで、米国が同盟国とともに中国包囲網を強めるという強い意思表明である。米国が「同盟国」の主要な一員として念頭に置くのが日本であることは間違いない。

日本政府内はこの発言に戦々恐々のようだ。何としても今夏の東京五輪を開催したいと思っている矢先である。コロナ禍のなかでの五輪開催への疑念が欧米社会を中心に広がるなかで、中国とは「今夏の東京五輪と来年2月の北京五輪をともに成功させよう」という一点で利害が重なってきた。その最中に、米国が「北京五輪ボイコット案」を同盟国たる日本へ呼びかけてきたらどうなるか。まさか北京五輪ボイコットを表明して「東京五輪には来てください」とは言えない。

4月16日に迫る日米首脳会談でバイデン大統領から北京五輪ボイコットの提案が出ないことを、ただひたすら願うーー。日本政府の外交当局者たちはいま、そんな心境だろう。

裏を返せば、米国務省が日米首脳会談を目前に控えた今、「北京五輪の共同ボイコット案」を打ち上げたということは、彼らは東京五輪のことなどこれっぽっちも考えていないという証しであろう。菅首相がいくら「米国大統領と初めて対面する首脳」と誇ったところで、相手は菅首相が最も心を砕いている「東京五輪」についてまったく考慮していないのである。最大の敬意を込めて「初めて対面する相手として招待した」わけではないことは火を見るより明らかだ。

さらに深読みすると、米国側は菅首相の「東京五輪へのこだわり」を承知の上で、それを逆手に取り、あえて日米首脳会談にむけた先制パンチとして「北京五輪の共同ボイコット案」を打ち上げた可能性もある。そうしたら、日本の外交当局者はあわてて米国務省に駆け込み、「日米首脳会談でそれを提案することだけは避けてください」と頭を下げにくるであろう。そこで「わかった、わかった」と受け入れ、「その代わりにこれだけは呑んでくれよ」と別の案件を要求するのである。おそらくそれは対中包囲網への日本の参加だ。

米国からすれば、日本政府が嫌がる「北京五輪への共同ボイコット案」を事前に場外で打ち上げ、駆け込んできた日本政府の外交当局者に「日米首脳会談で提案しない」と約束するだけで、それと引き換えに対中包囲網への日本の参加を取り付けられる。いわば「口先だけ」で大きな外交成果を得ることができるかもしれないのだ。外交交渉とはそうしたものだ。

「米国大統領と初めて面会する首脳」という見せかけの「成果」ばかり追い求めるから、相手からそれを逆手にとられ、いいように利用されるのである。

日本メディアの外交報道は、官邸や外務省の言い分を垂れ流すのではなく、いまの日本外交が国内向けにうわべだけを取り繕ったものであるかを浮き彫りにしてほしい。いまのままでは4月16日の日米首脳会談後に「米国に北京五輪の共同ボイコット案を取り下げさせた美談」を伝える提灯記事が新聞に載りそうである。

そんな内向きな外交ばかり重ねているから、いつまでたってもワクチンが手に入らないのだ。

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